夏休み明けは、不登校になりやすいタイミングとして知られています。不登校の傾向があるお子さまをもつ保護者の方のなかには、不登校を未然に防ぎ、スムーズに登校できる環境を整えたい方もいるでしょう。
 
本記事では、夏休み明けに不登校になりやすい理由と兆候、防ぐために保護者の方ができることを解説します。

夏休み明けに不登校になりやすい5つの理由

夏休み明けに不登校になりやすい理由には、次の5つの理由があります。

  • ・息切れして疲れを十分に回復しきれない
  • ・休み中に学校での負担を自覚してしまう
  • ・生活リズムを学校モードに戻せな
  • ・夏休み前に友達とトラブルやいじめがあった
  • ・夏休みの宿題が終わらず不安になっている

理由を知っておくと、事前にどのような対策を打てばよいかわかるでしょう。ここでは、まず理由について詳しく解説します。

息切れして疲れを十分に回復しきれない

夏休みに入る前に、体力的・精神的に無理をしながらなんとかがんばって登校していた子たちは、夏休みに入ると緊張の糸が緩みどっと疲れを感じてしまいます。休みの間に前向きな気持ちで過ごし、リフレッシュ・リラックスできればよいですが、強いストレスや疲れをずっとためてきた人は、学校に戻れるほどのエネルギーを充電しきれないことも多くあります。エネルギー不足の結果、夏休み明けに学校に行きにくくなってしまうのです。

休み中に学校での負担を自覚してしまう

一生懸命がんばって学校に通っている人のなかには、自分のストレスや疲れに気付いていない人もいます。夏休みに入り家でゆっくりリラックスするなかで「学校に行っていたときはとても辛かった」と感じてしまい、学校に行きたくなくなるというパターンもあります。

生活リズムを学校モードに戻せない

夏休み中は、一日の大半を占める学校生活がなくなるため、昼夜逆転が起きやすく、生活リズムが大きく変わってしまうことがあります。変わってしまった生活リズムを戻すには、相当なエネルギーが必要です。
 
とくに、夏休み前に学校でエネルギーを消耗しきってしまっている人の場合、生活リズムを学校モードに戻すエネルギーがなく「夜に眠れない」「朝起きられない」といった状態に陥ります。夏休み明けまで生活リズムを修正できなければ、登校できなくなってしまうのです。

夏休み前に友達とトラブルやいじめがあった

夏休み前に、学校で友達とトラブルがあり解決していない、あるいはいじめがあったという場合、夏休み明けの登校を渋る可能性があります。
 
友達関係は、保護者の方でもすべてを把握しきれないことが多いため、注意が必要です。不登校のサインが表れ、理由が思い当たらない場合、友達関係が原因の可能性もあることを頭の片隅に置いておくとよいでしょう。

夏休みの宿題が終わらず不安になっている

夏休みの宿題が終わらず「先生に怒られるかもしれない」「親にバレたらどうしよう」と不安や焦りを感じている子は、夏休み明けに不登校に陥る可能性があります。完璧主義やまじめな子ほど夏休みの宿題に真摯に取り組むため、終わらないことが原因で不登校になってしまうのです。
 
文部科学省の不登校に関する調査研究協力者会議で公表された資料には、子どもの頃に不登校だった人の手記が掲載されています。

私が不登校になったきっかけは夏休みの宿題が終わらなかったことです。え?そんなこと?と思われるかもしれません。夏休み明け大量の宿題をやり残していた私は、少し休んで宿題を仕上げようと思い、学校を休みました。そのまま一週間学校を休んでしまいましたので、さすがにこれはまずいと思い学校へ行きました。授業は1週間分進んでいます。授業を聞いている時、どうしようもなく「もうだめだ」と思いました。次の日から学校へ行けなくなりました。

引用:資料2-3-1 発表資料|文部科学省
 
夏休みの宿題がきっかけで不登校に陥る子は、珍しくないことがわかります。

夏休み中・夏休み明けに見られる不登校のサインに注意しよう

夏休み明けに不登校になってしまいそうなとき、本人は休み中・休み明け直後に、次のような兆候・サインを見せることがあります。

タイミング 夏休み中 夏休み明け
兆候サイン ・ゲームなどに没頭して外出を嫌がる
・生活リズムが大きく乱れている
・宿題をギリギリになっても  やりたがらない
・登校日が近づくにつれ様子が  おかしくなる
・体の不調
・生活リズムが戻らない
・家族に話をしなくなる、  関わろうとしなくなる

