中学校卒業後、すぐに働きたい人のなかには「中卒で働き口がなかったらどうしよう」と不安な気持ちがあり、進路に迷っている人もいるでしょう。
 
中卒で就職し、社会で活躍している先輩は大勢いますが、迷っているのであればほかの進路も視野に入れてじっくり考えることが大切です。
 
今回は、中卒での就職率と難易度、求人が見つかりやすい職種を紹介します。また、就職以外の選択肢も紹介しているので、中学校卒業後の進路で迷っている人は参考にしてみてください。

中卒での就職は難しい?就職内定率は79.5%

中卒でも79.5%が就職内定をもらっているため、難易度はそれほど高くありませんが、高卒よりは難しいといえます。
 
厚生労働省によると、令和5年度の高校・中学新卒者の就職内定率は、以下のとおりです。

種別 中学新卒者 高卒新卒者
就職内定率 79.5% 99.2%
求職者数 342人 約12万1,000人
求人数 986人 約48万2,000人

参考:令和5年度 高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況取りまとめ(3月末現在)|厚生労働省 より作成
 
中卒である中学新卒者の就職内定率は、79.5%です。企業が働きたい人を募集する数である求人数が986人であるのに対し、342人が応募して、そのうち79.5%が採用通知をもらったことを意味します。
 
就職内定率だけを見ると、中卒で就職する難易度はそれほど高くありません。
 
ただし、高卒新卒者の就職内定率は99.2%で、中学新卒者と比較すると高い割合であるため、高卒と比較すると中卒の就職難易度は高いでしょう。

中卒の就職が厳しいといわれる理由

中卒と高卒の就職難易度を比較したとき、中卒のほうが厳しい理由に、大きく分けて次の3つがあります。

● 求人数が少ない
● 資格条件を満たしにくい
● 離職率が高く不安をもたれやすい

一般的に、中卒の就職が厳しいといわれる理由を知ったうえで、進路を考えましょう。

求人数が少ない

中卒と高卒を比較すると、求人数に大きな差があるため、中卒者の就職は厳しいといえます。求人数とは、ハローワーク(公共職業安定所)が受け付けた「企業が求める働き手の採用予定人員」の数です。
 
厚生労働省によると、令和5年度の高卒者向け求人数は約48万2,000人で、中卒の約489倍となっており、大きな差があります。

種別 中学新卒者 高卒新卒者
求人数 986人 約48万2,000人

参考:令和5年度 高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況取りまとめ(3月末現在)|厚生労働省 より作成
 
高卒の場合、求人数と同様に求職者数も多いため、競争率で比較すると高卒のほうが難易度は高いでしょう。
 
しかし、求人数だけを見ると、中卒者を求める企業が圧倒的に少ないことから、働き先が見つからなかったり、選べなかったりします。そういった意味で、中卒者は高卒者よりも就職が難しいのです。

資格条件を満たしにくい

中卒では資格の取得条件を満たせないことがあり、資格が必要な求人に応募できないため、就職が厳しくなるのです。
 
例えば、中卒で取得できない資格として、以下があります。

● 保育士
● 栄養士
● 美容師免許
● 教員免許状
● 看護師

いずれも、高卒以上の学歴が必要です。一方、以下のように中卒でも取得できる資格があります。

● 宅地建物取引士
● 行政書士
● 介護職員初任者研修

中卒でも資格をもっていると、就職難易度が変わってくるでしょう。

離職率が高く不安をもたれやすい

中卒者は離職率が高い傾向にあり、企業にとってはせっかく採用しても離職されてしまう不安があるため、採用しにくい現状があります。
 
厚生労働省が発表した「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」では、採用1年目で離職する中卒者が31.9%であり、ほかの学歴と比較してもっとも高いことが示されています。

学歴 就職後年数1年目の離職率(※)
中学卒 31.9%
高校卒 17.8%
短大等卒 19.2%
大学卒 12.0%

※令和4年の数値を引用
参考:新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)|厚生労働省 より作成
 
企業にとって、採用後すぐに辞められてしまうと、仕事を教えても無駄になるうえ、新しい人を探さなければならなくなります。新しい人を探すために、余計な時間とお金がかかってしまうため「最初から中卒者は採用しないでおこう」と考える企業もあるでしょう。
 
