「自分は過干渉かもしれない」とお悩みの保護者の方は、過干渉がお子さんによくない影響を与えるのではないかと不安に駆られ、改善したいとお考えのはずです。
今回は、保護者の方向けに、定義から過干渉な親の特徴、子どもへの影響を解説します。過干渉に気をつけながらお子さんの成長を支えるポイントも紹介するので、参考にしてみてください。
また「うちの親って過干渉かも」と悩む中高生の皆さん向けに、状況を少しでも改善できるようにアドバイスを掲載しているので、役立ててみてください。
過干渉とは?
過干渉とは、子どもに対して行きすぎた関わり方をしてしまうことです。お子さんの考えや気持ちを否定して親の思い通りにコントロールしようとしたり、プライバシーを尊重せずに関わったりすると、過干渉にあたります。
以下は、過干渉の具体例です。
● お子さんの服装や髪型を毎回決める
● メッセージアプリの内容を勝手にチェックする
● お子さんの部屋の掃除や整理整頓をすべてやってしまう
● 遊ぶ友達を指示したり、禁止したりする
● 親が決めた進路を強要する
文部科学省が平成13年度に発表した「家庭の教育力再生に関する調査研究」によると、家庭の教育力低下の理由の第1位が「子どもに対して過保護、甘やかせすぎや過干渉などの親が増加」となっています。このことから、2001年時点で過干渉な親が増えていることがうかがえます。
なお、過干渉と過保護の意味は異なります。過干渉はお子さんを尊重せず、保護者の方の考えや意見を押しつけることで、過保護はお子さんの意見を尊重して甘やかすことです。
いずれにしても、過干渉や過保護による家庭の教育力の低下は、健全な自主性の成長を妨げるとともに、お子さんの無気力や自己否定を促進するため注意が必要です。
親が過干渉になる原因は「心配のしすぎ」
親が過干渉になる原因のひとつに、お子さんを心配しすぎることが挙げられます。
文部科学省が平成13年度に発表した「家庭の教育力再生に関する調査研究」によると、母親の心配は実に多様です。
【母親の気がかりなこと】
● 犯罪や事故に巻き込まれること
● ほめ方・しかり方
● しつけのしかた
● 友だちとのかかわり
● 量や栄養バランスを考えた食事の与え方
参考:家庭の教育力再生に関する調査研究|文部科学省 より抜粋
例えば「あの子と関わって悪いほうへ流されないだろうか」などと心配になるあまり、「あの子とは遊んではいけない」と友達との関わり方を強制すると、過干渉になってしまいます。
お子さんが心配だからこそ、あれこれ口を出したり、行動を制限したりしてしまっていないか、今一度振り返ってみてください。
また、ご自身が親から過干渉を受けていた場合、同じ道をたどってしまうケースがあります。思いあたる方は、お子さんとの関わり方に注意が必要です。
過干渉な親の特徴とは?
過干渉な親の特徴を3つ紹介するので、ご自身に当てはまっていないかどうか考えながら読み進めてみてください。
子どもの考えを尊重しない
過干渉な親は、お子さんの考えや気持ちを尊重せず否定ばかりしてしまいます。
例えば、お子さんが青の服を着たいといっても、保護者の方が「青は似合わない」といって別の色を着せてしまうことがあります。マンガ家になりたいお子さんの気持ちを無視して、「そんなものお金にならないから医者になりなさい」と言うのも過干渉です。
お子さんの考えを否定したくなるのは、ご自身と考えや気持ちが違うためです。ところが、過干渉な親は自他境界(自分と他人を区別する境界線のこと)が曖昧で、お子さんと自分を区別せずに考えてしまう傾向があります。
そのため、まずはお子さんとご自身が別の人間であることを理解することが大切です。そして、ご自身の友達や先輩・後輩のような他者と同じように一線を引いたうえで、お子さんを尊重して関わる必要があります。
子どもの友達関係を決める
過干渉な親は、お子さんの将来を心配するあまり、勝手に友達関係を決めてしまうことがあります。
例えば「〇〇ちゃんとは遊んだらダメ」と勝手に決めて、付き合うべき友達関係を作ります。保護者の方から見て、お子さんの安全性は保たれるかもしれませんが、お子さんが本当に好きな子と遊べなくなり、無気力になるおそれがあります。
また、「どうせ自分の意見を言っても無駄」といった自己否定感を生んでしまう可能性もあります。
健全な成長のためには、友達関係はお子さん自身に決めさせる必要があります。もし、トラブルが起こったときは、その都度解決の仕方を教えたりサポートしたりして、乗り越えさせるのが保護者の方の役割です。
自分の価値観や経験を押し付ける
過干渉な親は、自分の人生経験や価値観が正しいと信じていることが多く、それをお子さんに押しつけてしまいがちです。