保護者の方は見逃さないよう、注意して観察しましょう。

【夏休み中】

夏休み中に見られやすい不登校のサインを4つ解説します。

ゲームなどに没頭して外出を嫌がる

ゲームに没頭して家から出たがらないというケースには、不登校のサインが隠れている可能性があります。ゲームが面白すぎてやめられないわけではなく、体力的・精神的に疲れていて、外出や人に会うエネルギーが残っていないのかもしれません。また、心理学用語で「逃避」といって、目を背けたいほどつらいことがあり、ゲームや動画に依存してしまっている可能性も否定できません。
 
逃避とは、自分自身を心理的苦痛や危険から守るための防衛機制の一種です。学校や生活になんらかのストレスを抱えている人は、無意識のうちに逃避行動をとっている可能性があります。

生活リズムが大きく乱れている

生活リズムが大きく乱れているときも、要注意です。生活リズムが乱れる原因には、ゲームや動画への没頭以外にも、日中なにもせずずっと寝てしまうなどがあります。生活リズムが崩れると、夏休み明けも「朝起きられなかったから学校に行けなかった」と逃避できるため、心を守るために無意識におこなっている可能性があります。
 
逃避行動は、心を守るための重要な機能ですが、問題の根本的解決にはなりません。なぜ逃避が起こっているのか、心理的不安の根元はなにかを見極め、解決に導く必要があります。ただし、原因が突き止められない場合は無理に掘り下げず、症状や状況の改善にフォーカスする解決志向アプローチを選択する方法もあります。

宿題をギリギリになってもやりたがらない

夏休み明けが近づいても、ギリギリまで宿題をやらないケースには、不登校のサインが隠れていることがあります。単に勉強が面倒なのではなく「学校へ行きたくない」という抵抗感が表れている、あるいは宿題をしないことで学校に行けない状況を作っている可能性があります。
 
学校に行きたくない理由がほかにあっても「宿題をやっていないから行けない」という理由を作ることが可能です。本当の理由を保護者の方に知られたくないあまり、意図的に宿題に手をつけないこともあるわけです。

登校日が近づくにつれ様子がおかしくなる

登校日が近づくにつれ、以下のように様子がおかしくなってきたら、不登校のサインかもしれません。

  • ・元気がない
  • ・食欲がない
  • ・イライラしている

ただし、元気がない・食欲がないケースは、昨今の猛暑の影響や病気も考えられるため、その場合は早めに医療機関を受診するとよいでしょう。とくに原因は思い当たらないにもかかわらずイライラしている場合、大きなストレスを感じている可能性があります。
 
本人も自分自身のストレスを理解していないことがあるため、ゆっくり話を聞く時間を設けることが大切です。

【夏休み明け】

夏休み明けに見られやすい不登校のサインを3つ解説します。

体の不調

朝、登校時間が近づくと、ストレスから腹痛や頭痛を訴えることがあります。なかには、休みの終わりごろから、食欲がなくなったり、元気がなくなったりするケースもあります。
 
精神的なストレスが原因で体の調子が崩れてしまうことはよくあるため、調子を整えながらストレスを取り除く必要があります。

生活リズムが戻らない

学校が始まってもなかなか生活リズムを元に戻せず、夜更かしをしていたり、朝起きられなくなったりしているのは、学校へ行きたくない気持ちから来る逃避行動かもしれません。
 
生活リズムが戻らないまま学校に通うのは、心身に負荷がかかるため、不登校を悪化させる可能性があります。少しずつ生活リズムを整えながら、ストレスをケアしていくことが大切です。

家族に話をしなくなる、関わろうとしなくなる

本人のなかで「本当はいやだけれど、学校に行かなくてはいけない」と葛藤しているケースでは、家族に本当の気持ちを話すことが難しくなり、関わろうとしなくなるケースがあります。また「本当は行きたくない」という気持ちを、言ってはいけないことだと思っていることも。
 
夏休み中は、通常どおりコミュニケーションを取れていたのにもかかわらず、急に話さなくなった、あるいは部屋にこもりがちになったという場合は、話したいけれど話せない気持ちを抱えている可能性があります。

