不登校の間、ゲームに没頭する子どもは少なくありません。一日中ゲームばかりしていたり、ゲームのために昼夜逆転したりしているのを見て、「このままでは学校復帰・社会復帰できなくなってしまうのではないか」と心配してしまう保護者も多いかと思います。
ゲームへの依存状態をどのように解決していけばいいのか、適切な対処法を解説します。

現実逃避している場合は要注意!不登校中にゲームにハマってしまう理由とは

まず、不登校中にゲームをすること自体は、決して有害ではありません。プレイの頻度や時間を本人自身がコントロールできていれば、ポジティブなリフレッシュ方法のひとつとして有効です。また、「プロゲーマーになりたい」「ゲームの話題のおかげで、カウンセラーやフリースクールの友達と打ち解けられた」といった例も見られます。

一方、問題になるのは、現実逃避する形でゲームに没頭しているケースです。日常生活に支障をきたすほどゲームに依存している場合には、「ゲーム障害」という心の病気(精神疾患)にまで至っている恐れもあります。

不登校の子どもがネガティブな形でゲームに依存してしまう理由には、主に次の2つが挙げられます。

ゲーム以外にストレスを解消したり、不安を紛らわせたりする方法がない

不登校になっている子どもは、さまざまな葛藤を抱えています。将来に不安を感じ、「学校復帰しなければならない」と焦る一方、不登校のきっかけとなった人間関係や学業不振の悩みが解消せず、「何かしなければいけないけれど、どうすればいいかわからない」と感じている状態です。
そうした際、ほかに夢中になれるものがないと、ストレスや不安を解消するために、ゲームに熱中してしまうことがあります。特に、日中の外出がはばかられる中で、自宅がすぐにゲームができる環境にあると、手っ取り早く現実を忘れられるゲームに手を伸ばしてしまいがちになるのです。

ゲーム内のコミュニティが唯一の居場所になり、仲間の誘いを断れなくなる

プレイヤー同士が交流できるオンラインゲームをしている場合は、そのコミュニティが子どもの居場所になっていることもあります。
学校などリアルな世界での人間関係に悩む子どもにとって、共通の趣味で結ばれたゲーム内の仲間は、唯一のよりどころになっていることもあるでしょう。そのため、「仲間に認められたい」という想いがエスカレートし、ゲーム内での地位(強さなど)を高めようと際限なく課金したり、「チームでの戦いに常に参加していないと、仲間から裏切り者として見られてしまう」という恐れからゲームを離れられなくなったりしている可能性もあります。

不登校中のゲーム依存状態を解決するためには、まず、こうした背景を子ども自身と保護者が理解することが重要です。

不登校中のゲーム依存への対処法――やってはいけないこと、やってほしいこと

ゲーム依存の兆候が見られたら、状況が悪化する前に対策を採る必要がありますが、対処の仕方には注意が必要です。ゲーム機を取り上げたり、携帯電話を解約したり、勝手に時間のルールを設けたりなど、保護者が強制的にゲームをやめさせるやり方は好ましくありません。子どもは自分を否定されたように感じ、心を閉ざしてしまうでしょう。場合によっては、暴力的に抵抗したり、隠れてゲームしたりといったことにもつながります。

大切なのは、子ども自身が現状に向き合い、ゲーム依存が問題であること自体や、その原因となっている不安・ストレスに、自ら対処できる能力を身につけられるようにすることです。そのためには、親子で次のようなアプローチを試みてみましょう。

1.ゲーム依存になっている現状についてしっかり話し合う

まず、保護者は子どもがどのようなゲームをやっているのか、どういったところが楽しいのかを、肯定的に聞いてみましょう。対話を通じて、子どもがゲームに没頭している本当の理由に、本人と保護者で向き合えるようにしていきます。最終的には、現状の問題に本人が気づき、「今の自分を変えたい。変わらなきゃいけない」と感じられるようになるのが目標です。

2.本人も保護者も納得できるルールを作る

本人がゲーム依存の状況を認識できるようになったら、ゲームのプレイ時間や頻度をコントロールできるよう、ルールを設定してみましょう。ここでも、保護者が一方的にルールを押し付けるのではなく、話し合いながら双方が納得できるルールを設けることが不可欠です。また、ルールを実行する上でも、最初は保護者のほうから過度に干渉せず、子ども自身がルールを守れるかどうかを見守ってみます。数日間様子を見て、本人だけではなかなかルールどおりにできそうになければ、保護者からも声を掛けるようにしましょう。

3.不安やストレスを解消できるほかの活動にチャレンジする

不安を紛らわしたり、ストレスを発散したりできるほかの方法を見つけるのも有効です。読書、イラスト、工作、スポーツ、音楽など、本人が興味を持ったことに打ち込めるよう、保護者はサポートしましょう。また、がんばりを保護者が積極的に褒めて、認めてあげれば、子どもにとって新たな心のよりどころもできるはずです。

ただし、依存対象がゲームからほかのものに移っただけでは、あまり状況が改善したとはいえません。例えば、イラストに熱中しながら、ゲームも楽しみ、心の余裕があるときには勉強や家事もして、と、さまざまな活動ができるようになるとより理想的です。

4.カウンセラーや医療機関にも相談する

家庭内での解決が難しいと感じたら、外部の専門家・専門機関も積極的に活用してみましょう。本人はもちろん、保護者も同席したり、保護者だけが相談したりするのも有効です。ゲーム依存の対処法についてアドバイスしてもらえるだけでなく、依存状態の原因である不安そのものも軽減できる可能性があります。

具体的な相談窓口としては、スクールカウンセラーのほか、国が設置している「子どもの人権100番」、都道府県の「教育相談センター」、NPO法人が運営する「チャイルドライン」などがあります。また、依存状態が深刻な場合には、精神科や心療内科など医療機関の受診も検討しましょう。

「カウンセラーに相談するなんて、精神的に弱い、ダメな人がすることだ」とためらってしまうこともあるかもしれませんが、恥じることは決してありません。むしろ、問題の解決に向けた第一歩を踏み出す、勇気ある行動であるともいえるでしょう。