高校は小・中学校と違い、通うためには少なくない学費がかかります。カリキュラムや校風、学習スタイルなどが自分に合っている学校を見つけても「学費が高くて難しいかもしれない」と感じて、出願をためらってしまう人もいるかもしれません。また、すでに自立していて、仕事をしながら高校卒業資格を取得したいと考えている人にとっては、学費と生活費の兼ね合いも心配になるでしょう。
このように高校で学ぶにあたって経済的な困難がある場合には、学費を支援する「高等学校等就学支援金制度」(以下、就学支援金)の活用を検討してみましょう。今回は、特に私立高校に通う場合に焦点を当て、就学支援金の需給要件や支給金額などについて詳しく解説します。

就学支援金とは?

就学支援金とは、国が実施している返還不要の授業料支援の制度です。教育に関わる家庭の経済的負担を軽減することで、教育機会均等の推進を目的としています。そのため、日本国内に住所を有し、国公立、私立を問わず高等学校に通うすべての生徒が対象となっているのが特徴です。所得などの要件を満たす世帯(※年収約910万円未満の世帯)に対して、授業料に充てるための就学支援金が支給されます。

授業料・実質無償化の仕組み

公立高校の場合は、年収が910万円未満の世帯に、授業料相当額である年額11万8,800円が支給されます。全日制の私立高校の場合は、所得に応じて上限・年額39万6,000円が支給される仕組みです。通信制の私立高校の場合は、上限額が29万7,000円に設定されています。

支給額(年額)
公立高校 11万8,800円
私立高校(全日制) 39万6,000円
私立通信制高校 29万7,000円

文部科学省が2022年に実施した調査によると、全日制私立高校の初年度授業料の平均額は44万5,174円となっています。必ずしも授業料が全額補填されるわけではありませんが、家計への負担が大幅に軽減される制度といえるでしょう。
 
参考:文部科学省「令和4年度私立高等学校等初年度授業料等の調査結果について」

高等学校等就学支援金制度が2020年4月に改正

文部科学省のホームページに掲載されている「高等学校等就学支援金制度に関するQ&A」には以下のような回答があります。
 

Q 私立高校が実質無償化されると聞いたのですが、本当ですか?
 
A 2020年4月から、年収約590万円未満世帯を対象として、現行の就学支援金の支給上限額が全国の私立高校の平均授業料を勘案した水準(私立高校(全日制)の場合、39万6,000円)まで引き上げられ、これまで以上に支援が充実しました。
なお、国公立の高等学校については、これまで同様、年収910万円未満世帯に対して、授業料相当額の就学支援金が支給されます。

 
引用元:文部科学省「高等学校等就学支援金制度に関するQ&A」
 
従来、私立高校の場合は年額11万8,800円に、所得に応じて段階的に支援金が加算される仕組みとなっていました。具体的には、年収270万円以下の場合は17万8,200円、270~350万円の場合は11万8,800円、350~590万円の場合は59,400円が加算されるというものです。
 
2020年4月の改正では、年収約590万円未満世帯への加算額が一律27万7,200円まで引き上げられ、支給額の総額が39万6,000円となりました。年収590万円~910万円の世帯については、加算はないものの従来と同様11万8,800円が支給されます。これまで以上に支援の幅が広がったといえるでしょう。

年収 従来の支援金加算額 20年4月改正後
270万円以下 17万8,200円 27万7,200円
270~350万円 11万8,800円 27万7,200円
350~590万円 59,400円 27万7,200円
590万円~910万円 なし なし※11万8,800円の支援あり

授業料だけじゃない!高校に通うためにかかる費用

高校に通うためにかかる費用には、主に次のようなものがあります。

  • ・入学金(1年次のみ)
  • ・授業料
  • ・施設設備費(主に私立)
  • ・教科書や副教材の購入費用
  • ・制服、体操服、通学カバンなど衣服関連の購入費用
  • ・修学旅行や遠足などの積立金
  • ・生徒会費
  • ・PTA会費
  • ・部活動など課外活動にかかる費用
  • ・通学の交通費
  • ・寄付金(主に私立)

ただし、必ずしもこれらの費用すべてが発生するわけではありません。
文部科学省の調査(2022年)によると、私立高校における生徒1人当たりの学校教育費は平均で約76万円となっています。また、実際には各費用の大きさは学校によってまちまちです。全日制だと授業料+施設設備費+各種積立金で年間50万円前後~100万円超、通信制(ネット高校を含む)では20万円前後~40万円前後となっています。通信制高校の場合は、施設設備費が少なかったり、修学旅行の積立金が不要だったりするケースが多い分、かかる費用を比較的抑えられるという特徴があります。
 
