不登校には、大きく初期・中期・回復期の3つの段階があります。段階ごとに子どもが見せるサインや特徴があり、これを理解しておくと保護者としての対応を考えやすくなるはずです。
 
本記事では、不登校の3つの段階の概要と段階に応じた対応を解説します。お子さまが現在どの段階を乗り越えようとしているのかを確認し、保護者の方ができる対応をしましょう。

不登校の3つの段階のサインと特徴|初期・中期・回復期

不登校には、6~7つの段階とする説もありますが、不登校から回復した児童生徒の傾向から以下の3つの段階に大きく分類できます。

・初期のサインと特徴
・中期のサインと特徴
・回復期のサインと特徴

段階ごとの特徴と子どもが見せるサインを解説するので、現在お子さまがどの段階で頑張っているのかを考えながら読んでみてください。

初期のサインと特徴

不登校の初期は、不登校傾向が現れる段階です。「登校時間になっても学校へ行きたがらない」「欠席が目立ちはじめる」などのサインが見られます。子どもによっては、教室に行きにくくなり、保健室や相談室に通う形で兆候が見られる場合もあります。
 
「朝起きられない」「睡眠時間がズレる」「宿題に取り組まない」と生活が乱れたり、「腹痛」「頭痛」「発熱」といった身体症状が表れたりするのが特徴です。感情や行動のコントロールができないことが多く、学校の話題に拒否感を示すこともあります。段階が進むと登校できないことが増え、心身が不安定になります。

中期のサインと特徴

不登校の中期になると、本人や周囲の焦りが落ち着くため、心身の不安定さがやわらぎます。一方で、登校するためのエネルギーは非常に低く、部屋に閉じこもって出てこなくなったり、昼夜逆転が起きたりと、意欲の低下を感じさせるサインが見られるケースがあります。学校に対する拒否行動が沈静化する一方で、趣味や遊びに興味が湧きはじめ、気持ちを言葉で表現できるようになるなど、ポジティブな一面が見られることもあります。

回復期のサインと特徴

不登校の回復期は、本人の意欲が回復に向かい、具体的な行動を起こしはじめる時期です。エネルギーの回復にともなって行動力も増しますが、焦って頑張りすぎると状況が逆戻りすることもあるため、注意が必要です。
 
回復期は、本人の口から自分を肯定する言葉が出たり、学習や登校、進学・就職に向けて動き出したりと、ポジティブな変化が見られるのが特徴です。友人と遊ぶことや好きな教科の学習に取り組むことも増えます。勉強や学校に関心を持つようになるため、登校を試みることも可能です。

不登校の段階ごとに求められる対応

不登校の3つの段階に応じて、保護者に求められる対応は以下のとおりです。

・初期|子どもの心に寄り添って傾聴する
・中期|子どもの心身の回復をサポートする
・回復期|適切な登校刺激を与える

「この対応をとればお子さまが回復する」という絶対的なものではありませんが、対応に迷われたときは参考にしてみてください。

初期|子どもの心に寄り添って傾聴する

子どもの心身が不安定な不登校初期は、心に寄り添って子どもの声に耳を傾けることが大切です。不登校が長期化すると、学習の遅れや生活リズムの乱れが発生し、回復に時間を要するようになるため、早期対応が必要とされています。
 
ケースによってさまざまな対応が必要ですが、不登校のサインが見られたら、いち早く子どもの声を聴き寄り添うことが大切です。初期段階では、子どもの気持ちを受け止めることにフォーカスし、声をかける際は子どもが「登校しなければならない」と焦らないよう、言葉選びに注意しましょう。話を聴くなかで、不登校の要因を聴き出せた場合は、要因の解消に努めます。学校に要因がある場合は、学校に協力してもらわなければならないため、早い段階で相談しましょう。

中期|子どもの心身の回復をサポートする

文部科学省が実施した「不登校児童生徒の実態調査結果」から、子どもの「学校を休んでいる間の気持ち」がわかります。各項目について「あてはまる」と「少しあてはまる」と回答した児童生徒の割合をまとめると、以下になります。

