定時制高校は、学校外の活動やアルバイトなどと両立しながら高校卒業資格の取得を目指せる高校です。なかには、それ以外の事情で通っている人もいます。
全日制高校よりも遅い時間帯に授業がスタートする定時制高校も多いため、定時制高校なら頑張って通えるかもしれないと考える人もいるでしょう。
今回は、定時制高校の授業時間帯や卒業までの年数、学費などの基本情報と就職率・進学率を紹介します。進学する高校の種類で迷っている人は、ぜひ参考にしてみてください。
1. 定時制高校とは
定時制高校とは、働きながら学びたい人や自分のペースで学びたい人向けに設置された教育制度です。1948年に、勤労青少年(働く人)のために創設されました。
毎日登校が必要であるものの、1日の授業時間が4時間程度と全日制と比較して短い学校が多く、仕事を終えてから通うことが可能です。
全日制高校とは、授業の時間帯や卒業にかかる年数が異なります。
1.1. 授業の時間帯は3種類ある
定時制高校の授業の時間帯は、大きく分けて3種類あります。
種類 | 概要 | 時間帯例 |
---|---|---|
夜間定時制 | 夜の時間帯に授業をおこなう | 午後5:30~午後9:00 |
昼間二部 定時制 |
朝と昼の時間帯に授業をおこない、どちらかのコースを選べる | 1部:午前9:00~午後1:05 2部:午前10:50~午後3:25 |
三部制 | 朝・昼・夜の時間帯に授業をおこない、いずれかのコースを選べる(※) | 1部:午前8:50~午前12:30 2部:午後1:15~午後4:55 3部:午後5:20~午後9:05 |
※学校によっては1部に在籍する生徒が2部の授業に参加するといった「他部履修」が可能な場合もある
三部制にコースを追加して、四部制を採用している高校もあり、学校によってさまざまです。どの種類でも、各学校が独自に時間帯を設定しているため、定時制高校を選ぶ際は授業時間をよく比較しましょう。
1.2. 学年制と単位制がある
定時制高校には学年制と単位制があり、学校によって異なるため選ぶ際には注意が必要です。
種類 | 概要 |
---|---|
学年制 | ・学年ごとに決められたカリキュラムに沿って要件をクリアすると進級する仕組み ・要件を満たせない場合は留年する ・3年次の要件をクリアすれば高校卒業資格を取得できる |
単位制 | ・教科や科目ごとに卒業に必要な単位数が決まっており、必要単位を修得すれば高校卒業資格を取得できる仕組み ・学年に関係なく単位を積み重ねるため、進級の概念がない |
学年制は、全員が同じカリキュラムに沿って学習を進めるので、進級・卒業するためには規定の時間分は出席しなければなりません。
一方、単位制は自分に合った科目を選んで自分に合ったカリキュラムを組めます。そのため、1年次は単位を多めに取って、2年次は少なめにするなど、自分のペースで学習を進められる柔軟性があります。
ただし単位制は、レポートを出さなかったり、ゆっくりすぎるペースで進めたりすると、いつまで経っても卒業できない落とし穴もあります。そのため、単位制を選ぶ場合は、計画的に学習を進めることが大切です。
それぞれにメリット・デメリットがあるので、自分に合ったほうを選びましょう。
1.3. 卒業にかかる年数は3年以上
定時制高校の修業年限(卒業に必要な期間)は、学校教育法第56条で「3年以上」と定められています。そのため、最短は3年で卒業が可能ですが、4~5年かかることもあります。
全日制高校と比較して1日あたりの授業時間が短い定時制高校は、高校卒業資格の取得に必要な単位を修得するために日数が必要です。
そのため、文部科学省が発表した「高等学校における教育の質確保への対応のための調査研究」の結果からもわかるように、定時制高校は4年で卒業する人が37.5%と高い割合なのです。
出典:高等学校における教育の質確保への対応のための調査研究|文部科学省
2. 定時制高校に通う生徒の特徴
定時制高校に通う生徒は、大きく3種類に分かれます。ここでは「高等学校における教育の質確保への対応のための調査研究」の結果をもとに、定時制高校に通う生徒の特徴を解説します。
2.1. パート・アルバイトで働く人が多い
出典:高等学校における教育の質確保への対応のための調査研究|文部科学省
このデータからは、定時制高校の生徒のうち、働いている人の割合の合計が54.8%と半分以上を占めることがわかります。通信制高校の33.6%と比較しても、高い割合です。