夏休み明けの不登校を防ぐために|夏休み中に保護者ができること

夏休み明けの不登校を防ぐために、保護者ができることは大きく以下の3つです。

  • ・生活リズムの乱れ対策|自宅で過ごすときのルールを決める
  • ・体の健康を維持するための対策|日中の部屋の温度設定に気をつける
  • ・夏休み明けの不安を取り除くための対策

ただし、保護者の方が上記の対策をおこない、夏休み中は順調に過ごせても、登校日が近づくと不登校のサインが出てくるケースがあります。これは保護者の方の努力不足ではなく、本人が抱えているストレスが想像以上に大きいことを示しています。その際は、家庭だけで抱え込まず、医療機関や不登校支援機関を頼りましょう。

生活リズムの乱れ対策|自宅で過ごすときのルールを決める

不登校の原因となる生活リズムの乱れ対策として、自宅で過ごすときのルールを決めておきましょう。例えば、ゲームやスマートフォン、タブレットを使う時間を決め、夜はぐっすり眠れるようにします。
 
夏休み中は、保護者の方が仕事で家にいない時間が自由時間になってしまい、生活リズムが乱れてしまいがちです。そこで、保護者の方が不在の間、宿題や家の手伝いなどやるべきことを決めておきます。
 
ルールを守れたとき、守れなかったときにどうするかまでお子さんと一緒に決めておくと、ルールを守りやすくなります。

体の健康を維持するための対策|日中の部屋の温度設定に気をつける

近年の猛暑の影響で体調を崩し、不登校になるケースも考えられるため、日中家で過ごすときも室温設定に気をつけなければなりません。
 
エアコンの温度設定が低すぎてもよくありませんが、高すぎても熱中症になる恐れがあります。お子さまが自由に温度設定できる状態だと、うまくコントロールできず、低すぎる室温のなかで体調を崩す可能性もあります。
 
日中、保護者の方がいない間、温度設定で体調を崩さないよう、あらかじめルールを決めておくとよいでしょう。

夏休み明けの不安を取り除くための対策

学校に不安を感じているお子さまは、夏休み明けに不登校になるリスクが高いといえます。保護者の方が、お子さまの不安を取り除くためにできる対策は、以下の3つです。

  • ・可能であれば自宅以外の居場所をつくる
  • ・夏休みの宿題の進捗を定期的に確認する
  • ・不登校になっても学習できる環境を整備する

本人がなにに不安を感じているか理解しておらず、不登校のサインだけで表れることもあります。まずは、本人が安心できる環境を作り、不安に向き合っていくことが大切です。

可能であれば自宅以外の居場所をつくる

可能であれば、自宅以外の居場所をつくり、他社とのつながりをもっておくとよいでしょう。
ただし、どのような人とつながれるかは、必ず保護者が把握しておく必要があります。
 
例えば、習い事や祖父母・親戚の家など、保護者がいなくても安心して子どもを任せられる居場所が適切です。千葉県の場合、千葉県子どもと親のサポートセンターで、子どもが楽しみながら過ごせるサポート広場を設けています。
 
最近では、大阪府八尾市のようにメタバースを活用したオンラインの居場所づくりをおこなっている機関もあります。オンラインなら、お子さまが1人で過ごすときも家から出ずに利用できるため、安心です。必要に応じて、調べてみるとよいでしょう。

夏休みの宿題の進捗を定期的に確認する

夏休みの宿題が終わらず不登校になるのを防ぐため、定期的に進捗を確認しましょう。夏休みの宿題が終われば、達成感を得られるとともに、宿題に関する不安を取り除くことが可能です。
 
もし、つまづいている様子があれば、手伝ってあげたほうがよいケースもあります。手伝う場合は、学校にひと言連絡を入れておくと無用なトラブルを回避できて安心です。進捗状況から、最終日までに終わらないようであれば、事前に学校に連絡し宿題が終わらなかったときの対応について相談しておくとよいでしょう。

不登校になっても学習できる環境を整備する

保護者がどれだけ手を尽くしても、不登校を防げないことは多々あります。自分を責めてしまう方もいますが、保護者の方のせいではありません。不登校はお子さまの心身のケアに必要なものと考え、ゆっくり見守っていくことが大切です。
 
不登校は、学習の遅れを招くことに不安感を覚える方も少なくありません。そこで、不登校になっても学習できる環境を整えておくと、学習の遅れに対する不安感を取り除けます。
 
