高校には、年度初めに1年生が一斉に入学する「新入学」以外に、「転入学」「編入学」という入学の方法があります。通信制高校も例外ではなく、年度やカリキュラムの途中に転入学・編入学することが可能です。
今回は、通信制高校の転入学・編入学とはどのような仕組みなのか、どのような人が通信制高校に転入学・編入学しているのかについて解説していきましょう。

転入学と編入学の違い

通信制高校を含む高校の転入学・編入学は、それぞれ次のような仕組みになっています。ポイントは、対象者の違いです。

転入学

現時点で高校に在籍している生徒が、学年はそのままで別の高校に転校することです。ドラマや漫画などで目にする「転校」がこの「転入学」です。
転入学の仕組みを使えば、別の高校に移ろうとするとき、「在籍している高校を退学して、一般入試を受け、また1年生からやり直し」という必要がなくなります。

編入学

高校を中退した人や、海外から帰国・移住してきた人、高等専門学校(高専)などに在学している人が、すでに修得している単位を活かして、高校に入学する仕組みです。
例えば、1年生の途中で高校を退学した場合は、修得単位やカリキュラムの関係で編入学できず、1年生の初めからやり直さなければならない可能性が高くなります。

転入学・編入学できる時期は学校によって異なる!

高校に途中から入学できる転入学や編入学ですが、できる時期は学校によって異なります。
例えば、都立の通信制高校でいうと、転入学できるのは各学期の最初(4月、9月、1月の3回)、編入学できるのは学年の始め(4月に1回)のタイミングです。
 
私立の明聖高校では、転入学試験は、月1回(5月~1月)実施で、4月編入学試験は2月~3月に実施しています。その他、転入学・編入学を随時受け付けている通信制高校もあります。
行きたい高校にいつでも転入学・編入学できるわけではないことは注意しておきましょう。
 
▼通信制高校への編入学についての詳細はこちら
高校を中退しても編入学できる?中退者を受け入れてくれる高校を紹介 | 通信高校生ブログ

通信制高校へ転入学・編入学する際の条件

通信制高校へ転入学・編入学するためには、先ほどご紹介した条件以外に、いくつかの条件を満たさなければならない場合があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

住んでいる地域(居住地域)

一般的な公立の通信制高校では、その都道府県内に住所や勤務地があることが条件です。
これに対して私立の広域性通信制高校は、日本全国47都道府県どこの地域からでも転入学・編入学ができる高校もあれば、限られた都道府県の地域から転入学・編入学が可能となっている高校もあるので、詳細は各高校に確認しましょう。

年齢

入学する前の年度末までに満15歳になっていることが高校入学の条件です。そのため、ほかの高校から転入学しようとしている人や、高校を中退して編入学しようとしている人であれば問題なくクリアできます。
なお、年齢の上限はありません。高校を中退して年数が経っていても、基本的には問題なく編入学することが可能です。

教育課程や修得単位

すでに修得している単位と、転入学・編入学を希望する高校の今後の教育課程(カリキュラム)を見比べた結果、その高校で問題なく学習を進められ、卒業できることも条件です。条件を満たしているかどうかは、自分では判断するのが難しいため、転入学・編入学を希望する高校に相談しましょう。

転入学・編入学時の単位の引き継ぎについて

通信制高校は「単位制」の学校です。学年制の普通科高校から、学年の途中で通信制高校に転入学する場合、それまでに履修していた教科・科目の単位を引き継ぐことができます。1年生の9月まで前の高校に在籍し、10月から通信制高校の1年次に転入学した場合は、その年度の3月に1年次を終えることも可能です。
 
一方、学年制の高校を1年生の途中で中退した場合は、少し状況が変わります。学年制の高校は、1年ごとに単位修得認定をするのが原則なので、1年生の途中で中退すると単位をひとつも習得できていないことになるのです。そのため、通信制高校に入学する際は「編入学」の扱いとなり、1年次の4月からスタートすることになります。
 
▼転入学・編入学について詳細はこちら
通信制高校の卒業までにかかる年数は?どんな人が通う?転入学・編入学時の例も紹介 | 通信高校生ブログ

通信制高校生の50%以上は転入学・編入学!全日制高校から転入学した人も

通信制高校へ転入学・転入学している人は多く、文部科学省の調査によると、通信制高校に在籍する人の51%が転入学生・編入学生です(「高等学校通信教育に関する調査結果について」、2016年時点)。
 
なかには全日制高校から通信制高校へ転入学・編入学(全日制高校を中退後)した人も多くいます。厳密に通信制高校だけを扱ったデータではありませんが、ある調査結果によると、2010年度に定時制高校・通信制高校へ転入学・編入学した生徒のうち、全日制高校から来ている生徒は、1年次で72.5%、2年次で70.0%、3年次で 61.9%、4年次で 51.9%、無学年で85.5%にも上っています(「高等学校定時制課程・通信制課程の在り方に関する調査研究」、2011年)。
 
通信制高校へ転入学・編入学する理由はさまざまです。ある通信制高校の生徒1,000人を対象におこなったアンケート調査によると、転入学・編入学の理由として多かったのは「学力」「学習時間・ペース」「前校での不適応」「友人関係」などでした(「入学状況から見た通信制高等学校生徒の精神健康」、2017年)。
全日制高校に在籍していながらなかなか通えなかったり、最終的に退学してしまったりという人のなかには、これらと同じような悩みを抱えている人もいるのではないでしょうか。
 