例えば、保護者の方が子どもの頃「商業高校を出て就職するのが一番」といわれてそのとおりにした場合、保護者の方もお子さんにその価値観を強要してしまうことがあります。時代とともに価値観は大きく変わりますが、過干渉な親はアップデートできない傾向があります。
押しつけや強要は、お子さんなりの考えや保護者の方とは違う経験を積むチャンスを奪うことになるでしょう。ご自分の価値観や経験を押しつけるのではなく、お子さんの気持ちを尊重しながら、新たな道を探っていくことが大切です。
親が過干渉だとどうなる?子どもへの影響
親が過干渉だと、子どもへマイナスの影響が及ぼされます。ここでは、一般的に考えられる3つの影響を解説します。
子どもを正しくしつけられないおそれがある
過干渉な親のなかには、社会に出て恥ずかしくないように礼儀・作法をしつけなければならないと考えている方がいます。例えば、正しく箸を持たせるために毎日厳しく叱りすぎると、過干渉になります。
「そんなことだと恥ずかしいよ」「回りに迷惑をかけるよ」と言いながら過干渉を続けると、お子さんは他人の目や意見ばかりを気にして、自己否定的になります。そして、いずれ自分で考えて行動しなければならなくなったとき、どうしてよいかわからなくなってしまうのです。
お子さんの将来のためを思ってやったことが、自己肯定感や自律心の成長を妨げるおそれがあるのです。箸の持ち方を正しくしつけたいのであれば、毎日叱るのではなく、できたときにたくさん褒めてあげたり間隔を開けて注意したり、お子さんが愛されている実感を得られるようにおこなないましょう。
子どもの不健全な行動につながるおそれがある
法務省が平成17年度に発表した「平成17年版 犯罪白書」によると、子育ての問題について、非行少年の母親のうち69.3%、父親のうち57.3%が「子供に口うるさかった」と回答しています。つまり、過干渉が原因で我が子が非行に走ってしまったと考えているのです。
一方、非行少年側から見た親の養育態度に関する回答は、以下のようになっており、やはり過干渉が子どもの心に影響をおよぼしていると考えられます。
● 親が厳しすぎると感じる:44.6%
● 親が気まぐれであると感じる:26.6%
● 親が自分のことを気にしないと感じる:25.7%
このように、過干渉がお子さんの不健全な行動につながるおそれがあるのです。
子どもの幸福度・自尊心を低下させるおそれがある
子ども家庭庁が発表した「令和5年度 こども若者☆いけんぷらす育ち指針についてのアンケート調査結果」では、「幼児期までの育ちを振り返って、もっと大人にしてほしかったことは何か、それはどんな時かを教えてください。」という質問に対して、以下のような回答があります。
過保護、過干渉、易怒性があり、褒めない教育をする親だったため、子に対して褒めながら自立心、自主性を育める教育をしてほしかった。
過干渉を含む行きすぎた家庭教育は、お子さんの幸福度や自尊心の低下を招くおそれがあります。
過干渉な親にならないために!子どもの成長を支えるポイント
過干渉な親にならないためには、お子さんとご自身が別の人間だと認識したうえで、成長を支えることが大切です。ここでは、お子さんの成長を支えるポイントを4つ紹介します。
不適切な行動があれば子どもに謝罪する
もし、これまで過干渉な関わり方をしてしまい、子どもを縛り付けてしまったことを後悔しているのであれば、まずはその責任を認めて謝罪することが大切です。その結果、お子さんは「自分が悪かったわけではない」「親に嫌われていたわけではない」と考えられるようになり、自己否定感をやわらげることができます。
また、自分は親に愛されていると思える自尊感情を取り戻すこともできます。
過干渉をあらためたい場合は、これまでの行動を謝罪したうえで、お子さんを愛する気持ちを伝えることからスタートしましょう。
子どもを一人の人間として認める
お子さんも一人の人間であり、親とは考え方や気持ちが異なるという認知が大切です。
例えば、お子さんが赤ちゃんだったときのおもちゃを親の判断だけで捨ててしまうことは、自他境界が曖昧な行動です。この場合、お子さんに捨ててもよいかどうかを聞くのが適切です。お金を出したのは親かもしれませんが、お子さんにとっては思い出が詰まっている可能性もあります。
親が過干渉だと、お子さんは「自分のことをわかってもらえない」「どうせ自分の意見を言っても無駄」という気持ちがわき、不安定になります。こうした不安定さは、考え方や行動にも影響を与え、将来社会生活を送るうえで支障をきたすこともあるのです。
お子さんの健全な成長のためにも、「自分は自分、子どもは子ども」と自他境界をはっきりさせ、適度な距離感をもって関わることが大切です。
子どもの自主性を尊重する
子どもの自主性を尊重しながら育てるためには、体験活動の機会を作ることが大切です。