就職後長く仕事を続けている中卒者もいる一方、一般的な離職率の高さから、中卒者は厳しい目で見られる傾向があります。

学歴不問の求人が見つかりやすい職種

中卒で就職したい場合は、学歴不問の求人を探すことになります。学歴不問の求人が見つかりやすい職種は、次のとおりです。

● 接客・販売
● 建設作業員
● コールセンター
● 営業
● 介護

中学校卒業後にすぐ働こうと考えている人は、上記の職種から探すと、求人が見つかるかもしれません。
 
なお、年収や高卒未満の割合などの数値データは、国の統計データをもとにしていますが、地域や条件によって差があるため、あくまで参考に留めてください。

接客・販売

接客・販売は、お客さまと接して商品を販売したり、サービスを提供したりする仕事です。例えば、以下の職業があります。

職業 年収(※) 高卒未満の割合
飲食チェーン店の店員 327.9万円/年 1.9%
レンタカー店舗スタッフ 394.3万円/年 2.4%
スーパーのレジ係 361万円/年 5.2%
レストランのホールスタッフ 327.9万円/年 5.9%
化粧品販売 361万円/年 8.9%

参考:職業情報提供サイトjobtag|厚生労働省 より作成
 
中卒者を含む高卒未満の割合は、職業によってばらつきがあります。厚生労働省が運営する「職業情報提供サイトjobtag」ではほかの職業の詳細も見られるので、高卒未満の割合が高い職業がほかにないか、探してみてください。

建設作業員

建設作業員は、家やビルなどの建物を建てる仕事で、以下のような職業があります。

職業 年収 高卒未満の割合
建設・土木作業員 411.1万円/年 16.7%
建設機械オペレーター 474.7万円/年 18.6%
型枠大工 460.1万円/年 30.0%
解体工 460.1万円/年 32.0%
とび 460.1万円/年 42.2%

参考:職業情報提供サイトjobtag|厚生労働省 より作成
 
建設業関連の仕事は体力が必要であるものの、学歴不問の求人が多く、中卒者でも採用される可能性があります。
 
建設機械オペレーターの場合、ブルドーザーやショベルカーなどの重機を運転するためには免許が必要です。就職後に免許の取得をサポートしてくれるケースもあり、働きながら免許を取得すると、仕事の幅が広がるとともに年収アップも狙えます。

コールセンター

コールセンターで働く人はオペレーターと呼ばれ、お客さまからの問い合わせに応えたり、お客さまに電話で商品を案内したりします。
 
電話がたくさん用意されたコールセンターで働くのが一般的ですが、リモートワークが普及したことで、最近は自宅で働くオペレーターも増えています。
 
職業情報提供サイトjobtag」によると、コールセンターオペレーターの年収は367万円です。高卒未満の割合は0%ですが、学歴不問で資格も不要であるため、中卒者も採用される可能性があります。

営業

営業とは、お客さまに商品やサービスを買ってもらう、または利用し続けてもらうために、接客からアフターケアまでおこなう仕事です。例えば、以下の職業があります。

職業 年収 高卒未満の割合
広告営業 579.5万円/年 2.0%
OA機器営業 533.5万円/年 2.1%
商社営業 579.5万円/年 2.2%
印刷営業 579.5万円/年 4.3%
自動車営業 533.5万円/年 4.5%

参考:職業情報提供サイトjobtag|厚生労働省 より作成
 
低い割合ですが、高卒未満の人たちも働いていることから、中卒者も採用される可能性があります。ただし、お客さまと良好な関係を築くために、高いコミュニケーション能力が求められるでしょう。

介護

介護業界では、高齢者や障害のある人たちが生活を送れるよう、お世話をしたり家事をサポートしたりする仕事があります。例えば、以下のような職業です。

職業 年収 高卒未満の割合
施設介護員 371.4万円/年 2.1%
訪問介護員(ホームヘルパー) 390万円/年 7.8%
老人福祉施設生活相談員 425.8万円/年 5.8%

参考:職業情報提供サイトjobtag|厚生労働省 より作成
 
日本は、少子高齢化が進んでいるため、今後ますます介護業界の求人の増加を見込めます。学歴不問の介護士であれば、中卒者でも採用される可能性が高いでしょう。
 
現場で経験を積みながらケアマネジャーや社会福祉士の資格を取得すると、より専門的な仕事ができるとともに、年収アップを狙えます。
 
資格取得のサポート制度を設置している事業所もあるため、求人をチェックする際の参考にしてみてください。

中卒で就職する前に知っておきたいポイント

中卒で就職を目指す前に、事前に次の2つのポイントを知っておくとよいでしょう。

● 生涯賃金が低いというデータがある
● 正社員になりにくいという統計もある

ポイントを理解したうえで、あらためて進路を考えても遅くはありません。

生涯賃金が低いというデータがある

中卒者は、ほかの学歴の人たちと比較して、生涯賃金が低いというデータがあります。

学歴 男性の生涯賃金(※) 女性の生涯賃金(※)
中学卒 1億9,660万円 1億4,260万円
高校卒 2億300万円 1億4,920万円
専門学校卒 1億9,780万円 1億7,080万円
高専・短大卒 2億2,840万円 1億7,230万円
大学卒 2億4,740万円 1億9,800万円
大学院卒 3億3万円 2億5,050万円

