現在通っている高校の雰囲気が合わず、学校を退学しようかどうか悩んでいる人もいるのではないでしょうか。しかしながら、退学はその後の進路や将来の自分の姿が見えないと、なかなか決断が難しい問題です。
今回は、高校を退学したあとの進路実態とデメリットを解説します。また、中途退学(中退)後の選択肢も紹介するので、迷っている人は将来の自分の姿を想像しながら参考にしてみてください。
高校退学・中退者のその後の進路実態
文部科学省が発表した「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」によると、高校を途中で退学した中退者数は、2023年度で4万6,238人です。これは、調査時点で高校に在学している人の1.5%にあたります。
ここからは、内閣府が平成24年に発表した「若者の意識に関する調査(高等学校中途退学者の意識に関する面接調査)報告書」をもとに高校を中退したあとの進路実態を解説します。
高校退学・中退後はアルバイトが多い
高校中退者が現在していることのなかでは、アルバイトでフリーターとして働いている人が43.4%ともっとも高い割合です。
出典:若者の意識に関する調査(高等学校中途退学者の意識に関する面接調査)報告書|内閣府 子ども若者・子育て施策総合推進室 をもとに作成
別の高校や専門学校、大学などに在学している人たちは、合計で30.6%となっており、一定数が編入学や進学していることがわかります。
なお、回答者が高校を中退してからアンケートに回答するまでの期間は一定ではなく、3ヵ月以内の人もいれば、最大で3年経っている人もいます。そのなかで、中退から2年以内の人が87.8%ともっとも高い割合です。
「特になにもしていない」と回答した人はわずか4.0%に留まっており、多くの高校中退者が3ヵ月から3年の間に、進学や就職、その他の自分に合った進路を選択しているといえます。
高校退学・中退を後悔している人もいる
多くの高校中退者が各々の進路を選択し、後悔せずに歩めている一方で、以下のように中退したことを後悔している人もいます。
出典:若者の意識に関する調査(高等学校中途退学者の意識に関する面接調査)報告書|内閣府 子ども若者・子育て施策総合推進室 をもとに作成
中退を後悔していない人は、その後の進学や就職などのさまざまな選択肢で成果を上げ、それを実感している状況です。
後悔せずに高校中退後の進路を進めた人のなかには、努力を積み重ねたり、時間をかけて自分に合った進路を探したりと、真剣に向き合った人もいるはずです。
そのため、高校を退学して後悔しないためには、今からじっくりと自分や進路と向き合う必要があります。
約8割が高卒資格が必要だと考えている
高校中退者の約8割は、中退後に高校卒業資格が必要だと考えています。
出典:若者の意識に関する調査(高等学校中途退学者の意識に関する面接調査)報告書|内閣府 子ども若者・子育て施策総合推進室 をもとに作成
同調査では、高校中退を後悔していない人でも、67.5%が高校卒業資格が必要だと考えていることも記載されています。その理由は、主に大学・専門学校への進学を目指す人にとっては、高校卒業資格が必要だからです。
アルバイトを探すときも求人情報に「高卒以上」と書かれているケースが多く、働くにしても高校卒業資格が必要だと実感しているようです。
もちろん中卒でもしっかりと働いている人もいるので、必ず高校卒業資格を取得しなければならないわけではありません。
しかし、少しでも「高校卒業資格が必要かも」と思うのであれば、別の高校へ転入学・編入学したり、高卒認定試験を受験したり、高校卒業資格を取得する選択肢も考えてみてください。
高校退学・中退で生じるその後のデメリット
高校を退学したあとのデメリットを知っておくと、次の進路を考えるときに役立ちます。ここでは5つのデメリットを紹介するので、参考にしてみてください。
大学・専門学校に進学するハードルが上がる
大学に入学するために必要な代表的な資格は、以下のとおりです。
● 高校卒業資格(高等学校又は中等教育学校を卒業した者)
● 高卒認定(高等学校卒業程度認定試験に合格した者)
出典:大学入学資格について|文部科学省
高校を卒業すると高校卒業資格を取得でき、自然と大学入試を受けられる状態になります。しかし、高校を中退すると高校卒業資格を得られず、大学入試を受けられません。
そのため、高校を退学したあと大学に進学したい場合、高校卒業資格や高卒認定の取得を目指して、進路を決める必要があります。
就職で応募できない企業が増える
