子どもが不登校になると、多くの親は平常心ではいられません。不安やストレスを感じることもあるかもしれませんが、まずは冷静になりましょう。
不登校は、人間関係のトラブルや学業不振、家族関係などの要因が複雑に絡みあって起こります。特定の子どもだけでなく誰にでも起こりえます。また子どもの甘えに起因するものではありません。背後に発達障害やHSC(Highly Sensitive Child)が隠れているケースもあります。
叱ったり登校を強要したりしても問題は解決しません。焦らずにじっくりと子どもに向き合いましょう。
今回は、子どもが不登校になった際にできる親の対応や不登校が甘えではない理由を解説します。

1. 親ができる不登校になった子どもへの4つの対応

不登校になった子どもに対して親ができる4つの対応を紹介します。

対応1. 強く励まさない、厳しい指導をおこなわない

子どもが不登校になったとき、親の強い励ましや厳しい指導は必要ありません。不登校とは、子どもが「自分ではどうにもできない事態」に陥り、疲れ果てて登校できない状態です。

不登校になった当初は本人も混乱しているケースが多く、心身のエネルギーが大きく低下しているため、休息が不可欠です。エネルギーが回復する前に強い励ましを受けても、心の負担にしかなりません。ありのままの子どもを受け入れる姿勢を貫きましょう。

親の立場では将来への影響も考えずにはいられませんが、まずは目の前にある現実を受け止める必要があります。とくに高校生は、不登校のデメリットを本人が十分理解しています。自我も確立されつつあり、親の一方的なアドバイスや厳しい指導が「誰もわかってくれない」という絶望感や反発心につながる可能性も低くありません。問題がこじれると命に関わるおそれもあるため、言動には十分注意しましょう。

親もつらいかもしれませんが、不登校に追い込まれた子どもが誰よりもつらい思いをしています。友達や兄弟と比べたり世間体を持ち出したりしないように心がけましょう。

対応2. なんでも話しやすい親になる

子どもが不登校になると親は原因を問いただしたくなりますが、あくまでも子ども自身が話し出すまで待つスタンスが重要です。子どもに「味方になってもらえそうだ」「相談してみよう」と思われるような親を目指しましょう。

子どもに対する親の姿勢を見直さなければならないケースも少なくありません。高校生は親から自立する時期であり、親に対して批判的な態度を取る場面も増えます。「子どものため」を思ってしている親の行為が、子どもの目には「親自身のため」だと映り、心のバランスを欠いてしまう場合もあります。

そもそも、親子関係は長い時間をかけて作っていくものです。普段から「あなたの味方だよ」とメッセージを伝え続けましょう。

とくに小中学生時代に何でも話せる家族がいるかは重要です。高校生になると自立心の高まりとともに家族の優先順位は低下する傾向がありますが、小中学生時代に良好な家族関係を築けないと精神的安定の基盤を作りにくくなります。

いじめがあっても親には言いにくいと思う子もいます。不用意にいじめの有無を聞くと自尊心を傷つけられ殻に閉じこもってしまいます。高校生の場合、なんでも話せる環境を整えてあげながらも、無理に悩みを聞き出そうとしないことが大切です。

対応3. 家の中に居場所をつくってあげる

自分の居場所があると、子どもの精神的安定につながるという研究結果があります。高校生は自分一人の部屋を居場所と考える傾向があります。精神のバランスを回復するために、一人になれる部屋を確保してあげましょう。

不登校は子どもが助けを求めているサインですが、素直に助けを求められない子もいるため、親の継続的な働きかけは欠かせません。一方、一人部屋を与えると親の働きかけがしづらい場合があります。子どもが話したがらないからといって、親が何もしなくてもいいわけではありません。腫れ物に触るような行動を取ると子どもの孤立感が高まります。

高校生の場合、不登校で出席日数や単位数が不足すると進級できない可能性が出てきます。大学受験や就職など人生を左右するイベントを控えている時期でもあり、本人が最も危機感を持っている状況です。不登校が長引くと焦る気持ちが強くなって、昼夜逆転やゲーム依存などの現実逃避的行動が起こる場合があります。

不登校を脱するためにはきっかけが必要です。ただし、何がきっかけになるかは子どもによって異なります。予想もしなかったことがきっかけとなって、前向きな気持ちになるケースも珍しくありません。子どもに寄り添う姿勢を崩さず、子どもが求める形で粘り強く手を差し伸べましょう。

対応4. 友人と遊ぶ、連絡することをすすめる

遊べる仲間を作ることは、きっかけづくりに役立ちます。友人と遊んだり連絡を取ることをすすめてみるといいでしょう。通学している学校内に頼れる友人がいない場合は、児童相談所やフリースクールなどの施設を利用する手もあります。

児童相談所とは、児童福祉法に基づいて各都道府県に設置されている公的機関です。不登校の相談は料金がかからないため、積極的に活用しましょう。親の相談も応じてもらえます。カウンセリングや治療プログラムが受けられる場合や、兄・姉世代のボランティア(メンタルフレンド)を派遣してもらえる場合もあります。

一方、フリースクールとは、不登校の子どもが学んだり友達と遊んだりできる民間施設です。子どもによい刺激をもたらす可能性はありますが、利用料金が発生します。理念やサポート内容も施設によって異なるため、子どもに必要な支援が受けられるサービスを探しましょう。

2.不登校が甘えじゃない理由と甘え依存型(甘え依存タイプ)とは?

2020年に文部科学省が公表した調査結果によると、2019年度の高等学校における不登校の生徒数は50,100人です。不登校の主な要因は以下のとおりです。

学校の環境(いじめ・友人関係) 35.1%
無気力・不安 33.8%
生活リズムの乱れ 15.0%
その他 8.8%
家庭環境 7.3%

参考元:文部科学省「令和元年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」

無気力や不安を感じることや、学業の不振や人間関係のトラブルなどが主な要因になっています。不登校は追い詰められた子の回避行動であって、甘えではありません。

一方、不登校のタイプに「甘え依存型」を含める考察も存在します。「甘え依存型」は神経性登校拒否の一種ですが、不登校との関係性に関する研究が十分になされているとはいえません。先にも述べたとおり、不登校になる原因はさまざまです。「何かに甘えたい」といった精神状態のみに起因するものではありません。子どもを無理にタイプ分けすると、問題がこじれて最適なサポートにつながりにくくなるおそれがあります。

3.明聖高校では心の悩みや進学などのご相談も受けられます

明聖高等学校は、千葉県千葉市に本校を置く私立通信制高校です。2000年の開校以来、基礎学力の向上や不登校生徒に対するサポートに取り組んでいます。東京都中野区に中野キャンパスを持つほか、Webコースも利用可能です。

各教員はカウンセリングやメンタルヘルスなどの専門資格を所持しているため、登校や人間関係に不安を抱える生徒や学業が苦手な子どもも安心して利用できます。子どもの不登校で悩んでいる家庭向けの相談会も実施しています。