「不登校」という言葉は今や広く浸透していますが、具体的にはどのような状態を指すのでしょうか。子どもが学校に行きたがらない様子を見て「ひょっとすると、これが不登校なのだろうか」「ただ学校を休んでいる状況とどう違うのだろうか」「何か特別な対処が必要なのだろうか」と不安に思う保護者もいるかもしれません。
 
ここでは、不登校の定義を確認しながら、不登校を5つのタイプに分け、家庭でできる対処法を考えます。

文部科学省による「不登校」の定義と、ひきこもりとの違い

「不登校」と「ひきこもり」は似たような意味で使われますが、厳密には定義が異なります。 以下の表で比較してみましょう。

  不登校 ひきこもり
当てはまる人 学生 学生、社会人問わずすべての人
期間 年間で30日以上欠席 6ヵ月以上
社会への参加状況 学校以外の活動には参加する、またはできる 参加しない、またはできない

「不登校」について、文部科学省では以下のように定義づけられています。

「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者」

引用元:文部科学省「不登校の現状に関する認識」
 
学校を休んでいる期間に友達と会うことができていたり、習い事などの学校外の活動には積極的に参加できていたりする場合でも、年間30日以上欠席していれば不登校とみなされます。
 
また、以下に当てはまる場合は不登校の扱いにはなりません。

  • ・保護者の教育に関する考え方によって長期欠席をしている人
  • ・保護者の無理解・無関心によって長期欠席をしている人
  • ・家族の介護、家事手伝いなどの家庭の事情から長期欠席をしている人

一方、「ひきこもり」は厚生労働省によって以下のような定義づけられています。

「様々な要因の結果として社会的参加(就学、就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)」

引用元:厚生労働省「「ひきこもり」の定義など」
 
ひきこもりの場合、学生だけでなく社会人も含むこと、自宅にひきこもっている期間が6ヵ月以上と長いことが特徴です。
 
不登校が長引いてしまうと、人との関わりが難しくなってしまい、結果的にひきこもりになってしまうことも考えられます。
 
不登校とひきこもりの違いについては以下の記事で詳しくご紹介しています。併せてご覧ください。
不登校とひきこもりの違いは?原因はなに?親ができる対応3つも紹介|通信高校生ブログ

不登校の現状~中学生ではクラスに1人は不登校を経験

2022年の文部科学省の調査によると、不登校の小中学生の数は全国で過去最多の約29万9,000人。中学生の20人に1人が不登校という結果になりました。 もはや不登校は他人事とはいえない社会問題となっています。
不登校児童生徒数の推移のグラフ

参照:文部科学省 令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
 
また、同じ調査によると高校生の不登校は約12万2,000人で、約4.1%の高校生が長期間学校に通えていないことが明らかになりました。せっかく高校に入学しても、高校生のおよそ25人に1人は不登校になってしまう状況です。

【要因別】不登校の5つのタイプと家庭でできる対処法

不登校には幅広い状態が含まれるため、学校復帰に向けた対処も一様ではありません。以下では、不登校になったきっかけや長期化している原因のうち、本人に関係する要因から不登校を5つのタイプに分け、それぞれに対して家庭でできる対処法を解説します。

人間関係タイプ

いじめを含むクラスの友人関係、部活動での先輩・後輩との関係、教職員との関係などを理由に不登校になっているタイプです。
 
このタイプでは、家庭と学校と連携しながら、不登校の要因となっている人間関係のトラブルを解消することが先決となります。担任はもちろん、部活動の顧問やスクールカウンセラーなども相談先の候補となるでしょう。

遊び・非行タイプ

遊ぶために非行グループに入っていたり、学校に意味を見出せなかったりするために学校に行かないタイプです。
 
このタイプの場合は、学校のほか、必要に応じて外部の専門機関(児童相談所、教育センター、少年サポートセンターなど)にも相談しながら対処するのがよいでしょう。しっかりとルールを守らせる教育的指導を行うとともに、規則正しい生活習慣を身に付けさせたり、学習に関心を持つよう導いたりすることが、不登校の解消につながります。

無気力タイプ

何らかの理由で自分を肯定できなかったり、日々に物足りなさを感じたりして、あらゆることに無気力になっているタイプです。
 
このタイプに対しては、まず、本人が家庭の中で自尊感情を高められるよう、保護者が子どもの声に耳を傾ける姿勢を見せることが重要になります。さらに、本人の希望に応じて、無理のない範囲で習い事をさせてみたり、フリースクールや適応指導教室に行かせてみたり、家庭の中で家事などの役割を与えたりすると、本人の充足感につながる可能性があります。
 
また、学力面で自信を付けさせるのも手です。高校なら、通信制高校(インターネット学習の通信制高校含む)など、自宅にいながら学習できる選択肢もあります。
 
以下の記事でも無気力タイプ型の不登校について詳しくご紹介しています。併せてご覧ください。
無気力タイプ(型)の不登校とは?原因や解決方法を紹介|通信高校生ブログ

不安タイプ

情緒的に混乱しており、漠然とした不安から登校できないタイプです。本人は登校したいと思っているものの、朝になると体の不調が起こり、学校に行けない場合もあります。
 
このタイプは、学校や家庭で周りからの期待に応えようと頑張りすぎた結果、ストレスや疲れが限界に達している状況にある可能性があります。そのため、まずはゆっくりと休息を取ることが大切です。必要に応じてカウンセラーや医療機関(心療内科など)にも相談し、自分のペースで再スタートできるエネルギーを取り戻せるようにしましょう。

その他、複合タイプ

以上のタイプは明確に分けられるわけではなく、複数のタイプの特徴をあわせ持っている場合も少なくありません。子どもの様子を注意深く観察し、丁寧に話を聞きながら、状況を把握することが重要です。

不登校の回復段階とは?

2019年に文部科学省から出された「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」では、不登校の児童や生徒に対する支援について以下のように提言しています。
 
「不登校児童生徒への支援は、『学校に登校する』という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要がある」
出典:不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)
 
不登校の状態は大きく分けて「初期」「中期」「後期」に分けられます。

前兆・初期

学校で保健室や相談室に行くことが増えたり、学校の話題に拒否感を示すようになったりします。感情や行動をコントロールできず、本人が混乱してしまったり、体調不良になったりして、遅刻や欠席が目立ち始め、やがて不登校に陥ります。

中期

不安定だった心が落ち着き始めます。ただ、登校するエネルギーは低い状態にあるため、ひきこもりがちになる段階です。「復学への意欲がなくなってしまったのでは?」と周りが心配になってしまうこともあるでしょう。

後期

エネルギーが回復することで、子ども自身が外へ動き始めようとする段階です。子どもの口から肯定的な言葉が出てきたり、学習や進学に興味をもち始めたりします。人によっては登校にもチャレンジできるようになります。
 
以下の記事では、さらに詳しく不登校からの回復段階を解説しています。併せてご覧ください。
不登校からの回復にはどんな段階がある?子どものためにできることを紹介|通信高校生ブログ

通学の少ない通信制高校という選択肢もあります!

不登校の状態から抜け出そうとしている人におすすめの選択肢が、通信制高校です。

  • ・学校での友達・先生との関係が良くない
  • ・勉強が追いつかない

このような悩みが原因で不登校になった場合は、通学(スクーリング)が少ないコースの通信制高校に進学または転入学する方法が有効です。
 
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