小学生から中学生になるとさまざまな環境の変化が訪れますが、環境の変化は子どもにとってストレスにもなりえます。それが原因で子どもが不登校になってしまったら、親としては将来のことや自分に何ができるのか不安になってしまうでしょう。そこで、この記事では中学生が不登校になる原因を解説し、子どもが不登校になったら親としてできることや進学先について紹介していきます。

不登校の定義

文部科学省が公表している学校基本調査において、不登校とは「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあること(ただし、病気や経済的な理由によるものを除く)をいう」と定義されています。
 
参考:文部科学省「学校基本調査-用語の解説」

中学生の不登校の現状

文部科学省の『令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要』によると、令和2年の中学校における不登校生徒数は132,777人でした。中学生1,000人あたりの不登校生徒の人数は、調査開始の平成10年からゆるやかに増加を続けており、平成24年以降は増加の一途を辿っています。令和2年には、中学生1,000人あたり約41人が不登校という状態となっており、不登校になることは決して珍しくないことだといえます。
不登校児童生徒数 平成28年から令和2年までの推移
参考:文部科学省「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」

中学生で不登校になる原因は?

小学校から中学校へ進学すると、先輩後輩の上下関係が生まれたり、教科担任制(教科ごとに教員が違うこと)が導入されて先生との関係が希薄になったりと、学校生活に大きな変化が訪れます。こうした新たな環境にうまくなじめずに大きなストレスがかかることを、「中1ギャップ」と呼びます。
 
そして、こうした学校生活をめぐる環境の変化が、不登校の原因のひとつともいわれています。ここでは、中学生が不登校になってしまう原因を4つ挙げ、それぞれを解説していきます。

学級担任制から教科担任制へ

小学校までは学級担任制で1人の先生がすべての授業を教えていたのに対して、中学校からは各教科の先生がそれぞれの授業をおこなうため、先生と子どもの関係性が変わります。
 
小学校ほどはフランクな関係を築きにくいため、授業でわからないことがあっても質問しにくいなどの変化に対応できない子どもにとっては、ストレスに感じてしまうでしょう。こうしたことが原因で徐々に学校に行くことが負担になり、不登校につながる場合があります。

生徒数の増加、先輩後輩などの人間関係

中学校はいくつかの小学校から集まるため生徒数が増加するのに加えて、先輩後輩の関係が厳格になることが原因で不登校になってしまう子どももいます。職場が変わるなどして人間関係を一から構築するのは大人でも大変ですが、子どもにとっても同様です。小学校からの友達と同じクラスになれるとは限らないですし、クラスや部活動などで多くの人と人間関係を構築することになるため、億劫に感じる子どももいるでしょう。
 
また、特に部活動に入る場合は、小学校にはない厳しい上下関係が待ち構えています。友人関係とは異なる関係を築く必要があるため、慣れない子どもにはストレスがかかり、こうしたことから不登校につながっていくおそれがあります。

学業不振

中学校へ進学すると授業内容の難易度が上がるため、授業についていけないことで精神的な負荷がかかるというケースもあるでしょう。また、先述のように、先生との関係も変化するため、授業でつまずくとそのまま取り残されてしまい、学業に対するモチベーションも低下しかねません。
 
また、中学校からは定期テストが実施されるようになり、それによって成績も大きく変化します。学校によっては点数によって順位をつけられることもありますから、学力に自信のない子どもだと自分の順位が明確になることに対して不快に感じるかもしれません。

制服や校則の変化

中学校に入ってから大きく変わるもののひとつに、校則がより厳しくなることが挙げられますが、こうした変化も不登校の原因になっています。特に、制服や髪型に関して昔ながらの厳格な規定を設けている学校があるため、事情があってそれを守れない子どもにとっては窮屈さや理不尽さを感じてしまう可能性があります。
 
