昼夜逆転など生活リズムの乱れは、不登校になった人の約70%が経験したことがあるといわれています(「不登校に関する実態調査 平成 18 年度不登校生徒に関する追跡調査報告書」2014年)。昼夜逆転そのものが不登校のきっかけになる場合も、また不登校中に昼夜逆転してしまって長期化する場合もあるなど、不登校に悩む人には切っても切り離せない悩みです。
学校復帰に向けて昼夜逆転を改善するためには、何ができるでしょうか。不登校になっている本人と、保護者がそれぞれできることを考えてみましょう。

なぜ不登校になると昼夜逆転してしまうの?5つの主な原因

不登校にかかわる昼夜逆転の原因には、主に次のようなものがあります。

スマートフォンやゲームによる夜更かし

スマートフォンで動画を見続けていたり、延々とゲームをしていたりして夜更かししていた結果、昼夜逆転してしまうケースは、一般的にも少なくありません。ただし、不登校になってしまう人の場合は、日中のつらい学校生活では得られない「楽しさ」を別の世界に求めて、これらに熱中する場合がある点に注意が必要です。
スマートフォンやゲームによる夜更かしは、単に寝る時間が遅くなるだけでなく、ディスプレイから発せられる光による体内時計の乱れも引き起こすため、ますます朝起きにくくなってしまいます。

生活環境の変化による睡眠不足

進学・進級などのタイミングで生活環境・スタイルが変わったために、睡眠時間が短くなり、朝起きられなくなって、昼夜逆転するというものです。例えば、「部活動を始めたら、勉強時間が後ろにずれた」「受験のために学習塾に通い始めたが、授業が終わる時間が遅い」「自宅から遠い高校に進学して、朝早く起きないといけなくなった」といったケースが挙げられます。
睡眠不足が慢性化すると、体の疲れがいやされないだけでなく、心の状態も不安定になってしまいます。

不安や緊張で夜に眠れない

一般的な就寝時間に布団には入るものの、不安で考えごとをしていたり、緊張していたりして眠れず、朝起きられずに昼夜逆転するパターンです。「学校でまた嫌なことがあったらどうしよう」「このまま一生、社会復帰できなかったらどうしよう」といった悩みのほか、「ちゃんと眠らなくちゃダメだ」という焦りも、不眠につながります。

日中に起きていたくない気持ち

特に不登校が長引いている場合、本来学校に通うべき時間帯に起きていると、不登校になってしまった自分への罪悪感や自己嫌悪感を抱いてしまうことがあります。また、そうした日中に家族と顔を合わせたり、家の外の音を聞いたりすると、「自分は家族に迷惑を掛けている」「社会から取り残されている」と感じてしまう場合もあります。
そこで、日中はあえて起きないようにし、夜になって家族も世の中も寝静まり、学校も終わっている時間帯に活動するようになっていくというメカニズムです。

心身の病気

起立性調節障害やうつ病、睡眠相後退症候群といった病気が原因で朝起きられなくなり、昼夜逆転している場合もあります。不登校に悩む本人にとって大切な日(学校の試験の日、趣味関係など楽しみな用事がある日など)の朝も起きられなくなっている場合には、これら心身の不調の可能性を考えたほうがよいでしょう。

【本人編】不登校中、昼夜逆転を直すためにできること

不登校になってすぐは、なかなか昼夜逆転を戻すことは難しいでしょう。エネルギーが十分にたまってきて、少しずつ前向きに考えられるようになったら、自分のできる範囲で改善策を試してみてほしいと思います。以下で、具体的にできることの例をご紹介しましょう。

日中に活動する動機や目的を見つける

「学校に戻るため昼夜逆転を直さなきゃ」のように、昼夜逆転の改善自体を目的にしても、うまくいかない可能性が高いです。ですから、まずは日中にやってみたいことを見つけて、それを動機や目的に昼夜逆転を直していくのがよいでしょう。「街に行ってみたいスポットがある」「学校に行っている間に読めなかった本をたくさん読みたい」など、自分の想いに素直に向き合って、日中に活動するきっかけを作ってみてください。

