不登校になってしまうと「早く学校復帰しなきゃ」と、本人も家族も焦ってしまうかもしれません。無理に学校に戻ろうとすると、また不登校を繰り返してしまうという場合もあるため、焦らず準備を整えることが大切です。

今回は、不登校から学校復帰を成功させるために必要な4つのステップと保護者に求められる行動について解説します。

不登校でも学校復帰はできる!焦らず心の充電を満タンにしよう

不登校の状態が続くと、本人も家族も「ずっと学校に行けないんじゃないか」という不安な気持ちに包まれます。不登校はストレスをためてしまった子どもの充電期間ととらえてみてください。そして、心の充電が満タンになるまでの間に、ゆっくりと登校準備を整えていけばよいのです。
 
「そうはいっても、勉強に置いていかれたら将来が閉ざされるのでは……」と心配されるのは当然です。しかし、学校に行かなくても勉強する方法はありますので、本人の状態に向き合ってみてください。

不登校でも学校復帰はできる!不登校児の高校進学率は約85%

不登校児の高校進学率が約85%であることから、不登校からの学校復帰が可能であるといえます。
 
文科省は平成23年度より「不登校に関する実態調査」と称して、平成18年度時点で不登校だった子どもの5年後の状況を調査しています。同調査によると、過去に不登校だった中学生の高校進学率は85.1%です。
 
さらに、20歳時点での就学率は約46.7%であり、大学・短大・高専、専門学校・各種学校などのいずれかに進学している子もいることがわかります。
 
ケースにもよりますが、不登校が将来を完全に閉ざしてしまうわけではないことを知っておくと、安心につながります。

不登校の仲間はたくさんいる!コロナの影響で増えた不登校

「まさか我が子が……」あるいは「まさか自分が……」と、想定外の不登校に困惑している方もいるはずです。実は、新型コロナウイルスが流行して以降、小中学校における不登校児童生徒の割合は増えています。

年度 在籍者数(人) 不登校人数(人) 不登校の割合(%) 増減率(%)
平成22年度 10,566,028 119,891 1.13 不明
平成23年度 10,477,066 117,458 1.12 ▲2.0
平成24年度 10,333,629 112,689 1.09 ▲4.1
平成25年度 10,229,375 119,617 1.17 6.1
平成26年度 10,120,736 122,897 1.21 2.7
平成27年度 10,024,943 125,991 1.26 2.5
平成28年度 9,918,796 133,683 1.35 6.1
平成29年度 9,820,851 144,031 1.47 7.7
平成30年度 9,730,373 164,528 1.69 14.2
令和元年度 9,643,935 181,272 1.88 10.2
令和2年度 9,578,674 196,127 2.05 8.2
令和3年度 9,529,152 244,940 2.57 24.9
令和4年度 9,442,083 299,048 3.17 22.1

参照:令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果|文部科学省初等中等教育局児童生徒課
 
平成22年度から令和元年度まで緩やかに増えつつも1%台に留まっていた不登校の割合は、新型コロナウイルスが流行しはじめた令和2年度に2%を超えました。令和2年度から令和3年度にかけての増減率は、過去12年間で最高値の24.9%を記録しており、不登校の児童生徒が増えているといえます。
 
このように、社会的要因によって不登校が生じることもあることは、押さえておきたいポイントです。保護者のなかには、お子さまに対する接し方が原因ではないかと、自分を責めてしまう方もいます。しかし、さまざまな時代性や突発的な事象が子どもの心身に影響を与えていることもあるのです。
 
このことから、不登校は特別なことではなく、誰にでも起こりうるといえます。不登校状態で困っている小中学生も、もしかしたら新型コロナウイルスがきっかけかもしれないと考えてみてください。「どうして自分は学校に行けないのだろう」と自分を責めてしまう気持ちが、少し和らぐかもしれません。

不登校から学校復帰を目指す前に|保護者と本人が一緒に考えておきたいポイント

不登校から学校復帰を目指す前に、保護者と本人が一緒に考えておきたいポイントが2つあります。

  • ・不登校から学校復帰を目指すのはなぜ?
  • ・学校に復帰してどんな自分になりたい?

2つのポイントを明らかにすることで、学校復帰までに必要な準備に手をつけられる可能性があるので、参考にしてみてください。

不登校から学校復帰を目指すのはなぜ?

そもそも、なぜ学校復帰を目指すのか整理して考えてみてください。学校復帰以外の選択肢も含めて、本人にとって最善の選択をするためにも、学校復帰を目指す理由を考えてみるとよいでしょう。

以下は、学校復帰をしたい理由の例です。

  • ・高校卒業資格が必要だから高校進学するために中学校に復帰したい
  • ・勉強についていけなくなるのが不安だから復帰したい
  • ・友達に学校に来てと言われているから復帰したい

学校復帰を目指す理由によっては、解決方法が複数ある場合があります。
例えば、勉強についていけなくて困るという理由で学校復帰を目指す場合、フリースクールや家庭教師といった選択肢があります。
 
複数の選択肢がある場合、学校復帰よりも本人にとって負担が小さい方法を選んだ方が、より早く回復する可能性もあるでしょう。
学校復帰以外の選択肢をもつことで、ゆっくり回復しながら将来に目を向けられるはずです。

学校に復帰してどんな自分になりたい?