特に多いのはパート・アルバイトで働く人で、51.0%となっています。このように、定時制高校は働きながら通う人が多い高校だといえます。
2.2. 働いていない人もいる
定時制高校の生徒は、全員が働いているわけではなく、働いていない人もいます。先ほどのデータでは、44.3%の生徒が「就業なし」であり、パート・アルバイトで働く人の次に高い割合でした。
以下は、生徒の入学動機として1番多いと感じたものの割合です。
出典:高等学校における教育の質確保への対応のための調査研究|文部科学省
働いていない人のなかには、対人関係や学習で困難を抱えている人がいることが考えられます。一方、働きながら高校卒業資格を取得したい人の割合は1.9%と、かなり低い傾向です。
以下は、令和1年度と比較した場合の生徒ごとの増減傾向において、「主に就業のために空いた時間で学びたい生徒」の増減を示したデータです。
出典:高等学校における教育の質確保への対応のための調査研究|文部科学省
これを見ると、働きながら高校卒業資格を取得したい人は減少傾向にあり、「働く」以外の理由で定時制高校を希望する人が増えていると考えられます。
2.3. 不登校経験のある人が多い
定時制高校では、通信制高校の65.1%より低い割合ですが、小中学校や前の高校などで不登校を経験した生徒の割合が54.4%と半分以上を占めています。
出典:高等学校における教育の質確保への対応のための調査研究|文部科学省
「小・中学校及び前籍校における不登校経験がある生徒」の割合は増加傾向にあることも踏まえると、不登校経験者からの需要が高まっているといえます。
出典:高等学校における教育の質確保への対応のための調査研究|文部科学省
3. 定時制高校の学費
定時制高校の学費は自治体や学校によって異なりますが、多くが公立であるため学費が安い傾向があります。
例えば、東京都の場合は次のとおりです。
学校別・課程別 | 授業料/年 | 入学料 |
---|---|---|
高等学校の 定時制課程 |
32,400円 | 2,100円 |
高等学校の 定時制単位制 課程 |
1単位につき1,740円×履修単位数 | 2,100円 |
高等学校の 全日制課程及び 中等教育学校の 後期課程 |
118,800円 | 5,650円 |
参考:都立高等学校、中等教育学校(後期課程)の授業料・入学料及び特別支援学校高等部の授業料について|東京都教育委員会
全日制高校と比較しても、かなり安いことがわかります。
また、高等学校等就学支援金制度をはじめ、さまざまな支援制度を活用できるため、学費をさらに安く抑えることが可能です。自治体によっては、教科書の支給や給食費の補助を受けられる場合があります。
4. 定時制高校の就職率・進学率
定時制高校に進学したあとのことが気になる人もいるでしょう。ここでは、定時制高校の就職率・進学率を紹介します。
出典:高等学校における教育の質確保への対応のための調査研究|文部科学省
4.1. 就職率
定時制高校の就職率は40.4%と、6つの回答のうちもっとも高い割合です。特に夜間定時制は就職率が高いことがわかります。
通信制高校の19.3%と比較すると就職率が高いため、就職を考えている人に向いているといえます。
4.2. 進学率
定時制の大学・専門学校の進学率を合計すると36.8%となり、通信制高校の48.5%と比較すると低くなっています。
定時制高校のなかでも差があり、夜間定時制の進学率が23.5%とさらに割合が下がります。データだけを見ると、大学・専門学校への進学を目指すのであれば、通信制高校や夜間定時制以外の定時制高校を検討するのがおすすめです。
5. 定時制高校の入試の特徴
定時制高校に入学できるのは、基本的に4月です。学年制は、学年ごとにカリキュラムが決まっているため、4月スタートと決まっているためです。ただし、単位制の定時制高校であれば、もう少し柔軟に入学時期が設定されています。
学年制の場合は、入学する前年度の3月までに入試がおこなわれます。単位制はこの限りではありません。
定時制高校の入試は、基本的に国語・英語・数学の3教科です。全日制高校と違って学力検査に重きを置かないため、点数で落ちることはあまりありません。
学校によっては学力検査をおこなわず、面接のみの場合もあります。例えば、都立定時制高校には学力検査がありません。
入試の方法も学校によってさまざまなので、学校を選ぶ際にチェックしてみましょう。
6. 定時制・全日制・通信制の違い
定時制高校の特徴を踏まえて、全日制高校と通信制高校と比較した結果が以下のとおりです。
