通信制高校を卒業した人の体験談を目にすると、1年程度で卒業したという人もいれば、4年かかったという人もいることに気づくかもしれません。これは、全日制高校と通信制高校では教育課程(仕組み)が異なるためです。

今回は、その仕組みを確認しながら、通信制高校を卒業するまでの年数について解説します。

通信制高校の在籍年数は3年以上。全日制高校との違いに注意

通信制高校を卒業するためには、3年以上高校に在籍する必要があります。加えて、卒業までに74単位以上を修得し、30時間以上の特別活動に出席しなければなりません。

卒業までの年数に関して、特に注意したいのは次の2点です。

最短でも3年はかかる

通信制高校の中には、1年間で履修できる教科・科目や修得する単位数を生徒が比較的柔軟に決められる学校もあります。しかし、3年以上在籍することが通信制高校の卒業要件であるため「1年間で多めに単位を修得して、3年未満の短期間で通信制高校を卒業する」ということはできません。

3年より多くかかることがある

3年間で74単位を修得し、特別活動に30時間以上出席できなければ、卒業までに3年より多くかかってしまいます。

一般的な全日制高校は「学年制」という仕組みを採用しており、学年ごとのカリキュラムに沿って3年在籍すれば卒業できますが、通信制高校の多くは「単位制」となっています。単位制の通信制高校では、単に在籍するだけでは単位を修得できず、卒業できません。自主学習をして決められた通数のレポートを提出し、一定の時数のスクーリングに出席して、さらに単位認定試験に合格することで初めて単位を修得できる仕組みになっています。
 
▼通信制高校の卒業要件について、詳しくはこちら。
通信制高校って簡単に卒業できるの?卒業要件とサポート体制
 
▼単位制高校の仕組みについて、詳しくはこちら。
通信制高校で単位はどうやって取るの?通信制高校のシステムとは

通信制高校の卒業が4年目以降になってしまうのはどんなとき?それぞれの対処法

通信制高校の卒業までに3年より多くかかってしまうケースは珍しくありません。文部科学省の調査によると、2017年度の通信制高校卒業生のうち10%が3年より多くかかっていることがわかっています。

公立の通信制高校であれば比較的抑えられるため、4年次以上在籍することもできるでしょう。ただし、私立通信制高校の場合はどうしても費用がかさんでしまう傾向にあります。いずれにしても、可能な限りは3年での卒業を目指すべきだといえます。

どのようなときに卒業が4年目以降になってしまうのか、原因とそれぞれの対処法を見てみましょう。

学習内容や学習計画でつまずいてしまった

自主学習ではなかなか学習内容を理解しきれず、単位を修得できないパターンが挙げられます。また、自分の生活スタイルに合わない学習計画を立ててしまっている人もいます。

学力にあまり自信が持てない人は、学習サポート体制が整っていたり、基礎学習を重視したカリキュラムを組んでいたりする通信制高校を選ぶと、つまずきを防止・解消しやすくなるでしょう。また、学習スケジュールを立てるのが苦手な人は、3年で卒業できるようなカリキュラムに沿って学習できる通信制高校がおすすめです。

学習を続けるモチベーション(やる気)を保てなかった

だんだん勉強に対するやる気がなくなってしまい、通信制高校を挫折してしまう人も多くいます。自主学習をついサボってしまいがちだという人は、スクーリング回数の多い通信制高校を選ぶと、学習習慣を作りやすく、また友人や先生に頻繁に会うことでモチベーションも保ちやすくなります。

ほかの用事や体調の関係で学習できなかった
仕事や芸能・アスリート活動、子育て、介護などと学習を両立させている人や、病気の治療をしながら高校卒業を目指している人が、なかなか学習に取り掛かれず、卒業が延びてしまうことがあります。

最近では、明聖高校WEBコースのように、スマートフォンなどを使ってインターネット上で学習できる通信制高校もあり、机に向かって勉強するのが難しい人におすすめです。

また、心身の健康に不安がある人は、カウンセラーが常駐していたり、少人数の個別学習室でスクーリングに出席できたりといったサポート体制が整った通信制高校を選ぶとよいでしょう。

転入・編入の場合はパターンによって卒業までの年数が変わる!

通信制高校は、別の高校に在籍する生徒が学年の途中から転入したり、一度ほかの高校を中途退学(中退)した人が2年次以降に編入したりすることもできます。これらの場合は、前に在籍していた高校の在籍期間と通信制高校の在籍期間の合計が3年以上になれば、在籍年数の卒業要件を満たすことが可能です。つまり「通信制高校を1年で卒業した」という人は、それまでの高校で2年以上在籍していたということになります。

ただし、修得単位の関係で、卒業までに3年より多くかかってしまうこともあります。ここでは、学年制の全日制高校や定時制高校から、単位制の通信制高校へ転入・編入する場合の在籍年数について、いくつかのパターンを解説していきましょう。

学年制高校1年の途中で、通信制高校に転入

転入では、学年の途中まで履修していた教科・科目を通信制高校に引き継ぐことができます。そのため、例えば1年生の9月末まで前の高校に在籍していた人は、10月から通信制高校の1年次に転入し、その年度の3月に1年次を終えることが可能です。この場合は、最短2年半で通信制高校を卒業できます。
2年生の途中で通信制高校に転入したときも同じ考え方で、最短合計3年で卒業することが可能です。

1年の途中で学年制高校を中退し、通信制高校へ編入(新入学)

学年制の高校では、1年ごとに単位修得認定するのが原則です。そのため、1年生の途中で学年制高校を中退した場合は、単位を1つも修得できていないことになります。したがって、通信制高校に入学する場合は「編入学」として、1年次の4月に編入学することになります。通信制高校に入学してから最短3年で卒業することになるため、

2年の途中で学年制高校を中退し、通信制高校へ編入

こちらの場合は2年次の4月に通信制高校へ編入することになります。1年で前の高校を退学したときと同様、卒業までには最短でも合計で3年より多くかかることになります。

学年制高校3年の後半以降に通信制高校へ転入

カリキュラムの関係で、前の学年制高校で修得できていない単位を年度内に通信制高校で修得しきれないことがあります。その場合、その年度の3月に卒業できず、次の4月からもう1年間通信制高校に在籍しなければならない可能性があります。

学年が切り替わるタイミングで転入・編入

基本的には次の年次(2年次または3年次)の最初からスタートして、最短合計3年で卒業できます。

ただし、その学年で認定された修得単位があまりに少ない場合は、前の年次からスタートしなければならないこともあります。全日制高校では標準として年間30単位修得するカリキュラムが組まれていますが、例えば、明聖高校では、前の学校での修得単位が10単位未満だと1年次から、10単位以上だと2年次から、40単位以上で3年次から転入・編入することになっています。