子どもの不登校が続くと、保護者は「何か学校に行くきっかけを作れないだろうか」と焦ってしまうこともあるでしょう。とはいえ、学校復帰のきっかけは子どもによって大きく異なり、保護者がきっかけそのものをピンポイントに提供するのは、あまり現実的ではありません。子どもが自らきっかけをつかむために、保護者は何ができるのでしょうか。協力のポイントや注意点について解説します。

何が不登校のきっかけになる?子どもの状況を把握しよう

子どもが不登校になるきっかけはさまざまです。例えば、次のようなものが挙げられます。

  • ● いじめなど学校での人間関係の悩み(友人、先輩・後輩、先生)
  • ● 勉強に対する悩み(勉強がわからないことへの劣等感、勉強に意味を見出せない など)
  • ● 学校やクラスの雰囲気になじめない(授業中の様子、校則など)
  • ● 生活リズムの乱れ(部活動や塾通いと学校の両立が難しい、家庭環境の変化、ゲームの影響など)

実際には、複数のきっかけ重なって不登校になっていることも多くあります。また、上記のようなきっかけは表面的な“引き金”に過ぎず、その奥には、子どもが長期にわたってストレスをため込んできた別の要因が潜んでいるケースも少なくありません。以下の記事では、調査データも参照しながら、不登校のきっかけについて詳しく解説しています。

僕・私が不登校になったきっかけ、そして乗り越えられた理由とは。先輩たちの体験談

保護者が子どもの学校復帰をサポートするにあたっては、まず、こうした不登校の背景を理解しておきましょう。

【時期別】不登校の子どもに保護者ができるサポート

不登校は「きっかけさえあれば学校に行けるようになる」という単純なものではありません。本人が段階を経て少しずつエネルギーを取り戻し、自分自身で前に進むきっかけをつかんで初めて、学校復帰できるようになります。そのためには、保護者が本人の状態に応じて、次のように適切なサポートをすることが不可欠です。

【不安定期】家庭を安心できる居場所にする

不登校になったばかりの子どもは、心身ともに消耗しきっている不安定な状態です。行動を起こすことが難しく、何より休息を必要としています。

このタイミングで保護者にできるのは、子どものあるがままの姿を受け止め、見守ることです。子どもが不登校への罪悪感を抱き、家庭に居づらさも感じている中で、まずは家庭が安心できる居場所になるようにしましょう。

また、この時点ではまだ保護者のほうからアプローチせず、子どものほうから想いを話してくれるまで待つことも重要です。少しずつ言葉を発するようになったら、じっくり耳を傾け、本人が好きなだけ話せる状況を作りましょう。学校については「今は行けなくても仕方がないよ」と伝え、十分に休ませてあげます。

【安定期】やりたい活動に取り組める環境を整える

休息を経てエネルギーがたまってきた子どもは、次第に「何かしたい」という意欲を取り戻したり、「何かしなければ」と焦りを感じたりするようになります。このタイミングで自発的に行動できた経験が、学校復帰のきっかけにもつながるでしょう。

そこで保護者は、本人がやりたいことに十分打ち込めるよう、サポートしたいところです。例えば、子どもが「勉強を再開したい」と話したら、勉強に集中できるように部屋の環境を整えたり、家庭教師やネット高校など自宅で勉強できる選択肢を提示したりするとよいでしょう。あるいは、趣味に打ち込めるように経済面・精神面で支援したり、子どもの買い物に同行するなど一緒に外出したり、「役に立ちたい」という子どもに家事を手伝ってもらったりすることもできます。

【停滞期】外部の支援機関に相談する

エネルギーがたまってからも本人がなかなか行動を起こせず、家庭では復帰に向かうことが難しい場合は、不登校支援機関や各種相談窓口、医療機関などの利用も検討しましょう。本人は抵抗を示すことが多いため、初めは保護者だけで相談するのも有効です。

【回復期】学校復帰に向けた解決策を一緒に実践する

少しずつ活動を再開する中で何らかのきっかけをつかみ、本人が「学校に行こうかな」という想いを口にするようになったら、学校復帰へ向けて話し合い、具体的な解決策を一緒に考えて実践していきましょう。

例えば、生活リズムを整えながら登校に向けた心の準備ができるよう、小さな目標を設定する方法が有効です。「学校に間に合う時間に起きる」「制服に着替えてみる」「玄関を出てみる」など、スモールステップで学校復帰できるよう、保護者も見守り、応援しましょう。

同時に、保護者が学校と連絡を取り合って連携することも不可欠です。「別室登校でもよいか」「進級の際に登校日数を考慮してもらえるのか」など、柔軟に対応してもらえるよう相談しましょう。通っている学校への復帰が現実的に難しい場合には、転入を含めた選択肢を本人と検討するのも手です。

要注意!きっかけの“押し付け”が不登校を長引かせる恐れも

以上で見てきたように、保護者は学校復帰のきっかけそのものを作るというより、子ども自身が学校復帰のきっかけをつかめるよう、後押しするスタンスでいることが第一です。

不登校から学校に行けるようになるきっかけは、子どもによってさまざまです。趣味に打ち込んで何かを成し遂げた経験、家庭教師など第三者からの言葉、フリースクールやネット高校など新しい環境での刺激など、あらゆることが復帰のきっかけになります。保護者にとっては思いもしなかったことが復帰のきっかけになる可能性もあるでしょう。そうしたきっかけから、本人の中でやりたいことや目標ができれば、子どもの中で前向きなエネルギーが高まっていき、学校にも復帰できるようになるのです。

一方、保護者が無理にきっかけを作ろうとすると、逆に子どものエネルギーを奪ってしまう恐れもあります。例えば、保護者がさりげなく勉強させようとしたり、外出に誘ったり、フリースクールの資料を渡したりするアプローチは要注意です。たとえそれが善意からであっても、子どもは「自分自身ではなく、保護者のしたいことをさせられる」と、エネルギーがそがれるように感じてしまいます。

同じように、親子の対話の中でも、子どものエネルギーを減退させないよう注意が必要です。子どもの言葉を遮って保護者の意見を挟んだり、「なぜ学校に行けないの?」「何がしたいの?」と問い詰めたりすると、子どもは前向きに解決を目指す気力を失ってしまいます。

子どもが不登校になると保護者も焦ってしまいますが、あくまで本人が自発的なエネルギーを高めるためのサポート役に徹することが、不登校解決の近道だといえるでしょう。