高卒以上向けと比較して中卒向けの求人数は少なく、募集している業種も偏る傾向があるため、高校を中退して中卒扱いになると応募できない企業が増えます。
求人サイトや情報誌を見てみると、中卒を対象とした求人は「宿泊業、飲食サービス業」「卸売業、小売業」などの業種が多い傾向です。
一方、高卒以上の場合、「建設業」「製造業」「運輸業・郵便業」「生活関連サービス業・娯楽業」「医療・福祉」など、幅広い業種で募集されています。
注意したいのは、高校中退後に高卒認定試験に合格しても、学歴が高卒にならないことです。そのため、別の
高校に進学して卒業する、または高卒認定を取って大学へ進学・卒業するといった選択が必要です。
友達との関係が維持しにくくなる
高校を退学すると、在学中にできた友達と会う機会が減り、関係が続きにくくなることがあります。
休日に会うことは可能でも、生活リズムが変わるため、以前のように毎日顔を合わせたり、放課後に遊んだりといった関わり方は難しくなるでしょう。
ただし、「友達と離れたくないから」と無理に合わない高校に通い続けるのは、自分を苦しめることにもなりかねません。人間関係の変化も含めて考えたうえで、自分にとってよりよい道を選ぶことが大切です。
コミュニケーション力が低下する場合がある
退学や中退をすると、友達だけでなく、部活の先輩・後輩や先生などとの関わりも少なくなります。その結果、人と話す機会が減り、コミュニケーション力が落ちてしまうこともあります。
すぐに新しい環境で人間関係を築ければ問題ありませんが、しばらくは家で過ごす人もいるでしょう。そんなときは、家族や気の合う友達とできるだけ関わるようにすると、次の環境に移った際の不安を軽くできるはずです。
進学・就職に関する情報を得にくくなる
高校を中退すると、進学や就職に関する情報を学校から得ることができなくなります。そのため、自分で調べたり、ハローワークに足を運んだりといった行動力が必要になります。
スマートフォンを活用すれば、情報収集は可能ですが、インターネット上には信頼性の低い情報もあるため注意が必要です。特に気になる求人を見つけたときは、企業の所在地や代表者などを確認したり、保護者に相談したりして、トラブルを未然に防ぎましょう。
なお、以下の記事では、高校を辞めたいと思ったときに知っておいてほしいことを解説しているので、あわせてご覧ください。
関連記事:高校・学校を辞めたい…と思ったときに知っておきたいデメリットや解決方法|通信高校生ブログ|明聖高等学校
高校退学・中退のその後!選択肢はたくさんある
高校を退学したあとの選択肢は、思っているよりもたくさんあります。できる・できないを考える前に、まずはどのような選択肢があるのかを確認し、将来のイメージを広げてみてください。
高卒認定資格を取得する
高卒認定とは、試験に合格することで「高校卒業と同等の学力がある」と認められる資格です。正式な学歴は中卒のままですが、大学や専門学校の受験資格が得られます。
高校を中退し、そのまま進学を目指す場合は、高卒認定の取得が一つの選択肢です。自力での学習が必要な点はデメリットですが、合格すれば進路の幅が広がります。
高校卒業資格と高卒認定、どちらを取得すればよいかわからない人は、以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:高卒資格と高卒認定、どちらを取得するほうがいい?取得方法や証明内容の違いを解説|通信高校生ブログ|明聖高等学校
別の学校に進む
今の高校が合わないと感じたときは、別の高校への転入学という選択肢があります。退学せずに転校すれば、履歴書に「〇〇高校 中退」と書かずに済むのもメリットです。
環境を変えることで、学びやすさや気持ちが前向きになる場合もあります。
転入学については、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
関連記事:通信制高校へ編入学・転入学するには?違いと条件、流れを解説|通信高校生ブログ|明聖高等学校
ここからは、高校中退後に進める別の学校について解説します。
全日制高校に転入学する
全日制高校へ転入学すれば、今の高校を退学せずに卒業を目指せます。授業を受けながら進路指導も受けられるため、独学より安心です。
ただし、中退や転入の時期によっては、学年が下がることがあります。公立高校は基本的に4月入学のため、年度途中で中退した場合は、翌年4月の編入になるケースが多いです。
一方、私立高校には10月編入を受け入れている学校もあるため、公立・私立どちらも調べてみましょう。