種類 | 定時制 高校 |
全日制 高校 |
通信制 高校 |
---|---|---|---|
卒業に 必要な 単位数 |
74単位以上 | ||
卒業までの 年数 |
3年以上 | 3年 | 3年以上 |
登校頻度 | 週1~5日(学校による) | 週5日 | 週0~5日(学校による) |
学習する 時間帯 |
・夜間 ・昼間 |
昼間 | 自分で決める |
学習方法 | ・学校での対面授業 ・オンライン授業 |
・学校での対面授業 ・オンライン授業 |
・オンライン授業 ・自宅学習 |
卒業に必要な単位数は同じですが、卒業までにかかる時間や学習の時間帯、方法などが異なります。
毎日学校に通える人は全日制高校で良いですが、なんらかの事情で「朝の登校が難しい」「毎日登校できない」という人は、定時制高校か通信制高校を選択肢として考えてみましょう。
6.1. 自分のペースで学びたいなら通信制高校がおすすめ
自分のペースで学習を進めたいと思っている場合には、通信制高校がおすすめです。
例えば、明聖高校のWEBコースでは、年数回の通学(スクーリング)がある以外は、自宅やその他学校以外の場所での学習が可能です。
学習はパソコンやスマートフォンで動画を見て、自分のペースで進められます。芸能やスポーツなど、他に打ち込みたいことがある人も選んでいる学び方です。
単位制であるため、修得できなかった単位は次年度に再履修することもでき、3年間で卒業資格を取得しやすくなっています。
通信制高校と全日制・定時制との違いは、以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
関連記事:通信制高校とは?全日制・定時制との違い、それぞれの特徴を解説|通信高校生ブログ|明聖高等学校
定時制高校と通信制高校で迷っている場合は、ぜひ明聖高校に一度遊びにきて、検討してみてください。
6.2. 通信制高校では専門的なコースもある
定時制高校の学科には、普通科の他に専門学科(農業・工業・商業・情報・併合・産業)、総合学科などがあります。学校によっては、芸術や福祉の科目を充実させたり、少人数習熟度授業を実施したりといった特色も見られます。
一方の通信制高校は、専門的なコースが充実しているのが特徴です。例えば通信制高校である明聖高校では、情報系に特化したコース、デザインに特化したコースを用意しています。
千葉本校の全日ITコースでは、ITの基礎から実践的なプログラミングまで、幅広い知識を身につけることができます。
明聖高校の全日ITコースについて詳しく知りたい方は、以下のページをご参照ください。
全日ITコース|千葉本校|明聖高等学校
中野キャンパスの全日デザインコースでは、明聖高校独自のカリキュラムで、デジタルイラストの技法やキャラクターデザインなどを学ぶことができます。
全日デザインコースについて詳しく知りたい方は、以下のページをご参照ください。
まとめ
定時制高校は、全日制高校よりも遅い時間帯に授業を受けられるため、朝の登校が難しい人に適しています。働く人だけではなく、対人関係や学習で悩みのある人や不登校経験のある人など、さまざまな背景のある人が通っている点が特徴です。
ただし、学年制の場合は毎日登校して、決められたカリキュラムをクリアする必要があります。そのため、毎日登校できない人や自分のペースで学習を進めたい人には、通信制高校がおすすめです。
明聖高校では、さまざまな背景がある生徒が自分のペースで学び、高校卒業資格を取得しています。大学・専門学校への進学や就職ももちろん実現できるので、進路の選択肢として考えてみてください。
参考URL
高等学校における教育の質確保への対応のための調査研究|文部科学省
高校生等への修学支援|文部科学省
学校教育法|e-GOV
定時制課程|東京都教育委員会
都立高等学校、中等教育学校(後期課程)の授業料・入学料及び特別支援学校高等部の授業料について|東京都教育委員会
高等学校等就学支援金事業について|東京都教育委員会
定時制・通信制教育|愛知県
WEBコース|明聖高等学校
学校説明会・相談会|明聖高等学校
通信制高校とは?全日制・定時制との違い、それぞれの特徴を解説|通信高校生ブログ|明聖高等学校
全日ITコース|千葉本校|明聖高等学校
全日デザインコース|中野キャンパス|明聖高等学校
明聖高等学校は、千葉・中野にキャンパスを構える通信制高校です。全日コース・全日ITコース・通信コース・WEBコースに分かれており、一人ひとりに合わせた高校生活を過ごすことができます。