子どもが不登校になったとき、本人にとっても保護者にとってもポジティブな形で乗り越えるには、子どもの気持ちに向き合った適切な対応が重要です。では、子どもはどのような対応を求めているのでしょうか。家庭でできるサポートや利用できる施設・機関について解説します。

学校復帰を前提とした不登校対応が、長期化・将来の後悔につながることも

不登校は決して悪いもの・劣っていることを示すものではなく、子どもにとって必要な休息であり、自分と向き合う期間です。したがって、本人の状況を踏まえずに登校を促すような対応をすると、不登校が長期化する恐れがあります。場合によっては、社会復帰に支障をきたしたり、仮に学校復帰・社会復帰できたとしても、本人や家族に後悔・不安が残ったりしてしまう可能性も否定できません。例えば、次のように語る不登校経験者・保護者も見られます。

本人(不登校経験者)

  • ● 大学に入ったものの、英語や数学などの学力が不足していて困っている。不登校は仕方がなかったと思う一方、どうしても後悔してしまう。
  • ● 不登校を経験して以降、人との関わり方に今でも不安があります。中学校のころまでに、人ときちんと向き合い、話す経験をしておけばよかったです。

保護者

  • ● 子どもはいまだに対人関係がうまくいかず、社会生活に支障をきたして家で過ごしています。今後、私たち親も高齢になっていくことを考えると、将来、自立できるのか不安です。
  • ● 子どもは大学に進学しましたが、友だちができないようで、通い続けられるかどうか心配しています。

不登校は「学校復帰できればすべて解決」というわけではないことが見て取れるでしょう。

どのような対応を求めている?不登校中の子どもの気持ち

不登校は、子ども自身が問題に向き合い、主体的に解決していくことで初めて、本当の意味で克服されるといえます。国(文部科学省)の不登校支援の方針としても、2019年にはこれまでの学校復帰を前提とした考え方が改められ、「『学校に登校する』という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要がある」と明示されました。

こうした解決を目指すためには、子どもの気持ちに向き合い、寄り添った不登校対応・支援が重要です。

不登校になったばかりのときの気持ち

長期にわたってつらい日々を過ごし、心身ともに疲れ果てている状態です。エネルギーを取り戻すため、まずは休息を取ることを必要としています。

心身の状態が落ち着いてきたときの気持ち

心の状態や体調が落ち着いてくると、本人も「不登校を乗り越えるために何かしたい・しなければいけない」と考えるようになります。また、そのためのサポートも必要としている状態です。具体的に求めているサポートとして、実際に不登校経験者を対象に行った調査では、次のような項目が上位に上がっています(「不登校に関する実態調査 平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書」)。

  • ● 心の悩みについての相談
  • ● 自分の気持ちをはっきり表現したり、人とうまくつきあったりするための方法についての指導
  • ● 学校の勉強についての相談や手助け
  • ● 友人と知り合えたり、仲間と過ごせたりする居場所
  • ● 進学するための相談や手助け

【家庭での対応】子どもの声に耳を傾け、見守りながら克服を後押し

こうした子どもの気持ち・状態を踏まえて保護者ができるのは、まず家庭を休息できる場所にすること、そして、本人が復帰に向けた第一歩を踏み出すのをサポートすることです。具体的には、次のような対応を心掛けてみましょう。

子どもの現状を受け止め、見守る

まずは、子どものあるがままの姿を認め、少しずつ気持ちを打ち明けてくれるようになるまで見守ることが大切です。学校については「休んでもいいよ」と伝えましょう。

子どもの声に耳を傾け、家族で話し合う

子どもが自分の想いを口にするようになったら、今の悩みやその経緯、希望や要望、将来への考えなどについてじっくり耳を傾け、話し合いましょう。

復帰に向けた手助けをする

子ども自身の意思を尊重して、復帰に向けたサポートをしていきましょう。例えば、次のような方法が考えられます。

  • ● 適応指導教室やフリースクールなどの支援機関、相談窓口を紹介する
  • ● 転校(転入)を含めた学校復帰・社会復帰の選択肢を紹介する
  • ● 自宅で勉強したり、趣味に打ち込んだりできる環境づくりを手伝う
  • ● 家事をしてもらう、一緒に散歩に出かけるなど活動してみる

これらはあくまで「サポート」であることが重要です。解決を焦ったり、復帰を強制したりすると、逆に子どもの心を閉ざしてしまうことにもなりかねないため、十分に注意しましょう。

【支援施設】学力・メンタルなど、子どもが求める対応に合った施設を選ぼう

不登校への対応は、家庭だけでは難しいケースも少なくありません。その場合には、子どもが求めるサポートに応じて、公的・民間の各種支援施設も活用してみましょう。

学校関係

不登校の解決には、学校との連携が不可欠です。学力や進路については担任をはじめとする教科の先生、メンタル面については保健室やスクールカウンセラーが相談に乗ってくれます。

また、現在通っている学校への復帰が難しい場合には、自宅学習を中心としたスタイルで学べる通信制高校への進学・転入を検討するのも手です。通信制高校の中には、不登校経験者を学力面・メンタル面でサポートする体制を整えているところもあります。

公的な支援施設、相談窓口

不登校の子どもを学力面・メンタル面で支援する施設として、都道府県や市町村が教育支援センター(適応指導教室)を設置しています。学校と連携すれば、通所期間を学校への出席日数として扱ってもらえる場合もあります。また、同じ悩みを分かち合う同世代の仲間と交流できることから、子どもの居場所になる可能性もあるでしょう。

そのほか、本人はもちろん、保護者も悩みを相談できる窓口として、次のようなものも利用できます。

  • ● 教育相談センター(教育相談室)
  • ● 子ども家庭支援センター(子ども家庭センター、子ども家庭総合センター)
  • ● 児童相談所
  • ● 保健所

医療機関

体の不調が現れている場合は、精神科や心療内科を受診したほうがよい場合もあります。最近では「不登校外来」「思春期外来」などを専門的に設置する医療機関もあるため、チェックしてみるとよいでしょう。