なお、全日制高校への転入には条件があるため、事前に確認が必要です。
通信制高校に転入学する
通信制高校は、オンライン授業や自宅学習を中心に単位を修得し、高校卒業を目指せる学校です。スクーリングは年に数回で、自分のペースで学べるのが特長です。
「毎日通うのがつらい」「全日制が合わなかった」と感じていた人にも向いています。転入学のハードルは低く、学力試験なしで面接や作文だけの学校が多くあります。
例えば、明聖高校のWEBコースでは、在籍期間や取得単位を引き継げるため、負担を抑えて転入できます。常時受け入れをしている点も安心です。詳しくは、以下のページをご覧ください。
転入学・編入学をお考えの方へ|明聖高等学校WEBコース
定時制高校に転入学する
定時制高校は、夜間や昼間など特別な時間帯に授業を行う高校です。夜間定時制では日中に働きながら通う生徒も多く、1日の授業時間が短いため、卒業までに4年かかるのが一般的です。
最近では、昼間定時制や午前・午後・夜間の3部制を取り入れる学校もあり、ライフスタイルに合わせた通い方ができます。
行事や学校生活を楽しめる点は全日制と変わりませんが、働きながら通うには体力が必要です。授業への出席が卒業要件になるため、無理のないスケジュール管理も大切です。
定時制高校について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
関連記事:定時制高校とは?授業の時間帯や卒業までの年数、学費や就職率を解説|通信高校生ブログ|明聖高等学校
高等専修学校に入学する
高等専修学校は、就職に役立つ実践的な知識や技術を学べる学校です。調理師や建築士、測量士など、国家資格やその受験資格が得られるコースもあります。
卒業すれば大学入学資格も得られますが、高校卒業資格は取得できないため、学歴は「中卒」のままとなります。
専門性の高い内容を学べる一方で、入学後に進路変更がしにくい点や、国語や数学といった一般科目が少ない点には注意が必要です。
卒業後すぐに専門職に就きたい人にとっては、実践的に学べる魅力的な選択肢です。
高等専門学校(高専)に入学する
高等専門学校は、卒業後即戦力として働ける、実践的な技術者を養成することを目的とした5年制(商船学科は5年6ヵ月)の高等教育機関です。
高専の卒業後は短期大学卒業生と同じように「準学士」の称号が付与されます。
高度で専門的な教育を受けられるうえ、卒業後は即戦力として重宝されるメリットがある一方、5年間通い続けるための体力や忍耐力が必要です。
海外に留学する
高校中退後は、海外へ留学する方法もあります。英語力が身につく、日本では持てなかったような視野が広がるなどのメリットがあります。ただし、海外の学校で単位を修得できても、日本の高校卒業資格を取得できるわけではありません。
また、海外留学の手段として高校中退を考えているのであれば、じっくり考えることをおすすめします。以下のように、高校に通いながら海外留学する方法があるからです。
● 全日制高校と提携の留学先に留学する
● 全日制高校を休学して留学する
● 通信制高校に通いながら留学する
最終的に大学・専門学校への進学を考えているのであれば、高校を中退せずに海外留学するほうが効率的な場合もあります。
以下の記事では、通信制高校に在学しながら留学するメリットを解説しているので、参考にしてみてください。
関連記事:通信制高校なら留学しながら高校卒業を目指せるメリットが!原級留置(留年)についてもお答えします|通信高校生ブログ|明聖高等学校
就職する
高校中退後は、以下のように働いて生活する方法もあります。
● 正社員として就職する
● アルバイトとして働く
● 自分で会社を作る
自分で働いて収入を得られるため、自立した生活を送れます。また、働いて学費を貯めてから、高校や高等専修学校に入りなおすことも可能です。
ただし、高校中退時点では中卒であるため、就職先の幅が狭いデメリットがあります。将来的に、高校卒業資格を取得するのであれば、定時制高校や通信制高校で学びながら働く選択肢も考えてみましょう。
高校退学・中退を決めるまでにやりたいこと
高校退学後に後悔しない進路を選択するには、中退を決める前に、以下の順に沿って自分の考えや周りの人の意見を整理してみてください。
高校退学・中退したい理由を整理する
まずは、高校を退学したい理由を整理してみましょう。
文部科学省が発表した「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」によると、高校中退者の退学理由のうち割合が高い3つは以下のとおりです。
