不登校は、誰に起こってもおかしくない問題です。特に近年では、新型コロナウイルス感染症の影響で学習環境や家庭環境の変化が起き、これまで以上の支援が求められています。そこで政府は2021年(令和3年)4月、新たな大綱を打ち出しました。今回は政府の取り組みや民間の支援、各学校の支援にどのようなものがあるのか最新情報をまとめました。

不登校生徒の現状と支援の必要性

不登校生徒の現状と原因

不登校の定義は、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」の文部科学省省令で次のように定められています。
『何らかの心理的、情緒的、身体的若しくは社会的要因又は背景によって、児童生徒が出席しない又はすることができない状況(病気又は経済的理由による場合を除く。)』

さらに、文部科学省が毎年度おこなっている調査では、法律上の「不登校」の定義にあてはまり、なおかつ30日以上欠席した児童生徒を「不登校」の調査対象としています。
文部科学省が発表した「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると、2020年度(令和2年度)の高等学校における不登校生徒数は43,051人にのぼります。また小・中学校を合わせた不登校児童生徒数は8年連続で増加しており、過去最多の196,127人となっています。
 
登校の現状について詳しくは、下記の記事をご参照ください。
不登校とはどのような状態?5つのタイプ別に対処法を紹介

政府による支援や仕組みづくりとは

政府は2010年(平成22年)4月に施行された「子ども・若者育成支援推進法」を軸に、子どもや若者への支援を行っています。ただ、同法による施策は一定の成果が見られる一方で、コロナ禍の子どもや若者の不安は高まり、状況は深刻さを増しています。そこですべての子どもや若者が自分の居場所を見つけ、成長・活躍できる社会を目指すべく、政府は2021年(令和3年)に新しい「子供・若者育成支援推進大綱」を打ち出しました。
不登校の子どもに関係する大綱の内容を一部ご紹介します。

基本的な方針

  1. すべての子ども・若者の健やかな育成
  2. 困難を有する子供・若者やその家族の支援
  3. 創造的な未来を切り拓く子ども・若者の応援
  4. 子供・若者の成長のための社会環境の整備
  5. 子供・若者の成長を支える担い手の養成・支援

対策の例

  • 自殺、虐待、貧困などへの対策(SOSの出し方や受け止め方を学ぶ、多角的な調査研究)
  • 相談体制(専門家以外の参加、SNSの活用)
  • 多様な居場所づくり(サードプレイスを増やす、交流活動の機会の充実)
  • 家庭教育支援(家族で過ごす時間、親が子どもと向き合う時間を増やす)
  • 地域と学校の協働(日常的なボランティアや活動への参加)
  • インターネット利用の適正化(フィルタリング利用率の向上、ペアレンタルコントロール)

参考元:
内閣府「子供・若者育成支援推進大綱~すべての子供・若者が自らの居場所を得て、成長・活躍できる社会を目指して~」

不登校学習支援の必要性

不登校を経て、中途退学をしてしまう生徒もいます。中途退学の理由は人それぞれです。勉強についていけなくなったことが原因の生徒もいれば、人間関係の悩みで学校に通うのが苦痛に感じるようになり、中途退学を選ぶ生徒もいます。
どのような理由で不登校になったとしても、学校に登校しない時間は不登校生徒の心身を休めるために必要でしょう。しかし、高校を中途退学して別の高校へ転入学・編入学しなかった場合のデメリットについても理解しておかなければなりません。大学への進学が難しくなったり、就職先の選択肢が狭まったりなど、中途退学は進学・就職に不利になってしまうのです。不登校になった場合は、その後どのように学習していくかも考えておかなければなりません。
 
その他、中途退学に際して覚えておきたいことについては、下記の記事をご参照ください。
高校中退の理由で多いのは?就職活動でどう伝える?再スタートを切るための向き合い方

不登校生徒への学習支援の現状や施設の例

政府は、教員の資格向上・設備整備などを実施

政府は不登校生徒への支援に力を入れています。教育委員会を中心とした教員の資質向上施策もその一つです。この施策は、初任者研修や生徒指導・教育相談研修などの充実をはかり、教員が不登校に関する理解や知識をつけていく取り組みです。他に、教育支援センターを中核とした体制整備や保護者への支援など、地域の実情に応じた仕組みが設けられています。

人と対面することなく学習できる「ネット高校」

学校に通うのが苦痛で不登校になっている方には、「ネット高校」への転入学・編入学という選択肢もあります。ネット高校では、スマートフォンやパソコンを使って、人に会わずに学習を進めることが可能です。授業の種類は大きく分けて、インターネットで視聴する動画授業と、学校に登校して受ける対面授業の2つです。

明聖高校のWEBコースでは、スマートフォンやパソコンを使ったインターネット学習を中心に学習を進めています。動画授業のほか、通信制高校の卒業に必要なレポートの作成・提出もインターネット上でおこないます。学校に登校するのは年4日~6日程度です。
 
その他、ネット高校について詳しくは下記の記事をご参照ください。
ネット高校の授業はどう受けるの?内容は難しい?実例を紹介!