学校を休んでいる間の気持ち 小学校 中学校
ほっとした・楽な気持ちだった 69.7% 69.2%
自由な時間が増えてうれしかった 65.9% 66.0%
早く学校に戻りたかった 24.4% 29.4%
勉強の遅れに対する不安があった 63.8% 74.2%
進路・進学に対する不安があった 47.0% 69.2%
自分のことが嫌で仕方なかった 43.6% 58.4%

出典:令和2年度不登校児童生徒の実態調査結果|文部科学省
 
結果を見ると「ほっとした・楽な気持ちだった」という児童生徒が約70%近くおり、休養中はリラックスして過ごせている一方で、勉強の遅れに対する不安を感じている割合も高い傾向にあることがわかりました。子どもの心身の休養を第一に考えながらも、学習が遅れないよう学校から支援してもらったり、家庭学習をサポートしたりすると、より不安をやわらげられるはずです。

回復期|適切な登校刺激を与える

平成28年に不登校に関する調査研究協力者会議が発表した「不登校児童生徒への支援に関する最終報告」には、以下のように書かれています。

回復期段階に至って学校復帰に向けた登校刺激が有効になると考えられる。
 
引用:不登校児童生徒への支援に関する最終報告|不登校に関する調査研究協力者会議

登校刺激とは、不登校の子どもに対して、登校を促す行動全般を指します。不登校初期・中期は、登校刺激に対して拒否反応を示すことがありますが、回復期に入ると受け入れられる子どもが出てきます。初期・中期に、保護者や先生の理解を得られ、順調に心身を回復できた子どもに対しては、特に登校刺激が有効に働く可能性があります。つまり、本人の心の状態に合わせて登校刺激を与えることが大切です。
 
登校刺激を与える際は、以下のポイントに留意してみてください。

・子どもと信頼関係を構築できている大人がおこなう
・役割上、学校や勉強に関係する大人がおこなう

子どもの心身を回復させるために休養のサポートを積極的におこなってきた保護者は、登校刺激を与える立場に立ちにくいといえます。したがって、学校や塾の先生など、外部の人に登校刺激を与えてもらうことが効果的です。保護者のなかで役割分担ができている場合は、休養に寄り添った人ではない人が登校刺激を与えることで有効に働く場合もあります。
 
登校刺激を与える際は、子どもの心に寄り添うことが大切です。例えば、子どもが「学校に行きたい」と言い始めたら背中を押すだけでなく、「誰となら行けるか」「最初は一緒に行こうか」などと本人の気持ちを大事にしながら、登校を促します。

不登校そのものが「回復期」になっている子もいる

子どもが不登校になったとき「復帰させなければ」と思いがちですが、以下の文部科学省の通知を見ると、本人がエネルギーを回復し社会的に自立することに重点を置く支援が必要であるとわかります。

不登校児童生徒への支援は,「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要があること。また,児童生徒によっては,不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で,学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意すること。
 
引用:「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日|文部科学省

不登校は、悪いことでも劣っていることでもありません。消耗してしまったエネルギーを回復する期間であり、問題解決に向け必要な期間です。子どもの回復を優先しながらも、保護者は学習の遅れや進路選択上の不利益を極力排除できるよう、サポートする必要があります。

不登校の回復期に向かうきっかけ例

不登校の回復期に向かうきっかけとなった例を2つ紹介します。

・親が子どもの話を聞くようになり状況が好転
・カウンセラーとの対話を通じ、本人の気持ちが整理できた

不登校の対応はケースバイケースですが、お子さまの対応のヒントになれば幸いです。

親が子どもの話を聞くようになり状況が好転

家庭内でのコミュニケーションがうまくいっておらず、母親が子どもに対して集中できない状況でしたが、母親が落ち着きを取り戻したことで状況が好転したケースです。具体的には、母親が子どもの話をしっかりと聞けるようになったことで、母子間の関係性が改善されたと思われます。
 