● 学業不振:6.8%
● 学校生活・学業不適応:34.2%
● 進路変更:41.3%
出典:令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について|文部科学省
もしかすると、あなたも上記の理由で高校退学を悩んでいるかもしれません。しかし、これらは高校を中退しなければ解決できない問題なのでしょうか。
例えば、学業不振が理由なら、現在通っている高校を退学せずに小中学校の学び直しができる通信制高校へ転入学する方法があります。
このように、今抱えている問題を解決する手段として「退学・中退」以外にも方法があるかもしれません。そのため、ほかの方法で問題を解決できないかどうかを考えることが大切です。
もし現在通っている高校が楽しくないのであれば、以下の記事も参考にして転入学・編入学を検討してみてください。
関連リンク:高校が楽しくないと感じるときに考えたい理由と転入学・編入学について|通信高校生ブログ|明聖高等学校
退学・中退以外の解決方法を一度洗い出す
次に、解決方法を洗い出すために、自分がどうしたいかを考えます。
例えば「学業不振」が理由なら、「成績を取り戻したい」のか「今の成績のままでいいからついていける授業を受けたい」のかで選ぶべき方法が変わります。
成績を取り戻したいなら、塾や家庭教師を利用して学習の補強を図る必要があります。一方、ついていける授業を選ぶなら、コースや学校を変える必要があるかもしれません。
どうしても環境を変えたい場合も、退学や中退だけではなく、転入学の選択肢を知っておくと行動が変わるはずです。転入学とは、現在通っている高校を退学せずに、次の学校へ籍を移すことを指します。経歴に高校退学を残さず、スムーズに学校を変えることが可能です。
信頼できる人に相談する
ある程度自分で解決方法を導き出せても、自分一人では決めず、保護者や身近にいる信頼できる人の意見も聞いたほうがよいでしょう。自分より長く生きている人の意見を参考にすることで、後悔しない選択ができる可能性が高まるからです。
可能であれば、学校の先生にも相談してみると、自分では思いつかない新しい選択肢を教えてくれる可能性もあります。信頼できる人の意見も聞きながら、自分に合った選択肢を導き出しましょう。
自分に合った選択肢を選ぶ
最後は、自分の考えと周りの意見を踏まえて、「本当に高校を退学するかどうか」「退学するならその後の進路はどうするのか」を決めます。
このとき、あらためて「現在のままで問題は解決できないか」と「環境を変えるなら転入学はどうか」など、しっかり考えることが大切です。各選択肢のメリットやデメリットを比較して、自分に合った道を選びましょう。
まとめ
高校を中退しても、進学や就職など各々に合った道を選ぶことが可能です。一方で、中卒扱いになる関係で就職先が狭まったり、大学や専門学校に進学できなくなったりというデメリットもあります。
そのため、信頼できる人の意見も聞きながらすぐに高校中退を決めず、じっくりと自分の考えを整理することが大切です。別の学校への転入学や海外留学など、幅広い選択肢のなかから、自分に合った道を選びましょう。
参考URL:
令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について|文部科学省
若者の意識に関する調査(高等学校中途退学者の意識に関する面接調査)報告書|内閣府 子ども若者・子育て施策総合推進室
大学入学資格について|文部科学省
中卒・高校中途退学した方やその保護者の方へ|愛知労働局|厚生労働省
転入学・編入学をお考えの方へ|明聖高等学校 WEBコース
高校・学校を辞めたい…と思ったときに知っておきたいデメリットや解決方法|通信高校生ブログ|明聖高等学校
高卒資格と高卒認定、どちらを取得するほうがいい?取得方法や証明内容の違いを解説|通信高校生ブログ|明聖高等学校
定時制高校とは?授業の時間帯や卒業までの年数、学費や就職率を解説|通信高校生ブログ|明聖高等学校
通信制高校へ編入学・転入学するには?違いと条件、流れを解説|通信高校生ブログ|明聖高等学校
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高校が楽しくないと感じるときに考えたい理由と転入学・編入学について|通信高校生ブログ|明聖高等学校
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