また、校則に違反すると教員との関係悪化にもつながりますから、こうした点も不登校の遠因になっているといえるでしょう。NHKがおこなった調査でも、決まりや校則が不登校の要因と回答した子どもは21%にのぼることが明らかになっています。
 
参照:不登校、その先を考えてほしい | 未来スイッチ!課題解決で暮らしやすい社会へ|NHKニュース

明聖高校に通っている生徒の体験談

明聖高校には、不登校を経験した生徒も大勢通っています。ここでは、明聖高校で高校生活を送る先輩が、中学校時代に不登校に至った際の体験談をご紹介します。

<Tさん(女性)の体験談>

Tさんは中学2年生のときの転校がきっかけで、不登校になりました。生活スタイルや、学習環境の変化に負担を感じたことが原因だったのではないかとTさんは話しています。中学卒業後、公立の全日制高校へ進んだものの、やはり学校に行くことができませんでした。医療機関を受診し、カウンセリングも受けていましたが、やはり登校は難しい状況でした。
 
明聖高校への入学のきっかけは、担任の先生から通信制高校への転校(転入学)を勧められたことでした。母親と複数の学校を見学し、明聖高校を選んだとのことです。スクーリングの日数が月2回程度と少なめだったことも決め手だったそうです。

<Mさん(男性)の体験談>

Mさんは何事にも一生懸命取り組む性格で、中学校の頃は、授業、学校行事、部活動と、あらゆることに全力投球していました。そのためにクタクタになってしまうことも多く、やがてすべてに疲れ切って、不登校になってしまったといいます。
 
そこで高校では、自分のペースで高校卒業を目指す通信制高校に行くことを決めました。明聖高校を選んだのは、学校説明会での雰囲気がよかったからです。明聖高校では、担任の先生はもちろん、関わりのあったすべての先生がMさんに寄り添った対応をしてくれたといいます。Mさんは「頑張りすぎなくていいんだ」と安心したそうです。

中学生で不登校になってしまったら?親ができることは?

自分の子どもがもしも不登校になったら、親としてはどのようなことができるでしょうか。4つのポイントに絞って解説していきます。

子どもの気持ちを肯定する

まずは、子どもの気持ちを肯定してあげることで、ストレスを和らげることから始めましょう。親として、「本当は学校に行ってほしい」「勉強を頑張ってほしい」という期待や願望を持ってしまうことは当然ですが、まずは子どもの気持ちに寄り添うことが大切です。子どもから何かやりたいという意思表示があれば、機会を逃さないようにできるだけかなえてあげましょう。

居場所をつくる

学校に行かない場合は、自分の家が子どもにとっては唯一の拠り所になりますから、そこでの居場所を確保してあげるようにしましょう。特に思春期を迎える過程では、1人の部屋が確保されることで精神的な安定につながります。
 
とはいえ、部屋にこもりっきりになると家族との交流も絶たれてしまうので、洗濯や掃除などの役割をつくり、それを任せてあげると家族との接点が生まれます。また、任せた役割が終えられたときは、ほめてあげることも重要です。小さなことからできることや認められることを積み重ねれば、自然と自信を回復していくことができるでしょう。

外の世界を見せて選択肢を広げてあげる

たとえ学校を拒絶しても、社会とのつながりは無数に広がっているため、それを見せてあげられれば学校に対する認識も変化する可能性があります。リアルなコミュニティに参加するのも選択肢のひとつですし、オンライン上のつながりでも十分です。複数のコミュニティに触れることができれば、子どもの世界も広がっていくでしょう。

支援制度を活用する

自分の子どもだからといって、すべての責任を親だけが抱える必要はありません。行政の専門家から支援を受けることも検討すべきです。児童相談所やひきこもり地域支援センター、発達障害者支援センターなど、自治体にはさまざまな施設が設置されています。