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通信制高校と全日制高校の違いは?通学・授業や卒業要件、費用について解説 | 通信高校生ブログ

通信制高校への転入学・編入学の流れ

続いて、通信制高校に転入学・編入学する際の流れを紹介していきます。

入学願書の送付まで

転入学、編入学に際して、必ず必要になる書類が入学願書と調査書です。転入学の場合は他にも、在学中の高校で作成してもらう調査書や、転学照会書、在学証明書なども必要となり、転出する学校にも「転学届」を提出しなければなりません。さらに、入学先の学校によっては、作文などを提出する場合もあります。

審査〜入学手続きまで

通信制高校の入学に際しては、学科試験がなく、出願書類と個人面接で選考がおこなわれるのが特徴です。明聖高校の場合は、毎年4月〜翌1月に転入学試験を実施しており、4月編入学試験は年に1回、2~3月に実施しています。合否結果は郵送で発表され、合格後は入学オリエンテーションに参加します。

学費について

私立高校の場合、学校やコースによって必要な学費は異なります。通信制高校である明聖高校の令和4年度を例にお伝えします。
 
学費の詳細は以下ページからご確認ください。
学費|明聖高等学校(千葉・中野の総合通信制高校)

■全日制コース

全日制コースは週5日登校して基礎を学ぶコースです。学校行事や部活動も充実しており、登校時は制服を着用します。3年間の学費合計は、2,410,000円です。

通信コース・WEBコース

通信コースは、自主学習と年間約20日のスクーリングで学習するコースです。WEBコースは動画授業の視聴と確認問題の学習コンテンツを備えたコースで、年間4~6日程度のスクーリングがあります。3年間の学費合計は、610,000円です。
 
学校生活に必要な費用に関しては「高等学校等就学支援金」をはじめ、さまざまな負担軽減制度を利用することができます。また、独自の学費減免制度を運用している学校もあります。
明聖高校の場合は、学費を減免できる額は世帯年収によって異なり、世帯年収の目安が250万円以上350万円未満の場合は120,000円、250万円未満の場合は180,000円を減免が可能です(いずれも年額)。学費減免制度は全日コースのみが適用対象となります。
 
▼通信制高校の学費について詳細はこちら
通信制高校の学費が免除・無償になる?支援金制度や奨学金について紹介 | 通信高校生ブログ

転入学・編入学してからどのくらいで卒業できる?

一般的な全日制高校は「学年制」という仕組みを採用しており、学年ごとのカリキュラムに沿って3年在籍すれば卒業できます。一方、通信制高校の多くは「単位制」となっていて、単に在籍するだけでは単位を修得できず、卒業ができません。
 
通信制高校を卒業するためには、74単位以上を習得すること、30時間以上の特別活動に出席することが必要です。さらに、卒業までの年数に関しても規定があります。高校に3年以上在籍することが卒業要件になっているため、1年間で多めに単位を修得して、3年未満の短期間で卒業することはできません。既定の単位数を習得できなければ、卒業までの期間は3年よりも長くなる可能性があります。
 
転入学の場合は、前の学校の学年のまま通信制高校に入学することが可能で、習得済の単位もそのまま引き継がれます。編入学の場合は、年度途中での入学が難しいため、新年度を待って入学する形になり、必然的に卒業までの期間が長くなってしまう可能性が高くなります。
 
▼転入学・編入学について詳細はこちら
通信制高校の卒業までにかかる年数は?どんな人が通う?転入学・編入学時の例も紹介 | 通信高校生ブログ

通信制高校への転入学・編入学で解決できる悩み

通信制高校には、全日制高校で悩みを抱えている/抱えていた人が、新しい環境で再チャレンジできるような特徴があります。先ほどご紹介した調査結果の「転入学・編入学の理由」ごとに、詳しく解説していきましょう。

学力の悩みを解決

通信制高校には、学力に自信のない生徒への学習サポートが充実している学校がよく見られます。
例えば、明聖高校では、中学校の範囲の復習など、基礎的な内容から学習できるようになっています。

学習時間・ペースの悩みを解決

通信制高校の多くは毎日登校する必要がなく、自宅学習を中心に自分のペースで学習を進められます。
平日の仕事が終わったあとや休日に集中して学習するといった学習方法も可能なため、高校を中退して仕事をしている人でも無理なく学習を進めることができます。また、心身の健康に不安がある人も、調子のよいときを見計らって、自宅で休憩しながら学習を進められます。

前校での不適応(雰囲気が合わなかった)の悩みを解決

前の学校の雰囲気が合わずに不登校になってしまった人も、少ないスクーリングの機会を活用すれば、少しずつ新しい学校になじめるようになるでしょう。どうしても登校が難しい場合は、WebやDVDなどの教材で学習することで振り替えできる場合もあります。
 
また、明聖高校では、集団での学校生活が苦手な生徒のために、少人数制で指導を受けられる個別学習室を用意しています。

友人関係の悩みを解決

通信制高校にはさまざまな目的を持った生徒が通っているため、例えば、「高卒資格の取得が第一の目標だから、あえて友だちを作らなくてもいい」と考える人もいます。
もちろん、友だちを作りたい人は、行事や部活動などを通じて、ゆっくりしたペースで人間関係を築くことが可能です。
 
また、学校内でいじめが起きないよう、先生の目がしっかり行き届いています。前校で精神的な悩みを抱えてしまった人に対しては、カウンセラーなどが心のケアをしてくれる通信制高校もあります。
 
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