例えば、フリースクールや家庭教師、オンライン学習教材など、子どもがもっとも安心できる方法を用意します。「不登校になっても学習できる」と思える環境にしておくと、お子さまも保護者の方も、心にゆとりをもちながら回復に集中できるはずです。

不登校のサインを見つけたら|夏休み明けに保護者ができること

不登校のサインを見つけた際は、以下の4つの方法を実践してみてください。

  • ・体の不調を訴えたら、まずは医療機関へ
  • ・本人の様子をよく観察し、声に耳を傾ける
  • ・長引きそうなら、学校に相談する
  • ・保護者自身の心身のケアを忘れずおこなう

体の不調を訴えたら、まずは医療機関へ

体の不調はストレス反応の可能性もありますが、ほかの病気が原因である可能性もゼロではありません。まずは医療機関で診てもらい、原因を特定しましょう。病院で「体はどこも悪くない」と診断されても、無理に励ましたり、登校を促したりするのは禁物です。ストレスが原因であることを踏まえて、次の対処に移りましょう。

本人の様子をよく観察し、声に耳を傾ける

「なぜ学校に行きたくないのか」「どうして、学校生活に支障が出るほど夜更かしをしてゲームに没頭しているのか」と直接聞いても、自分から話してくれないことも多々あります。焦らず、本人の普段の様子をよく観察し、ちょっとした声や変化に気付けるようにしてみましょう。
 
その際には、以下の点に注意してみてください。

  • ・無理して登校しようとしているところはないか
  • ・学校生活や日常生活でがんばりすぎていないか
  • ・つらいこと、嫌だと感じていることはないか

不登校になりそうな原因やきっかけが少しでもわかれば、次に取るべき対処方法が見えてくるはずです。
 
一方で、不登校のサインを見せ始めた子どもに、過度な干渉や無理強いは逆効果です。ますますプレッシャーやストレスを感じて、学校に行きにくくなってしまいます。
 
例えば、生活リズムの乱れが休み明けに不登校になる原因のひとつであるとはいえ、叱ったり、無理に矯正しようとしたりするのは好ましくありません。「少しずつでも生活リズムが改善されればいいかな」くらいの気持ちで見守るのがよいでしょう。
 
もし、本人が「学校を休みたい」といってきたときは、休ませてあげて構いません。必死の想いで伝えた気持ちを保護者が受け取ってくれたというだけで、子どもは安心するはずです。
「まだ心の準備ができていないので、もう少しだけ時間がほしい」という気持ちで休みたがっている可能性もあります。その場合、1~2日の休息で学校に行けるようになることもあるため、休むことは悪ではないことを頭の片隅に置いておきましょう。

長引きそうなら、学校に相談する

休み明けからしばらく経っても本人の調子がよくならず、本格的に不登校になりそうな場合は、学校(担任、保健室の先生、スクールカウンセラーなど)に相談しましょう。外部機関の紹介も含めて、今後の対処法を一緒に考えてくれるはずです。

保護者自身の心身のケアを忘れずおこなう

お子さまの不登校で悩まれている保護者の方も、大きなストレスを感じているはずです。保護者の方の不安や焦りが子どもに伝わってしまうと、子どもが罪悪感を覚えることもあるため、ご自身の心身のケアが必要となります。
 
万が一、お子さまが不登校になっても、学校や社会に戻れる手段はあります。将来が閉ざされたと悲観せず、ゆっくり向き合うことが大切です。そのときは、ご家庭だけで抱え込まないよう、お子さまについて相談できる場所を見つけられるとよいでしょう。
 
保護者の方は、お子さまの最大の味方でいられるよう、心身のケアを最優先にしてみてください。

不登校になっても戻る場所はある|通信制高校という選択肢

保護者の方がいち早く不登校のサインに気付き、事前に対策を打っても、不登校になってしまうことはあります。「不登校は充電期間」ととらえて、回復を待つことが大切です。
 
もし、本人が「学校に戻りたい」と望むようになったら、できるだけ負担のない形で学校復帰を進めていきましょう。選択肢のひとつとして、通信制高校も考えてみてください。通信制高校は、週1回、2週間に1回など登校頻度が少なく、不登校に理解のある先生やカウンセラーが在籍しているケースがほとんどです。将来の可能性を広げる高卒資格も取得できるため、専門学校や大学進学を目指すお子さまにおすすめです。