「通信制高校」と「全日制高校」はどのように違うのでしょうか。
どちらも異なる高校の種類だと聞いたことはあっても、何がどのように異なっているのか、具体的にイメージできない部分もあるでしょう。ここでは、通信制高校と全日制高校の違いについて、さまざまな点から解説します。

そもそも高等学校制度とは?通信制・全日制の違いについて

通信制高校とは、通信教育を使って場所を選ばずに勉強できる高校で、毎日学校に通う必要がないのが特徴です。通信制では一般的に単位制が導入されており、課題の提出やテストによって単位を取得し、必要な単位数に達することで卒業要件を満たすことができます。一方、全日制は学年制で、各学年に必要な進級要件を満たすと次の学年へと上がることができます。

また、修業年限は全日制が3年で、通信制は3年以上になっているため、自分のペースで勉強できます。これらの詳しい解説については、後述していますので最後まで記事をご覧ください。

通信制高校と全日制高校はそれぞれどんな人におすすめ?

全日制高校と通信制高校には、それぞれたくさんのよい点があります。
それらを比較しながら、どちらがどのような人に向いているかを見ていきましょう。

通信制高校は自由な時間を確保したい人におすすめ

  • ・スクーリングが少ないので、学習以外のことに費やす時間を作りやすい
  • ・自宅学習がメインで留年がないので、自分のペースで学習できる
  • ・行事や部活動に参加せず、学習だけに集中できる

アルバイトや趣味と学習を両立したい人や、自分で立てた計画に沿ってじっくり学習したい人は、通信制高校がぴったりだといえます。
また、「部活動や友だち作りよりも、高卒資格を取るための学習に集中したい」という人にも、通信制高校がおすすめです。

全日制高校はたくさんの人と切磋琢磨したい人におすすめ

  • ・毎朝決まった時間に登下校をするので、生活リズムが保てる
  • ・たくさんの人とコミュニケーションを取れる機会が多い
  • ・行事や部活動が盛んなことが多い

大勢の人と一斉に授業を受けたり、自宅の外で学習したりしたほうが学習のモチベーションを保てる人は、全日制高校に多くのメリットがあります。
たくさんの人と競い合ったり、支え合ったりして刺激を受けながら成長していきたい人に向いているといえるでしょう。

通信制高校はどんな人が通ってる?

さて、通信制の高校にはどのような人が通っているのでしょうか、文部科学省の調査からその実態を探ってみましょう。通信制高校の生徒のなかには、小中学校などで不登校の経験がある人が多くいることがわかっています。また、15~18歳までの生徒だけではなく、それ以上の年齢層の生徒も在籍しており、多様なバックグラウンドを持つ人を受けていることを示しています。

ちなみに、全日制と定時制高校の生徒数は減少傾向にあるのですが、通信制高校は1970年に15万人弱だったのが2019年には約20万人に増加しています。通信制高校を選択することも、より当たり前のことになっていることがわかります。

通信制高校に対するイメージが気になる方は、以下の記事も参考にしてみてください。

通信制高校に対するイメージが気になる……。実際はどうなの?

通信制高校の特徴~自宅学習がメインで学年のない高校~

通信制高校には、次のような特徴があります。

入試(入学者選抜試験)・入学時期

学科試験を実施せず、書類選考や面接のみの通信制高校が多くなっています。
入学は春(4月)と秋(10月)の2回とする学校が目立ちますが、いつでも入学できる学校もあります。転入学や編入学は月の途中からでも受け入れてもらえることが多いようです。

通学・授業(レポート・スクーリング)

学校によって異なりますが、週1~3日通学(スクーリング)するのが一般的です。なかには、年数回のスクーリングで単位修得が可能な学校もあります。
学年制ではなく、単位制の学校がほとんどであることから、学年やクラスがないことが多く、授業にはさまざまな年齢の生徒が参加します。
午前・午後の両方に授業のある学校もありますが、半日程度でその日の授業が終わる学校も多数です。
学習は自宅学習とレポート課題の作成・提出が中心になります。

単位認定試験(テスト)

年に1~2回、単位認定試験が実施されます。全日制高校の定期考査に代わるもので、合格すれば各科目の単位が認定されます。
定期考査より範囲が広くなりますが、難易度はあまり高くないといわれています。

卒業要件

3年以上在籍し、定められた単位を修得すれば卒業できます。単位修得のために必要な条件は、定められた数のレポート提出(年間約50~60通)とスクーリング、単位認定試験をクリアすることです。
学年のない単位制なので、単位を落としたとしても原則、留年することはありません。

費用

地域や学校により差がありますが、例えば都立の通信制高校は、1単位336円の通信教育受講料がかかり、卒業には74単位以上が必要であるため、卒業までに必要な受講料は2万4,864円です。
さらに、日本スポーツ振興センター共済掛金が年間165 円かかるほか、実習のための教材費、レポート提出のための郵送費が必要になることもあります。制服はないことが一般的です。
私立の場合は、例えば、明聖高校の通信コース・WEBコースでは、授業料が年間18万円、施設費が年間1万円となっています。

全日制高校の特徴~毎日学校に通う、学年とクラスがある高校~

全日制高校には、次のような特徴があります。

入試(入学者選抜試験)

公立高校は英語・数学・国語・理科・社会の5教科、私立は英語・数学・国語の3教科の学科試験を実施するのが一般的です。
さらに、作文や面接を課す高校もあります。入試時期は私立のほうが早い傾向があり、1~2月頃におこなわれるのがメジャーです。公立は2~3月頃が多くなっています。

入学時期

特殊な場合を除き、入学時期は4月です。転入学や編入学も、学期末や年度末など決まった時期に設けられることが多く、途中で入学することはあまりありません。

通学・授業

週5~6日学校へ通います。授業は学級(クラス)単位がほとんどで、朝から夕方まで計6時間くらいあるのが一般的です。

定期考査(テスト)

定期考査は、2学期制の学校では年4回(前期中間・前期期末・後期中間・後期期末)、3学期制の学校では年5回(1学期中間・1学期期末・2学期中間・2学期期末・学年末)実施されることが多くなっています。授業内容の理解度を測ることを目的としたもので、試験の点数と平常点を合わせて成績が付けられます。

卒業要件

3年以上在籍し、定められた単位を修得すれば卒業できます。
主に授業への出席と定期考査で単位を修得していくため、小学校・中学校とは異なり、欠席や欠課が多いと卒業できません。
また、学年制の場合には、学年で定められた科目をすべてクリアできなければ留年になり、その場合にはまた1年間、同じ学年をやり直すことになります。

費用

地域や学校により差がありますが、文部科学省が2017年に発表した調査結果によると、全日制高校における生徒1人あたりの年間学校教育費は、公立で約27万6,000円、私立で約75万5,000円となっています。「学校教育費」に含まれる項目は、授業料のほか、修学旅行・遠足・見学費、生徒会費、PTA会費、教科書費や教科書以外の図書費、学用品・実験実習材料費などです。