「高卒資格」と「高卒認定」は、とてもよく似た言葉ですが、取得方法や証明する内容は大きく異なります。その違いを理解して、自分に必要なのは高卒資格と高卒認定のどちらなのかを判断することが大切です。
ここでは、高卒資格と高卒認定を比較し、それぞれのメリットについて解説します。

高卒資格と高卒認定の概要~高校を卒業しているかどうかが異なる

まず、高卒資格は「高等学校卒業資格」のことで、「高校を卒業した」という事実を示す資格を指します。一方の高卒認定は「高等学校卒業程度認定試験」のことで、「(高校を卒業していないけれど)高校卒業と同等程度の学力を認定する」ものです。
つまり、高卒資格では実際に高校を卒業していますが、高卒認定は高校を卒業していないとういうことになります。いわば正反対の事実を意味していることがわかるでしょう。

例えば、大学へ進学しようとする場合は「高等学校又は中等教育学校を卒業した者」でも「高等学校卒業程度認定試験(旧大検)に合格した者」でも受験資格があるので、どちらでも出願が可能です。ただし、進学しない場合は、高卒資格を持っているときは「高校卒業」が最終学歴になるのに対し、高卒認定を受けているときは「中学校卒業」が最終学歴になり、状況に違いが生じることになります。

高卒資格の取得方法とメリット~自学自習だけでは得られない経験が就職にも活きる

高卒資格について詳しく解説していきましょう。

高卒資格の取得方法

高卒資格を取得するためには、文字どおり高校を卒業する必要があります。高校を卒業するための要件は以下です。

  • ・3年以上高校に在籍する
  • ・卒業までに74単位を修得する
  • ・卒業までに特別活動を30時間以上出席する

実際には、学校ごとに別途卒業要件が定められており、多少の単位の読み替えなど例外もありますが、基本的には上記が必須となっています。

特に注目したいのは、卒業にはどんなに短くても3年が必要であることと、特別活動が必須であるということです。高卒資格は、単に高校で学習する内容を理解したという学力だけの証明ではなく、3年間高校生活を送り、特別活動などの集団活動もできたという証明でもあるといえます。

高卒資格を取得するメリット

高卒資格を得るメリットは、先ほどもご紹介した「学力だけではなく、さまざまな経験を得てきたことも示されている」という部分でしょう。
3年以上の高校生活からは、かけがえのない人生経験を得られます。同じ高校の仲間と交流を持ち、ともに学ぶというのは、とても有意義で、それ以上に楽しい経験です。一度、何らかの理由で学校へ通うことをあきらめてしまった人であれば、再チャレンジできたという自信にもつながります。

学習面では、先生から教えてもらえるメリットがあります。高卒認定を受けるための試験勉強は自学自習が基本ですから、独りで学習を進められるか不安がある人は、高校で教えてもらえたほうがよいでしょう。

また、就職上のメリットも見逃せません。社会では学校以上にコミュニケーションスキルが求められることも多いですから、「学力以外の人生経験も積んできた」ということは就職活動でも評価されることが期待できます。
さらに、最終学歴によって給与の変わる仕事の場合には、中学卒業か高校卒業かはとても重要な問題です。加えて、最終学歴によって就ける仕事の選択肢が少なくなってしまうこともあります。厚生労働省による調査結果を見ると、最終学歴が中学卒業(中卒)の人の就職先は「宿泊業、飲食サービス業」「卸売業、小売業」に偏っていますが、高卒の場合はこれらのほかに、製造業や医療・福祉などへの就職も多くなっています(平成28年「労働統計年報」)。原因はデータでははっきり示されていませんが、採用過程での評価が中卒と高卒で異なること以外に、そもそも中卒で応募できる求人の数が少ない可能性もあるでしょう。
ただし、大学や専門学校などに進学し、卒業すれば、高卒資格でも高卒認定でも違いは最終学歴に違いはありません。

高卒認定の取得方法とメリット~短い学習期間で大学受験資格を獲得

高卒認定についても、詳細を解説していきましょう。

高卒認定の取得方法

文部科学省による「高等学校卒業程度認定試験」に合格すれば、高卒認定を得られます。
かつては「大学入学資格試験(大検)」という名前で、主に大学などの受験資格を得るために使われてきましたが、現在では就職や資格試験にも利用されることが想定されています。

受験資格は、その年の年度終了までに満16歳になっていることで、全日制高校に在籍していても受験が可能です。
試験科目は国語、数学、英語が必修で、地歴、公民、理科については、それぞれ1~3科目程度の選択必修になっています。

高卒認定を取得するメリット

高卒認定を得る大きなメリットのひとつが、学校に通わなくても、またどんなに学習期間が短くても、試験に合格しさえすれば認定を得られることです。高卒資格の取得には最低3年かかりますから、大学などの受験資格を得るためだけなら高卒認定のほうがずっと近道だといえます。
ただし、大学受験資格には18歳という年齢制限が設けられているため、中学校を卒業してすぐに高卒認定を得たとしても、年齢が条件を満たすまでは受験できない点に注意しましょう。

また、費用を低く抑えられることもメリットといえます。高卒認定資格試験の受験料は、7科目以上受験しても8,500円です。参考書代などを入れても、かなり低コストで認定を得られるといえるでしょう。

通信制高校なら自分のペースで「高卒資格」の取得が可能!

経済的な事情や時間の都合で全日制高校や定時制高校に通えなくても、高卒認定ではなく、高卒資格を取得できる方法があります。それは、通信制高校の卒業を目指すという方法です。

通信制高校は、自学自習で作成したレポートを先生に添削してもらったり、年数回程度の登校(スクーリング)で授業を受けたりして学習を重ねたのち、単位認定試験をパスしていくことで高卒資格を取得できる学校です。毎日通学することが難しい人でも、先生や他の生徒と交流を深めながら高校卒業を目指せます。
通信制高校は、高卒認定のメリットも一部得られる高卒資格取得の方法だといえるでしょう。