※ 2022年企業規模計の数値を引用
参考:ユースフル労働統計―労働統計加工指標集―|労働政策研究・研修機構 より作成
 
今回紹介した生涯賃金は、学校を卒業してからすぐにフルタイムで正社員を続け、60歳まで働き続けた場合にもらえる賃金の合計で、退職金を含みません。
 
転職やキャリアアップなどによっても生涯賃金は変わりますが、一般的に中卒者の年収は低くなる傾向があるため、たくさん稼ぎたい人は高卒以上の学歴を目指すことも検討したほうがよいでしょう。

正社員になりにくいという統計もある

厚生労働省によると、在学していない若年労働者を最終学歴別に見たとき、正社員として働いている割合は以下のとおりで、中卒者の割合が低くなっています。

最終学歴 正社員の割合
中学卒 35.4%
高校卒 56.3%
専修学校(専門課程)修了 66.6%
高専・短大卒 66.2%
大学卒 80.9%
大学院修了 84.3%

調査の概況|厚生労働省 より作成
 
正社員は、雇用期間(就職先で働ける期間)に定めがないため、基本的には「辞めます」と伝えるまで働くことが可能です。一方、非正規社員は、雇用期間が決められているため、期限を迎えると契約が終了し、働けなくなる可能性があります。
 
正社員と非正規社員はそれぞれにメリットとデメリットがあるため十分な比較が必要ですが、雇用期間だけを比較すると正社員のほうが安定しています。
 
そのため、安定性を求める人は、正社員になりにくい中卒よりも、高卒以上を目指したほうがよいでしょう。

進路選択の幅を広げるためにできること

中学校卒業後の進路選択の幅は、以下の方法で広げられます。

● 専門的な技術を身につける
● 高等学校の卒業資格を取る
● 高卒認定試験を受ける

進路に迷っている人は、3つの選択肢も含めて、もう一度じっくり考えてみましょう。

専門的な技術を身につける

中学校卒業後にすぐ働きたい人は、専門的な技術を身につけるのもひとつの手段です。
 
仕事の相談をしたり、紹介してもらえたりするハローワークでは、求職者向けに求職者支援訓練を実施しています。
 
例えば、パソコンスキルや経理・簿記、建築CADなどを学べる講座があります。
 
年齢にかかわらず無料で受講できるため、だれでも専門的な技術を身につけることが可能です。企業が求めるスキルを身につけられると、採用されやすくなるでしょう。

高等学校の卒業資格を取る

中学校卒業後に高校へ進学し、高校卒業資格を取得すると、最終学歴が高卒になります。中卒と比較して求人数が増えるため、幅広い職種から自分にあった職業を選べるでしょう。
 
また、中卒ではできない専門学校や短大、大学への進学や、高卒以上の学歴が必要な資格試験への挑戦も可能です。
 
高校卒業資格は、学校に通う日数や修得する単位数など、国が決めた条件を満たすことで取得できます。資格を取得できるのは、以下の高校です。

高校の種類 特徴
全日制高校 日中学校に通い、対面で授業を受ける
定時制高校 ・夜間や週末に学校に通い、対面で授業を受ける・日中は働いている人が多い
通信制高校 自宅で自主学習やオンライン学習をおこない、年に数回学校に行く

全日制に通うのが難しい場合は、定時制や通信制も考えてみるとよいでしょう。

高卒認定試験を受ける

中学校卒業後、就職してから高卒認定試験を受ける方法もあります。
 
高卒認定試験に合格すると、高校を卒業しなくても高校卒業と同じ、またはそれ以上の学力をもっていると証明できるようになります。
 
高卒認定資格を取得できれば、高校に行かなくても専門学校や短大、大学の受験、高卒以上の資格試験に挑戦できるため、進路の幅が広がるはずです。
 
以下の記事では、高卒認定と高卒資格の違いを詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
 
関連記事:高卒認定試験とは?高卒資格との違いと受け方・費用・難易度を解説

通信制高校で高校卒業資格を目指そう!

通信制高校は、高校のなかでも自分のペースで学習を進めながら高校卒業資格を取得できるのが魅力的な学校です。
 
学校に通うのが難しいという理由で、中卒で就職を目指すのであれば、通信制高校も選択肢に入れてみてください。
 
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