支援名(施設名) 対象者 相談可能な内容
児童相談所
(児童相談センター、
児童家庭支援センター)
18歳未満の
子ども
・相談に対する助言
・専門スタッフによる
継続的な援助
・緊急に保護を要する場合の
一時保護
・ボランティアの派遣
ひきこもり
地域支援センター
ひきこもりの状態にある
本人やそのご家族
・ひきこもりに特化した
相談受付
・ひきこもり支援
コーディネーター
による自立の支援
・講演会や研修会の開催
発達障害者
支援センター
発達障害のある
本人やその家族
・日常生活や人との関わり、
学校、就労などで
困ったことなどの相談
・発達障害に関する
講演や研修

 
支援制度については、下記の記事にまとめていますのであわせてご参照ください。
不登校は甘えじゃない!親ができる不登校になった子どもへの4つの対応 | 通信高校生ブログ
不登校への支援は何がある?最新の支援情報まとめ | 通信高校生ブログ

中学で不登校になると高校受験の合格は厳しい?

中学校で不登校の経験があると、高校受験の際に不利にならないか心配になるものです。高校受験にあたって考慮したいポイントは、以下のとおりです。

調査書の提出がある高校は不利になることも

高校受験では多くの場合、生徒一人ひとりの「調査書(内申書)」が中学校から高校へと提出されます。調査書は地域によって内容が異なりますが、多くの場合は、各教科の学習の記録や評価、特別活動の記録、そして出席日数などが記されたものです。不登校の経験がある場合、調査書にもその旨が記載されるため、不利になる可能性があります。
 
なお、欠席日数をどのように扱うかは、公立高校と私立高校で違いがあります。さらに推薦入試、一般入試でも規定が異なる場合があるため、募集要項で確認するようにしましょう。

学習機会の確保が大切

高校受験にあたっては、当然ながら一定の学力が求められます。不登校になると学校で授業を受けられなくなるため、学習の遅れが気になることもあるでしょう。しかし、学校に通わなくても学習機会の確保は可能です。
 
自宅で、一人で学習に向き合いたい場合は問題集を活用しましょう。その際は、学習の内容やペースをしっかりと計画することが重要です。自宅で学ぶ方法としては、家庭教師を呼ぶことも選択肢のひとつです。最近では、不登校の子どもを専門にした家庭教師のサービスもあります。また、オンラインで学べるサービスも数多く提供されています。本人の気持ちや学習意欲に寄り添って、最適な手段を選ぶことがポイントです。

全日制高校以外の選択肢について

中学生から不登校になった場合、子どもの進路はどのようなものが考えられるでしょうか。全日制高校以外の進路としては、下記の2種類が代表的な選択肢となるでしょう。

定時制高校に通う

定時制高校は夜間に通うイメージもありますが、最近では全日制のように午前や昼間など日中に授業をおこなう学校も増えています。基本的には通学が必要になりますが、全日制よりは授業時間が短いため、学校には行きたいけど長時間は自信がない子どもにとっては通いやすいでしょう。

通信制高校に通う

通信制高校は登校(スクーリング)が必要な日数が全日制高校よりも少ないため、不登校になった子どもでも通いやすいのがメリットです。学習面では全日制の高校とは異なり、ITやデザイン系など専門的なコースを揃えた学校が多いという特長もあります。自分の興味のある分野を選び、楽しみながら学ぶことができるでしょう。
 
通信制と全日制の違いについては、下記の記事にまとめていますのでそちらもご参照ください。
通信制高校とは?全日制との違いや通学・授業、費用などを解説 | 通信高校生ブログ

明聖高校では専門カウンセラーによる相談が受けられます

明聖高校は不登校の生徒の受け入れ実績も豊富で、専門カウンセラーが常駐するなど支援体制も整っています。在籍する教員もカウンセリングやメンタルヘルスの資格を所持するなど、心に不安を抱える子どもでもしっかりと支えながら勉強できます。
 
学習内容もデザインやゲームプログラミング、映像編集などを学習できる特徴あるコースを用意しています。子どもの興味に合わせて学ぶことができるので、自然と勉強したい、学校に行きたいと思えるようになるでしょう。