文部科学省が平成13年に生まれた子どもを13年間かけて追跡調査した「21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)」によると、小学生の頃に自然や社会体験を豊富に経験した子どもは、高校生で高い自尊感情を抱けることが明らかになっています。
例えば、以下の体験活動は、お子さんの健全な成長を促進するのです。
● キャンプや登山などの自然体験
● 農業やボランティアなどの社会体験
● 動物園や音楽・演劇鑑賞などの文化的体験
過干渉にならず、お子さんの自主性を尊重するためには、お子さんをさまざまな体験に連れて行き、見守ったりサポートしたりすることが大切です。
子どもが愛されていると実感できるコミュニケーションをとる
子どもは親から愛されていると感じるとき、安定した気持ちで過ごすことができます。過干渉な親は、お子さんの考えを否定し自分の考えを押し付けるため、自己否定感が生まれます。そのため「自分は親に愛されていない」と感じてしまうのです。
子どもが愛されていると実感できるコミュニケーションをとるためには、以下のポイントを意識してみてください。
● 日頃からお子さんの話をじっくり聞く
● お子さんと同じ目線で考える
● お子さんの行動や話に深い関心を寄せる
家庭で愛されている実感が強まると、お子さんは安定した気持ちで問題に立ち向かうことができるようになります。さらに、他者の受容も可能となり、大きな成長を促進できるのです。
子どもの考えを尊重して一緒に未来を考えよう!
子どもの将来や幸せを考えると、親が考える最良の道を進んでほしいと思い、過干渉になってしまうことがあります。保護者の方が「自分が子どものときとは時代が異なる」「子どもは自分とは別の人間である」と理解していれば、子どもが選ぶ道も尊重できるようになるはずです。
例えば、子どもが「通信制高校に進学したい」と言ったら、どう感じるか・どう声かけするかを想像してみてください。全日制高校に行ってほしいと思う方もいらっしゃるとは思いますが、子どものためになにがよい選択なのかは親が決めることではありません。
お子さんの気持ちや考えを聞きながら、一緒に情報収集をして、考えてみてください。そして、お子さんの決定をサポートすることが大切です。
過干渉な親に悩む中高生のみなさんへ
過干渉な親に悩んでいる中高生のみなさんにとって、親との関わり方は大きな問題でしょう。
親と対等にコミュニケーションをとれる場合は、思っていることをありのまま伝えると、わかってくれる親もいます。ただし、過干渉な親の多くは自覚がないため、指摘しても信じてもらえないどころか、エスカレートすることがあります。
親の過干渉に気付いたら、親の意見に耳を傾けつつも、自分のことは自分で考えて行動することが大切です。一人では改善できないのであれば、信頼できる親せきや学校、その他相談窓口に相談して、ほかの大人を頼ってみてください。
明聖高校の先生方は、全員がカウンセリングやメンタルヘルスの資格をもっているプロです。また、カウンセラーが常駐しており、みなさんの悩みを聞ける体制を整えています。このように、しっかりとした相談体制がある高校を選ぶことで、過干渉な親に関する悩みの解消につなげることも可能です。もし興味があれば、学校説明会・相談会に来てみてください。
学校説明会・相談会|明聖高等学校
まとめ
お子さんの将来を心配したり、幸せを願ったりするなかで、お子さんの気持ちを否定して親の価値観を押し付けることを過干渉といいます。過干渉は、お子さんの自主性の成長を妨げるとともに、自尊心の低下や無気力をもたらすなど悪影響が心配されます。ご自分の関わり方が過干渉ではないかと心配されている保護者の方は、お子さんを自分とは違う人間だととらえて、考えや気持ちの尊重を意識してみてください。逆に、それができていれば過干渉ではないといえるでしょう。また、過干渉な親に悩む中高生のみなさんは、自分で考えて行動することが大切です。
自力では難しい場合は、相談体制が整った高校へ進学して、信頼できる大人を見つける方法があります。自分の人生を自分の足で歩くために、進路選びの際に意識してみてください。
参考URL:
家庭の教育力再生に関する調査研究|文部科学省
平成17年版 犯罪白書|法務省
令和5年度 こども若者☆いけんぷらす育ち指針についてのアンケート調査結果|子ども家庭庁
21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)|文部科学省
子供(こども)のSNSの相談窓口(そうだんまどぐち)|文部科学省
学校説明会・相談会|明聖高等学校
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