不登校は、誰もがなり得る可能性があります。中学校では、不登校の生徒が30人のクラスに1人以上いるというデータもあるほどです。不登校になる理由は人それぞれですが、原因を丁寧に把握して対処することが重要になります。対処が不十分だと、不登校を繰り返したり、大学生・社会人になってから引きこもりになってしまったりする恐れもあるためです。
今回は、中学生・高校生の不登校について、原因と対処法を解説します。
不登校の原因は、3種類の要因が複雑に絡み合ったもの
不登校は、ひとつのきっかけや原因で生じるというより、いくつかの要因が複雑に絡み合って引き起こされるものです。まず、なんらかの要因が積み重なってベースになり、そこにきっかけがあって、学校に行けなくなってしまいます。そこに「登校したくない」という気持ちを継続させる要因が加わって長期化してしまうというのが、一般的に考えられている仕組みです。
こうしたさまざまな不登校の要因は、主に3種類に分けられます。ただし、実際には複雑に絡み合っており、完全に分けられないことに留意が必要です。
学校に関係する要因
友人や先生との人間関係(いじめを含む)のトラブル、肌に合わない校則や部活動のルール、学力不振や進路の悩みが挙げられます。不登校の「きっかけ」になる場合が多いとされている要因です。
特に、入学や進級(クラス替え)、転入(転校)といった学校の環境が変化したとき、これらを含めた学校の雰囲気になじめないと感じて、不登校になることもあります。
家庭に関係する要因
「保護者の仕事や兄弟姉妹の学校が変わって、家族の生活パターンが変化した」「本人と保護者の関係(親子関係)がうまくいかない」「本人以外の家族同士の関係でトラブルがあった」といった要因です。一見、不登校とは無関係に思われますが、不登校を引き起こす「ベースの要因」になる可能性があります。
本人に関係する要因
「何事にも無気力になってしまった」「何となく学校に行くのが不安」「学校に行く価値を見出せない」など、本人の気持ちに関するものです。主に不登校を「継続させる要因」になります。
こうした本人の感情の引き金になるのは、先ほどもご紹介したような学力不振への不安や校則への反発だったり、家庭環境が変わったことによる生活リズムの変化だったりします。学校にも家庭にも居場所がなくなった場合には、非行グループに入ってしまうケースも少なくありません。あるいは、SNSなどインターネットでの交流やゲームが学校生活よりおもしろいと考え、積極的にそちら中心の生活を選んでしまう子どももいます。
そのほか、場合によっては、発達障害や神経症など、特別なケアが必要な状況であることもあるため、注意が必要です。
適切に対処して長期化しないように。不登校の中高生に家庭ができること
不登校への対処に焦りは禁物ですが、あまりに長期化すると、本人がつらくなってしまいます。できる範囲で早めに手を打つことが大切であるものの、複雑に絡み合う不登校の原因を、家庭の対処だけで解消することは困難です。学校や各種機関と連携しながら、一歩ずつ解決を目指しましょう。
学校に相談する
子どもが不登校になったときには、まずは学校に相談することが不可欠です。担任のほか、養護教諭(保健室の先生)やスクールカウンセラーなどが協力して、対処法を考えてくれます。学校内における人間関係のトラブル解消へ動いてくれたり、不登校中の学習についてアドバイスをくれたりするでしょう。
公的・民間の支援機関に相談する
不登校の生徒を支援している学校以外の機関に相談することもできます。本人だけでなく、保護者の悩みを聞いてもらうことも大切です。
公的機関の例では、教育委員会の「教育支援センター(適応指導教室)」が、不登校に関する相談を受け付けています。また、不登校の生徒が通所してカウンセリングや教科指導、体験活動などの指導を受けることも可能です。
民間の機関では、不登校を支援しているNPOやフリースクールが代表的です。
これらの機関は、通っている学校から紹介してもらえることもあります。場合によっては、不登校になった本人がそうした機関へ通った日数を、出席扱いにしてもらうことも可能です。
特別なケアが必要な場合は、心療内科や精神科などの医療機関を受診するのがよいでしょう。
家庭でサポートする
家庭では、不登校になった本人が、自分に対する自信を持てるようにサポートしていきます。学校に行きたがらなくなったら「休んでもいいよ」と声を掛けたり、不登校の間には好きなことに没頭させてあげたりと、子どもの現状を受け入れることが大切です。
子どもの状況によっては、学ぶことへ興味を持たせたり、規則的な生活リズムを身に付けられるように促したりすることも重要になります。学校に間に合う時刻に起きられるようにしてみたり、決まった家事の手伝いをお願いしたり、自主学習を数分でもしてみたりと、小さな目標を設定して一つずつ達成していけば、自信にもつながるでしょう。
そして、子どもが「通っていた学校に戻る」「転校する」「フリースクールへ通う」などの選択をできるよう、少しずつ情報を提供します。最終的に本人が決断したら、その選択を尊重するようにしましょう。
「通信制高校で自信を取り戻しました」不登校を乗り越えた通信高校生のエピソード
不登校への具体的な対処として、多くの人が選んでいるのが、通信制高校に入学するという選択肢です。
ここでは、明聖高校で不登校を克服した通信高校生の体験談をご紹介しましょう。
通信高校生Tさん(女性)の体験談
Tさんは、中学2年生のときに転校したことがきっかけで、不登校になりました。生活スタイルや学習環境の変化に負担を感じてしまったことが、原因だったのではないかとTさんはいいます。中学卒業後は公立の全日制高校へ進んだものの、やはり学校に行くことができませんでした。医療機関を受診し、カウンセリングも受けていましたが、やはり登校は難しい状況でした。
やがて、担任の先生から通信制高校への転校(転入)を勧められました。母親と複数の学校を見学し、その中でもキャンパスや先生、生徒たちの雰囲気に魅力を感じた明聖高校を選びました。スクーリングの日数が月2回程度と少なめだったことも決め手だったといいます。
先生のサポートもあり、Tさんは入学後、休まずスクーリングに出席できました。そのことで「自分でも学校に通えるんだ」という自信を取り戻したそうです。その後は自由な時間を使ってアルバイトを始めるなど、自発的にさまざまなことへ挑戦できるようになりました。自宅での学習やレポート作成にも積極的に取り組み、学業とアルバイトの両立ができているといいます。
今では、エステティシャンになりたいという将来の夢もできました。卒業後は美容の専門学校に進学したいと考えているそうです。
通信制高校生活を通じて前向きになることができ、不登校を克服したTさんのエピソードには、とても勇気づけられますよね。なお、「一度は全日制高校に進学したものの、やはり通えなくなった」という人が、全日制高校から通信制高校に転入するケースもとても一般的です。
まとめ
不登校を解決するためには、学校や支援機関に相談しながら、本人が少しずつ自信を取り戻せるようにすることが大切です。そのように本人が自分のペースで前進していける環境が、通信制高校には整っています。本人がベストな選択をできるよう、家庭でサポートしていきましょう。
※参考URL
平成 30 年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について(文部科学省)[別窓]
不登校児童生徒への支援に関する最終報告~一人一人の多様な課題に対応した切れ目のない組織的な支援の推進~(文部科学省)[別窓]
不登校児童生徒への支援に関する中間報告(文部科学省)[別窓]
不登校への対応について:文部科学省[別窓]
不登校に関する実態調査 平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書[別窓]
明聖高等学校は、千葉・中野にキャンパスを構える通信制高校です。全日コース・全日ITコース・通信コース・WEBコースに分かれており、一人ひとりに合わせた高校生活を過ごすことができます。