このケースでは、子どもにとって家庭内が心の休まる場所になったことで、子どもは安心して外に出られるようになりました。

カウンセラーとの対話を通じ、本人の気持ちが整理できた

こちらのケースでは、カウンセラーとの対話を通して子どもの混乱していた気持ちが整理できたことが好転のきっかけになりました。カウンセリング手法によって、本人の心の状態を解釈し気持ちを明確化したことで、本人も自分の内面を見つめられるようになったケースです。

不登校からの回復に向けた相談・指導に効果はある?

不登校からの回復に向け、外部機関に相談したり指導を受けたりすることがあるでしょう。その効果について、2つの視点から解説します。

・相談・指導を受けた経験のある人は約7割
・実際に登校できるようになったのは約3割

相談・指導を受けた経験のある人は約7割

文部科学省の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(平成26年度)によれば、平成26年度の小・中学校の不登校児童生徒数は122,902人です。このうち、学校外の機関等で相談・指導等を受けたのは38,059人(31.0%)、学校内では59,916人(48.8%)となっており、約7割の人が相談・指導を受けた経験があることがわかります。

実際に登校できるようになったのは約3割

ただし、不登校児童生徒のうち、相談・指導の結果、登校できるようになったのは約33%となっており、相談・指導を受けたことがただちに復学や自立につながるわけではないことも明らかになりました。
 
一方で、学校にいる相談員や教育支援センター、民間施設の利用が増加しているとのデータもあり、スクールカウンセラーの配置増加もともなって、不登校生徒への支援体制が整ってきている側面もあります。その結果、高校進学率は増加傾向にあり、同時に中退率は減少している点にも注目しなければいけません。また、大学・短大・高専への就学も増え、一定の成果につながっていることがうかがえます。

不登校からの回復を目指せる相談機関とは?

不登校からの回復を目指すために活用できる相談機関には、以下の4つがあります。

・学校
・ひきこもり地域支援センター(都道府県、指定都市)
・教育相談センター(都道府県・市区町村)
・医療機関

不登校支援は保護者の方の心身にも大きな影響を与えるため、複数の機関に頼ることで負担をやわらげることが大切です。利用できそうな機関を複数活用して、さまざまな人の力を借りましょう。

学校

身近な相談先としては通っている学校があります。登校時の様子などを把握するためには、学校との連携が大切です。ただし、教員の力量や学校の運営方針によっては、効果的な対処が難しい場合もあります。

ひきこもり地域支援センター(都道府県、指定都市)

専門家が在籍しており、不登校やひきこもりの相談を無料で受け付けています。医療機関や民間の不登校支援施設につないでもらえることもあります。

教育相談センター(都道府県・市区町村)

専門家が教育や子育ての相談を無料で受け付けています。学校復帰を支援する適応指導教室(教育支援センター)の利用窓口になっているケースもあります。

医療機関

精神科・心療内科などで医学的なアプローチをおこなえます。うつ病や発達障害、起立性調節障害などの心身の症状を治療してもらえます。
 
専門機関・相談窓口については、こちらのページも併せてご覧ください。
 
不登校の悩み、どこに相談すればいい?主な専門機関と相談窓口一覧 | 通信高校生ブログ

明聖高校の不登校サポート

通信制高校である明聖高校では、不登校傾向のある生徒に対し、段階的なサポートをおこなっています。教員と登校日数や時間を相談しながら、無理のない範囲で登校をはじめます。教員は皆、カウンセラー資格を持っており、生徒一人ひとりの心に寄り添った対応が可能です。また、校内カウンセラーも常駐しているため、学校生活の不安や悩みをいつでも相談できます。集団での学習に抵抗がある場合は、少人数体制の個別学習室やオンラインで通えるWEBコースを活用してみてはいかがでしょうか。
 
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