こうした高校の学費を支援するのが、教育の機会均等を目的とした、国の就学支援金制度です。全国で約8割の生徒が同制度を利用していると公表されています。
以下で、制度の詳細を見ていきましょう。

就学支援金の受給資格

就学支援金を受給するためには、「在学要件」「在住要件」「所得要件」の3つを満たす必要があります。なお、入学時にこれらの要件を満たせない場合でも、その後受給資格を得られれば、1~3年次の7月頃に申請することが可能です。

在学要件(学校の種類)

国公私立を問わず、高校など*に通学する生徒であることが条件になります。全日制だけでなく、定時制や通信制の高校も対象です(専攻科・別科を除く)。ただし、高校などの卒業生や3年(定時制・通信制は4年)を超えて在学している生徒は対象外となります。
 
*高校のほか、特別支援学校の高等部や高等専門学校(第1学年から第3学年まで)、専修学校の高等課程なども含まれます。

在住要件(居住地)

日本国内に住所があることが基本的な条件です。

所得要件(世帯年収)

「保護者などの課税標準額(課税所得額)」× 6% -「市町村民税の調整控除額で計算される算定基準額」が、30万4,200円未満の世帯の生徒が対象です。
「課税標準額(課税所得額)」や「市町村民税の調整控除額」は、市町村が発行する課税証明書などに記載されていない場合もあります。その際には、政府が運営するオンラインサービス「マイナポータル」から確認が可能です(マイナンバーカードが必要になります)。また、市町村によっては、これらの情報を記載した「高等学校等就学支援金に係る課税証明書(補足)」を交付してもらえるところもあるため、お住まいの自治体の窓口に確認してみましょう。

<受給対象となる世帯の年収目安>

・ 両親のうちどちらか一方が働き、高校生1人、中学生1人の子どもがいる世帯の場合:年収約910万円未満
・ 両親が共働きで、大学生1人、高校生1人、中学生1人がいる世帯の場合:年収約1,090万円未満

就学支援金の支給の詳細

支給額や支給方法の詳細は以下のとおりです。

支給額

私立高校については、全日制・定時制・通信制のいずれの場合も、支給額は9,900円/月です。さらに、世帯所得や通う学校の種類によって、支給額が加算される場合もあります。全日制・定時制の場合は23,100円/月、通信制の場合は14,850円/月の加算です。

支給方法

就学支援金は、学校設置者(私立の場合は学校法人など)が生徒本人の代わりに受け取ります。生徒は、就学支援金の支給額と相殺された授業料を学校に支払う形です。生徒や保護者に直接就学支援金が支給されるわけではない点に注意しましょう。

支給開始

申請した月(入学時、または1~3年次の7月)から支給が開始されます。

就学支援金の申請方法

申請は次のような手順でおこないます。主に学校やお住まいの市町村とのやり取りが必要になります。

1.入学時(2年次以降は7月頃)に学校から案内を受け取ります。
 
2.学校に以下の必要書類を提出して申請をおこないます。

  • ・受給資格認定申請書(学校から案内時に配布)
  • ・保護者の収入状況を示す課税証明書など
  • ・保護者などのマイナンバーを明らかにできる書類(マイナンバーカードの写し、マイナンバー通知カードの写し、マイナンバーが記載された住民票の写しなど)

その他(学校によって、さらに書類が必要な場合もあります)

高等学校等奨学給付金など、授業料以外の費用負担を軽減する制度も

就学支援金は授業料を補助する制度ですが、所得状況によっては、同制度ではカバーしきれない費用負担を軽減できる給付金制度を活用できる場合があります。
その代表例のひとつが、高等学校等奨学給付金です。各都道府県が国の基準に基づいて実施している返還不要の給付金制度で、生活保護世帯と、住民税所得割が非課税の世帯が対象となります。こちらは生徒や保護者が直接給付金を受け取れるため、教材費や制服購入費用、交通費、修学旅行費などの負担を軽減することが可能です。
その他、自治体によっては、保護者の失職などで家計が急変した世帯を対象とした学費の支援制度や、高校を中途退学した人の学び直しを経済的に支援する制度が設けられている場合もあります。
これらの給付額など制度の詳細は都道府県によって異なるため、お住まいの自治体の窓口に問い合わせてみてください。

明聖高校の学費サポートで費用を抑えられます

明聖高校では「明聖高校学費減免」という独自のサポート制度を用意しています。国の就学支援金と併せて支給しています。減免額は、入学時、また次年度の学費納入手続き時の年収区分で確定します。
 
その他にも、都道府県が運営する学費サポート制度や、奨学金制度もあります。
詳しくは以下のページをご覧ください。
学費サポート|明聖高等学校(千葉・中野の総合通信制高校)