不登校から「学校に戻る」というとき、これまで通っていた中学校や高校に再び通うことにこだわる必要はありません。転校して新しい学校へ通うという選択肢も、有効な解決策のひとつです。
しかし、気を付けなければいけないのは「転校すれば絶対に不登校を克服できる」というわけではないこと。環境を変えてみるのか、今の学校に戻るほうがよいのか、しっかりと考えたうえで決めることが大切になります。
では、具体的にどのような点について考えていけばよいのでしょうか。今回の記事で解説します。

■転校で不登校が解消するかどうかはどう見極める?4つのチェックポイント

いじめや教師との相性、勉強についていけないなど、不登校の要因を転校によって解消できれば、転校先で再び登校できるようになる可能性があるでしょう。
ただし、転校したからといって必ずしも不登校が解決するとは限りません。不登校の要因によっては、転校することでは解決できないものもあるからです。また、例えば「不登校の原因となった生徒がいない学校に移れば登校できるようになるのでは」と考えて転校しても、場合によってはまた不登校になってしまう可能性もあります。

転校を考える場合には、特に次の点に注意しながら、本当に適した選択肢かどうかを考えましょう。

【ポイント1】「転校したい」という本人の意思はあるか

第一に、本人と保護者がよく話し合い、転校するかどうかを一緒に考えることが大切です。
保護者は「転校したほうがいい」と思っていても、不登校に悩む本人は「親しかった友達と離れたくない」「新しい環境で適応していけるか不安」「自信を取り戻すために、どうしても今の学校でやり直したい」と考えている場合もあります。その想いを尊重することなく転校を決めてしまうと、状況が悪化してしまう恐れも。

また、「転校すればまた学校復帰できるはず」という保護者の焦りが伝わると、本人にとってプレッシャーになってしまう可能性もあります。

【ポイント2】転校が本当に不登校の解決策になるのか

不登校の原因が、学校での友人関係や先生との相性など、今在籍している学校に紐づくものである場合は、転校することで不登校の解決につながる可能性が高いです。
一方、本人がそもそも集団生活に苦手意識を持っていたり、学校という場所そのものに不信感を持っていたりする場合には、たとえ転校しても不登校を繰り返してしまうでしょう。本人が「今の学校が合わない。転校したらまた学校に行く」といっている場合にも、本当に今の学校に根本的な原因があるのか、客観的に見極める必要があります。

【ポイント3】転校してもすぐに学校復帰できない場合があることを認識できているか

たとえ転校が本人にとって効果的な解決策であったとしても、始めはなかなか登校できないケースも珍しくありません。心のエネルギーがまだ十分たまっておらず、生活リズムが乱れがちだったり、いろいろなことへの意欲があまり持てなかったりする場合には、すぐには学校復帰できない可能性が高いでしょう。
また、転校という形で環境を変えることそのものにも、多くのエネルギーが必要です。そのため、転校したばかりのときは、学校に行けたり行けなかったりを繰り返すケースもあります。
これらの点を、保護者も本人も認識しておく必要があるでしょう。

【ポイント4】転校以外の選択肢は考えたか

転校しなくても、今の学校以外の環境に身を置いて学習することは可能であるケースもあります。
例えば、中学校では欠席日数が多くなっても、進級や卒業の認定の際に柔軟な対応をしてくれるケースがほとんどです。したがって、在籍している学校と相談したうえで、適応指導教室やフリースクールに通所・通学したり、家庭教師や個別指導塾を利用して学習したりする方法もあります。場合によっては、転校よりも本人への負担が少なく、転校と同じくらい効果が期待できる解決策もあるかもしれません。

転校するかしないかの二択にするのではなく、それ以外の方法を本人と共にしっかり吟味したうえで決定することが非常に重要です。

■前向きな転校は不登校を乗り越えるきっかけに!期待できるメリット

不登校解消のために安易に転校を決めるのは好ましくありませんが、人によっては、転校が不登校を克服する重要なきっかけになることもあります。
具体的に、転校がどのようなメリットをもたらす可能性があるのかを見てみましょう。

●学校に紐づいた不登校の原因から離れられる

先ほども触れたように、在籍している学校でいじめや嫌がらせを受けたり、先生との関係で嫌な思いをしたことが不登校の原因である場合には、転校が有力な選択肢になります。転校してそれらの問題から離れることができれば、学校にも復帰しやすくなるでしょう。

●新たな気持ちで学校生活を再開できる

「できれば学校に戻りたいけれど、学年や学期の途中で戻りづらいな」「長い期間休んでいたから、今さら戻るのも何となく気まずい」と本人が躊躇してしまっているときには、転校が学校生活を再開するきっかけになります。
転校先のクラスメイトは、転校生が不登校を経験していたことも知らないかもしれません。まったく新しい環境で、新しい自分として、新しい学校生活を始められるでしょう。その中で自信を取り戻せるケースも少なくありません。

●異なる環境での刺激が成長につながる

不登校の間にエネルギーがたまってくると、本人は学校復帰・社会復帰に向けてさまざまな刺激を求めるようになります。転校すれば、こうした刺激をいっそう感じられるようになるかもしれません。多くの出会いや、異なる環境での経験が、不登校を乗り越えた経験と相まって、本人の人間的な成長につながることもあります。

■転校するための流れ・手続きをチェック!不登校の生徒に配慮してくれる場合も

転校を決めたら、在籍している学校に相談したり、具体的な転校先を決めたりしたのちに、転校の手続きを進めましょう。最近では、公立の中学校・高校でも、不登校を理由とした転校に柔軟に対応してもらえるケースが多くなっています。
手続きは中学校と高校で異なり、中学校の場合は、在籍校・転校先が公立か私立かによっても変わってきます。また、公立中学校が絡む場合は、地域によって手続きの流れが異なる場合もあるため、必ず該当の自治体の窓口へ確認してください。

●中学校の場合

・公立中学から別の公立中学へ

同じ学区内で転校する場合は、居住している市町村の「学事課」「学務課」などの窓口で、「指定校変更」の手続きをします。ほかの市町村にある学校へ転校する場合は、転校先の市町村の窓口で手続きが必要です。自治体によっては、保護者と本人が教育委員会の担当者などと面談をするケースもあります。

・私立中学から公立中学へ

在籍している私立中学で在学証明書を発行してもらい、居住している市町村の学事課などの窓口で手続きします。

・公立中学または私立中学から、私立中学へ

私立中学の中には、1学期および2学期末に転入生の募集を行っている学校があり、転入試験に合格すれば、その次の学期に転校することができます。提出する書類は、願書、現在籍校の在学証明書、成績証明書などの書類などです。試験内容は学校によって異なりますが、例えば、千葉県では英語・数学・国語の学科試験と、面接を受けるパターンが多くなっています。

●高校の場合

まず、高校で転校する場合は、万が一転入試験に不合格だった場合、前の在籍校にそのまま在籍できるか、それとも除籍になるかを事前によく確認しておきましょう。除籍になった場合、再度高校に入学しようとするためには、編入試験を受けることになります(1年生の場合は、一般入試の再受験)。

手続きの流れは、私立中学に転校する場合とほぼ同じです。各学期末に転入生募集に申し込み、試験を受けます。なお、高校の場合は、時期によって応募できる学年が限られている場合もあるため、注意が必要です。