不登校生徒に特化した家庭教師

学校に通うのが難しい場合、家庭教師サービスを利用するのを検討してもよいかもしれません。家庭教師サービスのなかには、不登校生徒へのサポートに特化したものも存在します。このようなサービスを利用すれば、家族以外の第三者に学習面を見てもらえる安心感があるでしょう。

ただし、家庭教師サービスはあくまで学習の補助が目的で、家庭学習だけでは高校卒業資格を取得できません。高校卒業資格を得るためには、高校卒業のための要件を満たして卒業するか、もしくは文部科学省による「高等学校卒業程度認定試験」に合格する必要があります。
 
高卒資格と高卒認定について、詳しくは下記記事をご参照ください。
高卒資格と高卒認定、どちらを取得するほうがいい?取得方法や証明内容の違いを解説

不登校生徒へのメンタルサポートをおこなっている施設の例

児童相談所(児童相談センター、児童家庭支援センター)

児童相談所では、18歳未満の子どもに関する相談を受け付けています。相談内容は、子育ての悩み、しつけや虐待、発達障害や子どもの行動上の悩みなど多岐にわたります。相談を受けるスタッフは児童福祉司・児童心理司・医師・保健師など専門家です。
児童相談所でおこなう援助の内容は

  • 相談に対する助言
  • 専門スタッフによる継続的な援助
  • 緊急に保護を要する場合の一時保護
  • ボランティアの派遣

などです。家に閉じこもりがちな子どもにお兄さんお姉さん世代のボランティアの派遣を相談することもできます。
 
全国児童相談所一覧について詳しくはこちらをご覧ください。
厚生労働省:全国児童相談所一覧

ひきこもり地域支援センター

ひきこもり地域支援センターは、ひきこもりの問題に特化した相談の機関です。各都道府県や指定都市などに設置されており、全国に79ヶ所あります。
支援の内容としては、

  • ひきこもりに特化した相談受付
  • ひきこもり支援コーディネーターによる自立の支援
  • 講演会や研修会の開催

などです。関係機関と連携するなど、ひきこもり支援の拠点となっています。
 
ひきこもり支援センターの詳細や場所について詳しくはこちらをご覧ください。
ひきこもり支援事業
「ひきこもり地域支援センター」の設置状況リスト

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、都道府県や指定都市が運営、または社会福祉法人や特定非営利活動法人などが運営しています。全国に97ヵ所あります。各センターの支援内容は、センターにより異なるので、詳しくはお住まいの地域のセンターにお問い合わせください。

利用者

発達障害のある本人やその家族

主な内容

  • 日常生活や人との関わり、学校、就労などで困ったことなどの相談
  • 発達障害に関する講演や研修

それぞれの地域にある支援センターの一覧はこちらをご覧ください。
発達障害者支援センター・一覧

家庭でできるメンタルサポート・学習

親が子どもにできるメンタルサポート

子どもが不登校になれば、学習面での遅れが気になり、親として不安を抱いてしまうのではないでしょうか。しかし、焦って子どもに無理に登校を促しては、逆効果になりかねません。まずは、「子どもにどのようなサポートができるか」を念頭に置き、子どもの話を聴く姿勢を持つことが重要です。子どもが自発的に話し、行動するのを待つようにしたいですね。

また、不登校の原因として、学習障害(LD)や注意欠如・多動性障害(ADHD)など発達障害の可能性を客観的に考えることも必要です。それまでの生活に問題がなくても、不登校という形で生きづらさが顕在化した可能性もあります。発達障害かどうかは専門家でなければ判断できないため、スクールカウンセラーや自治体の公的機関に相談しましょう。
 
不登校になった子どもへの対応について、詳しくは下記記事をご参照ください。
不登校は親のせいではありません。疲れを感じないためのポイント5つ

家でもしっかり学習できる方法

家庭学習においても、焦らず自分に合ったペースで進めることが基本です。最初から教科書の内容をすべてカバーするのではなく、内容や範囲を絞って焦らず勉強に取り組むようにしましょう。まずは、得意な科目や好きな科目を短期集中して取り組み、自信をつけることが大事です。いきなり苦手科目に挑戦してしまうと、自信を失って勉強の意欲が削がれてしまう可能性もあります。得意科目で勉強のモチベーションを高めてから苦手科目にチャレンジするようにしましょう。勉強する習慣を身につけられたら、定期試験や入試対策などに向けた勉強に取り組むとよいでしょう。試験でよい結果が出せればさらなる自信につながり、勉強の好循環を生み出せます。
 
登校しなくてもできる家庭学習について、詳しくは下記記事をご参照ください。
不登校になっても勉強は追いつく?自宅での効率のいい学習方法を紹介

明聖高校の学習支援やカウンセリングを紹介

個別学習室の設置で少人数体制のサポート

学校に通い始めは、子どもが最初から人数の多いクラスに馴染めるか心配な方も多いでしょう。もともと集団行動が苦手な生徒もいます。

明聖高校では、「個別学習室」を設置しています。個別学習室では、教室で授業が受けられない生徒を少人数体制でサポート。まず個別学習室で慣れてからクラスに移れるので、生徒にとって段階的に無理のない状態で学校に通えます。

Web配信型の講座、受験指導など充実の学習コンテンツ

明聖高校では、学習コンテンツも充実しており、Web配信型のアカデミー講座も受講可能です。講座のなかには業界のプロが教える講座も多数あり、資格取得などを目指せます。勉強に追いつくのか不安などの悩みも解消できます。

カウンセリング専門研修を受けた教員、カウンセラー常駐がサポート

明聖高校の教員は、メンタルヘルスなどの専門的な研修を受けており、カウンセリングの資格を持っています。そのため、不安や悩みを抱えた生徒は担任の先生に相談できます。

もちろん常駐のカウンセラーもいるので、生徒が困ったときはすぐ相談できる環境が整っています。
 
明聖高校がおこなっているサポートについて、詳しい内容は下記記事をご参照ください。
不登校生徒へのサポート体制|明聖高校