学校に復帰してどのような自分になりたいかを考えてみましょう。
 
「学校に復帰しなきゃ!」と、学校復帰が目的になると、行けないときに焦りや苛立ちにつながります。こうした状態は、心身によくありません。
 
学校に行くことを目的とするのではなく、学校に行って何がしたいのか、どういう自分になりたいのかを考えておくことが大切です。
例えば、将来の夢を叶えるために基礎学力を身につけたい、友達とたくさんおしゃべりをして明るい自分を取り戻したいなど、小さなことでもよいので書き出してみましょう。
 
本人だけでは言語化が難しい場合もあるので、保護者の方も一緒に考えてみてください。ただし、保護者の願いを押しつけないように気をつけましょう。

少しずつ前に進もう!不登校から学校復帰までの4つのステップ

学校復帰を目指す理由と、学校復帰してどうなりたいかが整理できたら、学校復帰に向けて4つの準備を整えます。

ステップ1.気持ちを整理しよう
ステップ2.学校以外の居場所も見つけておこう
ステップ3.生活リズムを整えよう
ステップ4.小さなゴールを決めよう

順番通りでなくても構わないので、できることから始めてみてください。

ステップ1.気持ちを整理しよう

まずは、すでに紹介した2つのポイントを踏まえ、自分の気持ちを整理しましょう。登校に不安がある場合は、何が不安なのか、何が解消されれば不安な気持ちがなくなるのかを書き出します。
  
なかには「何が不安なのかわからないけど、漠然と不安」という人もいるはずです。その場合は、学校のどの場面で不安が押し寄せてくるかを考えてみてください。例えば、英語の授業といった「時間」、体育館といった「場所」、友達のAちゃんといった「人」の3つを振り返りましょう。
 
気持ちを書き出し、整理する際は、解決策まで考えなくても大丈夫です。

ステップ2.学校以外の居場所も見つけておこう

もっとも大切なことは、不登校で困っている本人が元気を取り戻すことです。そのため、解決策は学校復帰だけではないことに留意しましょう。学校以外の居場所も見つけておくと、復帰が難航したときも安心です。

学校以外の居場所には、以下があります。

  • ・習い事
  • ・親戚の家
  • ・フリースクール
  • ・不登校の支援機関

本人の心の負担が軽くなるような場所かつ信頼できる大人がいる場所なら、保護者の方にとっても安心です。

ステップ3.生活リズムを整えよう

不登校の間は、生活リズムが狂いがちです。学校復帰を目指す場合は、登校できる時間に起きる必要があります。家を出る時間から逆算して7〜8時間は寝られるよう、就寝時間も決めるようにしましょう。
 
日光を浴びることで、夜眠りやすくなったりストレスが解消されたりする効果があるので、学校に行けない間も外に一歩出てみるのがおすすめです。

ステップ4.小さなゴールを決めよう

いきなり朝から夕方まで学校に行こうとしたり、1週間毎日登校しようとしたりしなくても大丈夫です。無理のない範囲で、小さなステップを踏みながら、段階的に学校へ通えるようにしていきましょう。
 
例えば、次のようにステップを設定することができます。

  • ・学校に間に合う時刻に起きて、制服に着替えてみる
  • ・通学路の途中まで行ってみる
  • ・校門まで行ってみる
  • ・校舎に入ってみる
  • ・保健室や図書館に行ってみる(別室登校)
  • ・休憩時間に教室に入ってみる
  • ・好きな授業を1時間だけ受けてみる
  • ・授業を受ける時間を増やしながら少しずつ復帰していく

実際に取り組む際は、本人の意思を尊重してステップを考えることが重要です。
本人がしんどいと思ったら、途中のステップで一息ついたり、前のステップに戻ったりしてもかまいません。小さな目標をゆっくりひとつずつ達成していくなかで、本人も自信を取り戻していけるでしょう。

本人の学校復帰を支えるために必要な保護者の行動

本人の学校復帰を支えるために必要な保護者の行動は、以下です。

  • ・学校に行くことがすべてではないことを再確認する
  • ・本人の生活リズムが崩れないようサポートする
  • ・細かいことでも学校と連絡を取り合う
  • ・不登校の支援機関を活用する
  • ・学校復帰以外の選択肢も含めて将来を話し合う

保護者の方も、朝から晩までお子さまに付きっきりでいられるわけではないでしょう。できることから少しずつ始めてみてください。

学校に行くことがすべてではないことを再確認する

「学校は行かなければならない」というスタンスでいると、お子さまのプレッシャーになり、心の健康を損なう可能性があります。
保護者の方は「辛いなかでも自分は学校に行っていたのに……」と思ってしまうケースもあるでしょう。しかし、子どもは自分と別の人間であることを再確認したうえで、お子さまの心身の健康を第一に考えることが大切です。
 
