登校になった人の多くは、それぞれのやり方で学校復帰・社会復帰していますが、その後、どのように過ごしているのでしょうか。「不登校を経験していても、進学や就職をして、幸せに暮らしているのだろうか?」と、自分の将来と重ねて不安に感じる人もいるかもしれません。
今回は、調査データや経験者の声から、不登校のその後の人生について考えてみましょう。あわせて、不登校経験後の進路選択で後悔しないために、今のうちからやっておきたいことについても解説します。

中学卒業後に考えられる将来とは

中学卒業後の進路には、大きく以下の3つがあります。

  • ・進学する
  • ・就職する
  • ・上記以外(高卒認定)

それぞれの進路について、解説します。

進学する

中学校卒業後は、高校や高専などの学校に進学し、将来、就職や進学するために必要な勉強をします。
中学校で不登校になっても、試験に合格することで高校や高専への進学が可能です。ただし、そのためには試験に合格できる、あるいは進学後の授業についていけるレベルの学力を身に付ける必要があります。

全日制の高校や高専に進学したあとは、出席日数が単位の取得に関わってくることが、不登校経験者にとって不安要素となりがちです。

毎日通えるか不安な場合は、自宅でも授業を受けられる通信制高校という選択肢があります。通信制高校なら、同じ境遇の同級生や理解のある先生が多く、全日制の学校より安心できるでしょう。

就職する

中学校卒業後は、就職するという方法もあります。
ただし、高卒・大卒と比較すると就ける職が限られており、その後のキャリアアップにハンデが生まれる可能性があります。

働きながら高校進学を目指したり、高卒認定の資格を取得することも可能です。実現するためには、働きながら独学で学力を身に付ける必要があるため、忍耐力と継続力が求められます。
しかし、就職後も進学の道は諦めなくてよいことは、知っておいて損はないでしょう。

上記以外(高卒認定)

高校や高専への進学と就職以外には、独学で高卒認定の取得を目指す方法があります。
高卒認定とは、正式名称が「高等学校卒業程度認定試験」であり、合格すると高校卒業程度の学力を持つことを証明する資格をえられます。
ただし、高校卒業資格とは異なるため、最終学歴は「中卒」に留まります。

高卒認定を取得すると、高校に通わなくても大学や専門学校を受験できる点がメリットです。

中卒で高卒認定の取得を目指すためには、独学で高校レベルの学力を身に付ける必要があります。そのため、勉強に取り組む強い意志と継続力が必要です。

以下の記事では、高卒認定試験の概要と高卒資格との違いについて詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

高卒資格と高卒認定、どちらを取得するほうがいい?取得方法や証明内容の違いを解説|通信高校生ブログ

平成18年度の調査では中学生の進学率と20歳時の就職率はどれくらい?

文部科学省では、中学3年生の頃に不登校だった人のその後(5年後)を追った調査を行っています(「不登校に関する実態調査 平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書」(2014年))。この調査結果から、不登校を経験した人が20歳になったときの様子について、以下3つのことがわかります。

  • ・高校進学率は約85%
  • ・20歳時点での就職率は約35%
  • ・就学・就業が上手くいかないパターンも

それぞれの項目について、詳しく解説します。

高校進学率は約85%

不登校経験者の約85%が、中学卒業後に高校進学を選択しています。そのうち、14%の人たちが、高校を途中でやめています。

具体的な数字であらわすと、不登校経験者が100人いた場合、85人が高校進学に成功し、進学した85人のうち約12人が中退したということです。100人のうち73人は高校に残って、勉強を続けられたと考えられます。

つまり、不登校を経験していても、高校に進学し勉強を続けられる可能性が高いといえます。

20歳時点での就職率は約35%

調査を受けた不登校経験者が20歳になったときの就職率は、約35%です。それ以外の人たちは、専門学校や大学で勉強したり、働きながら学校に通ったりしています。

各項目の割合は、以下のとおりです。

  • ・就職した人……約35%
  • ・専門学校や大学に進学した人……約28%
  • ・働きながら学校に通っている人……約20%
  • ・就職も進学もしていない人……約18%

「働きながら学校に通っている人」もふくめると、不登校経験者の約55%がなんらかの仕事に就いていることがわかります。
調査結果から、不登校経験者の半数以上が社会に出て働ける状態に回復しているといえるでしょう。

就学・就業が上手くいかないパターンも

なかには、就学や就業が上手くいかないパターンもあります。
先ほど紹介したように、高校に進学したものの途中で辞めてしまった人、20歳になった時点で就職も進学もしていない人がいます。

将来「仕事をしたい」あるいは「専門学校や大学に行きたい」と思う人は、夢を叶えるためにも、不登校経験者のサポート体制が整った高校に進学することをおすすめします。
不登校経験者の気持ちを理解してくれる先生たちから、進学・就職に必要なサポートを受けられるためです。

不登校経験者が後悔しているのはどんなこと?今からできる対策を考えよう

不登校になったことを後悔することなく、その後の人生を送れるようにするためには、どうすればよいのでしょうか。不登校経験者が具体的に何を後悔しているかを探りながら、対策を考えてみましょう。

学力が不足したまま大人になってしまった

  • ・進学したものの、学力面の遅れが原因で、大学での学びに困ることがある。
  • ・最終学歴が中学卒業(中卒)のため、進学したり、資格を取得したりできず、就職先の選択肢が狭まってしまった。

不登校中に学力が遅れると、進路の選択肢が制限されたり、進学・就職先で困難に直面したりすることも少なくありません。

後悔を避けるためにも、不登校中も可能な範囲で学習を続けておきたいところです。教科書や参考書で自主学習するのが難しい場合は、オンライン学習サービス(WEBサイト、アプリ)や家庭教師、不登校支援に力を入れている民間の学習塾なども活用してみましょう。