活動して頭や体を動かす

実際に、日中~夜の早い時間に活動して頭や体を動かせば、適度に疲れて、夜眠りにつきやすくなります。
「頭を動かす」というのは、必ずしも勉強でなくても構いません。本を読んだり、パズルに挑戦したりするのもおすすめです。「体を動かす」については、例えば、出歩きやすい夕方~夜の時間帯に散歩したり、室内で踏み台昇降をしたりといった方法が挙げられます。

ただし、寝る直前の考えごとや激しい運動は睡眠に影響が出る恐れがあるため、注意が必要です。同じように、夜遅くなってからは刺激を避けるために、できるかぎりスマートフォンやゲームには触れないようにするとよいでしょう。

生活習慣を整える

日中に活動するようになれば、自然と昼夜逆転が元に戻ってくる場合もありますが、より生活リズムを整えやすくする習慣付けも効果的です。
まず、寝る時間を少しずつ早くしてみましょう。一気に早めるのは難しいため、一日15分くらい早くするだけで構いません。
朝は、あまり早くなくてもいいので、一定の時間に起きます。そして、朝日を浴び、朝ご飯を食べて、体内時計をリセットさせましょう。
さらに、一日を終えたら、ゆっくりお風呂につかって温まると、心地よい眠気が訪れやすくなります。

【保護者編】不登校の子どもの昼夜逆転を改善するサポートをしよう

不登校に悩む本人の昼夜逆転を改善するためには、保護者のサポートも不可欠です。ここでも、具体的な方法を紹介していきましょう。

子どもの昼夜逆転や不登校を受け入れ、見守る

子どもが不登校になり、昼夜逆転の生活を送っていると、保護者は「もう学校復帰・社会復帰できないのではないか」と焦ってしまうかもしれません。しかし、「学校に行きなさい」「昼夜逆転を直しなさい」「ゲームはやめなさい」と頭ごなしに叱るのは逆効果です。
まず、保護者が考え方を改め「昼夜逆転も大きな問題ではない。いつかは解決するもの」ととらえて、子どもの回復を見守るようにしましょう。加えて「学校には行ってもいいし、行かなくてもいい」と本人に伝えることが大切です。保護者の接し方によって、子どもの心の負担も軽減していきます。

子どもの話に耳を傾け、活動の動機付けをサポートする

子どもの心身のエネルギーがたまってきたら、本人が日中に活動する動機や目的を見つけられるよう、サポートすることも重要です。
子どもの生活の様子をよく見たり、子どもとゆっくり話す時間を作ったりしながら、本人にとって興味があること・好きなこと・したいことや、逆に嫌いなこと・したくないことは何かを探ってみてください。すると、子どもは保護者との会話の中で、日中活動するための動機や目的を見つけ出す可能性があります。

子どもの日中の活動を陰で支える

「~をやってみたいんだ」という動機を子どもが話してくれたら、それを実現させるように支えましょう。
ただし、押し付けにならないように注意が必要です。例えば、半ば強引に外出に誘ったり、よかれと思って子どもの欲しいものをすぐに買ったりすると、本人の負担になる恐れもあります。あくまで、手を差し伸べるイメージを持つことが大切です。

専門家や外部機関に相談する

思春期を迎えた中高生の場合は、ある程度自律してきて、保護者に自分の想いをあまり話してくれないこともあります。
そうした場合は、第三者である専門家や外部機関に相談するのがよいでしょう。例えば、学校の先生やスクールカウンセラー、教育支援センター(適応指導教室)の窓口などが相談先として挙げられます。
また、睡眠障害やうつ病、起立性調節障害など心身の病気がかかわっていると考えられる場合は、心療内科などの医療機関にも相談しましょう。