不登校状態のお子さんが学校に復帰することは、ゴールではありません。学校復帰によってお子さまの心身の状態が悪化するなら、本末転倒です。
 
学校にいくことがすべてではなく、他にも選択肢があることを再確認しましょう。

本人の生活リズムが崩れないようサポートする

生活リズムが崩れていると、いざ学校復帰したいときに難しくなってしまいます。家にいることを肯定しつつも、学校に通っているときと同じ生活リズムで過ごすことをルールとして決めた方が適切です。
 
すでに生活リズムが崩れてしまっている場合は、少しずつ戻していくようサポートしましょう。

細かいことでも学校と連絡を取り合う

学校側からのアプローチで、学校復帰のきっかけが生まれるかもしれません。チャンスを逃さないためにも、学校の学習進度や家での様子の変化など、細かいことでも学校と連絡を取り合うことが大切です。
 
もし学校復帰する場合は、登校する日の対応の仕方なども、綿密に話し合っておくとよいでしょう。例えば、子どもが次回も行かなければという気持ちになるため「登校したときに褒めない」など、注意してほしいことは事前に伝えておきます。
 
ただし、学校の協力が得られないケースでは、無理に連絡を取り合う必要はありません。その場合は、病院や支援機関との連携を密にしましょう。

不登校の支援機関を活用する

支援機関を利用するなど、保護者だけで抱え込まずネットワークを広げることが大切です。
 
不登校の支援機関には、一般的に以下があります。

  • ・市区町村が設置する教育支援センター
  • ・フリースクール
  • ・民間団体

特に、学校の協力を得られないケースで効果を発揮します。保護者の方にとっても頼れる場所を増やし、ストレスを溜め込まないようにしましょう。

学校復帰以外の選択肢も含めて将来を話し合う

学校復帰以外の選択肢も含めて、本人と将来どうなりたいかを話し合うことが大切です。将来像が明確化されると、次のステップが見えてきます。もし大学に行きたいのであれば、中学校復帰から全日制の高校へ進学するだけでなく、高卒認定資格を取得するという選択肢もあるでしょう。

このように、高校進学をするにしても、全日制だけでなく通信制も検討するなど、視野を広げるのが適切です。

学校復帰を支援してくれる通信制高校も!明聖高校の不登校サポート体制

段階的な学校復帰には、学校との連携が不可欠です。通信制高校のなかには、不登校からの復帰を積極的にサポートする体制が整っている学校もあります。
ここでは、そうした学校のひとつである明聖高校の不登校サポート体制について、生徒の声を交えながらご紹介しましょう。

教員全員が専門資格を持ち、復帰を段階的にサポート

明星高校では、教員全員が「カウンセリング」「メンタルヘルス」などの専門研修を受講し、資格を取得しています。一部の先生だけでなく、学校全体で不登校からの復帰をサポートできる体制になっているのが特徴です。
また、登校日数や登校時間は、先生と相談しながら柔軟に決めることができます。

★生徒の体験談★

心身の病気があり、今でも学校を休んでしまうことが多くありますが、先生たちは「無理しなくていいんだよ」といってくれ、とても安心しています。今では、学校に登校してみんなに会えるのがとてもうれしいです。

少人数の「個別学習室」を設置

集団での授業に抵抗がある場合は、少人数体制の「個別学習室」に通いながら、専用の時間割で授業を受けることが可能です。より人数の多い教室に入れるよう、少しずつ慣らしながら指導してもらえます。

★生徒の体験談★

小学校のときから集団が苦手で、ずっと保健室登校をしていました。明聖高校では個別学習室に通い、ゆっくり自分のペースで学習しています。先生が毎時間個別学習室に来てくれる中で、少しずつ、クラスでも授業を受けられるようになりました。
 
中学校の範囲から学び直せる独自の科目「リラーン」
明聖高校のカリキュラムには、英語・数学・国語の3教科を中学校の学習範囲から学び直せる独自の学校科目「リラーン」が設定されています。不登校の間に学習が遅れていても、「授業についていけず、また登校しづらくなってしまった」という事態を防ぐことが可能です。

★生徒の体験談★

昔から勉強が苦手で、授業についていけずに学校を休みがちでした。明聖高校では、中学校の復習からしっかりやってくれるので、ほっとしています。授業もとてもおもしろく、学校に行くことが楽しくなりました

登校が難しい場合は「放送視聴制度」で振り替え可能

なかなか登校が難しい場合は、「放送視聴制度」を利用することも可能です。自宅でテレビやラジオの講座を視聴したり、DVD教材を使って学習したりして、視聴報告課題を提出すれば、一定の日数を出席時数として認めてもらうことができます。

★生徒の体験談★

明聖高校の通信コースは、自宅にいながら自分のペースで勉強を進められるので助かっています。スクーリングを欠席しても、放送視聴制度などのフォロー体制があるので安心です。