大学・専門学校や資格試験の受験資格にも関わる高校卒業資格は、通信制高校で自宅学習中心に学びながら、取得を目指すことができます。

体力が低下してしまった

  • ・進学したものの、学力面の遅れが原因で、大学での学びに困ることがある。
  • ・最終学歴が中学卒業(中卒)のため、進学したり、資格を取得したりできず、就職先の選択肢が狭まってしまった。

不登校中はどうしても体力が落ちやすく、先ほど取り上げた調査でも「不登校だったために、中学校卒業後に体力が低下したり不足したりして苦労した」という人は約60%にものぼります。

学校復帰・社会復帰に向けて満足に活動できるようにするためにも、不登校の間に無理のない範囲で、散歩・ジョギングなどの軽い運動をしておくのがおすすめです。「平日の日中は人目が気になって出歩けない」という人は、時間帯を工夫したり、室内でできるエクササイズに取り組んだりしてみましょう。

社会性を身に付けておけばよかった

  • ・学校時代に、他人ときちんと向き合って話して、人との関わり方をもっと学んでおけばよかった。
  • ・協調性が身に付かずに苦労している。

「人間関係の築き方を学び、社会性を身に付けておけばよかった」という声も多く聞かれます。

このような後悔をしないために、学校以外に居場所を作っておくのがよいでしょう。例えば、公的な不登校支援施設「適応指導教室」や民間のフリースクール、趣味の習い事・サークルなどです。不登校中も社会とのつながりを保ち、人との関わりを体験することで、視野が広がったり、自信を取り戻したりできることもあります。

学校行事などの思い出を作れなかった

  • ・文化祭や修学旅行など、学校時代にしか経験できない行事に参加できなかったのが残念。
  • ・大学で友だちが中学時代の思い出話をしているときに、話に入れない。

学校時代の行事は、残念ながら大人になってから体験し直すことはできません。思い出は取り戻せない一方、不登校の間にしかできない体験もあります。
実際に「普通に学校に通っているだけでは経験できないことを多く積み重ねてきたおかげで、人とは違う見方ができるようになった」と前向きに語る不登校経験者も珍しくありません。

例えば、学校の授業では扱わないさまざまな本を読んでみたり、工作やイラスト、音楽などクリエイティブなことにチャレンジしたりしてみてはいかがでしょうか。新しい知識や、ひとつのことを成し遂げた達成感を得られるはずです。さらに、先ほど紹介した学校外の居場所での活動を通じて、かけがえのない思い出ができることもあるでしょう。

【中学生の方向け】不登校後の将来で失敗しないためにすべきことは?

「不登校で悩んでいる」あるいは「不登校を経験して学力に不安がある」という中学生は、今のうちに以下の3つに取り組んでおくことをおすすめします。不登校を経験していても、将来の夢に近づけるためです。

  • ・高校卒業レベルの学力を身に付ける
  • ・自分に合った学校を見つける
  • ・さまざまな職業について見てみる

できることから少しずつはじめて、将来への不安を解消していきましょう。

高校卒業レベルの学力を身に付ける

不登校経験者のなかには「学力が不足したまま大人になってしまった」ことを後悔している人たちがいます。
後悔せず、夢を叶えるためには、高校卒業レベルの学力を身に付けておきたいところです。

中学生のうちに、小中学校の勉強を復習し、高校の勉強が理解できるよう整えておくことが理想です。
ただし、心身の状態によっては難しい場合もあるでしょう。通信制高校のなかには、不登校経験者の基礎学力向上をサポートするカリキュラムを整えている学校もあるので、高校進学後にじっくり向き合うことも可能です。

自分に合った学校を見つける

自分に合った学校を見つけられると、不登校時代に抱えていた将来への不安を解消し、安心して通えます。
不登校経験者にとって、心身の健康を回復・維持しながら勉強をするためには、中学校の勉強を復習できるカリキュラムやカウンセリングを受けられる環境が整っている高校がおすすめです。

高校選びについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

高校の選び方・決め方はどうすればいい?将来の夢がないときは?中学生の進路の選択肢を紹介|通信高校生ブログ

さまざまな職業について見てみる

どのような職業があるのかを調べ、自分の将来を前向きに考えることも大切です。
不登校経験者でも、適切な進路を選択できると、夢を叶えられます。
今は、将来の夢がない人も、さまざまな職業を調べていくうちに、興味がわくかもしれません。また、自分に合った職業が見つかる可能性もあります。

通信高校生ブログでも、さまざまな職業について解説した記事を掲載しているので、参考にしてみてください。

【保護者の方向け】不登校の子どもの将来のためにできることとは

不登校の子どもを抱えていると、保護者の方も子どもの将来が不安になるでしょう。つい強く登校を促してしまい、あとで自己嫌悪に陥ることもあります。

不登校の原因がわからない場合は特に不安が大きくなりますが、子ども自身もなぜ学校に行けないのかをわかっていない、あるいは言語化できない場合があります。
保護者の方が焦っているのを見ると子どもも不安に感じるため、できる限り以下の4つの対応を試してみてください。

  • ・強く励まさない、厳しい指導をおこなわない
  • ・なんでも話しやすい親になる
  • ・家の中に居場所をつくってあげる
  • ・友人と遊ぶ、連絡することをすすめる

それぞれの対応については、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

不登校は甘えじゃない!親ができる不登校になった子どもへの4つの対応|通信高校生ブログ