学業の悩み、人間関係の悩みなど、高校を中途退学(中退)する理由はさまざまです。中退自体は必ずしもネガティブなものではありませんが、就職活動の際には「中退していると就職で不利になるのではないだろうか」「面接で中退理由を聞かれたらどう答えればいいのだろう」と不安に思うこともあるでしょう。
今回は、データをもとに高校中退の理由についての現状を紹介しながら、再スタートのために家族でできることを考えます。

【データ】高校中退の理由で多いのは「学校生活・学業不適応」「進路変更」

文部科学省の調査によると、2019年度に高校を中退した人の主な中退理由は次のようになっています。

  • ● 学業不振 6.8%
  • ● 学校生活・学業不適応 36.6%
    • (内訳)
    • ○ もともと高校生活に興味がない 13.4%
    • ○ 授業に興味がわかない 3.9%
    • ○ 人間関係がうまく保てない 8.5%
    • ○ 学校の雰囲気がそぐわない 5.4%
    • ○ その他 5.4%
  • ● 進路変更 35.5%
    • (内訳)
    • ○ 別の高校への入学を希望 16.4%
    • ○ 専修・各種学校への入学を希望 1.3%
    • ○ 就職を希望 9.9%
    • ○ 高等学校卒業程度認定試験受験を希望 3.1%
    • ○ その他 4.9%
  • ● 病気けが死亡 4.7%
  • ● 経済的理由 1.8%
  • ● 家庭の事情 4.2%
  • ● 問題行動等 3.8%

(出典:文部科学省「令和元年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」)

学校生活・学業不適応と進路変更がそれぞれ3分の1以上と、とりわけ割合が大きくなっています。また、詳しい内訳をみると「人間関係がうまく保てない」「もともと高校生活に興味がない」などネガティブな理由が目立つ一方で、「別の高校への入学を希望」「就職を希望」といったポジティブな理由も多いことがわかります。

どのような理由でも、高校中退にはデメリットがある

高校中退の理由はさまざまであるため、必ずしも「中退=悪い」というわけではありません。しかし、高校を中退することにはデメリットがあるのも事実です。
例えば、中退後に別の高校へ編入学しなければ、大学進学が難しくなったり(独学、あるいは予備校に通って高等学校卒業程度認定試験の勉強をする必要がある)、就職先の選択肢が狭まったり(求人数が少なく、募集している業種が偏る傾向にある)といった影響が出てきます。

詳しくはこちらのページをご参照ください。
(「高校中退の理由で多いのは?就職活動でどう伝える?再スタートを切るための向き合い方」の記事へのリンク)

履歴書には「高校中退」を必ず明記。面接で理由を前向きに話そう

こうしたデメリットに加え、高校中退に「挫折」のようなマイナスイメージを持たれることを心配する人も多いでしょう。特に就職活動の際には「求人に応募できたとしても、中退した事実を応募先企業に知られたら、選考に影響してしまうのではないか」と不安になるかもしれません。

結論からいえば、高校を中退した事実だけでは、必ずしも選考に影響が出るとはいえません。ポジティブな理由で高校を中退するケースがあることも、採用担当者は理解しているためです。

したがって、まず、履歴書には高校を中退した事実を正直に明記しましょう。万が一、経歴を偽って「高校卒業」などと記載すると、学歴詐称で懲戒解雇される恐れもあります。ポジティブな理由ややむを得ない事情によって中退した場合には、理由をカッコ書きなどで簡単に書いておくのも手です。

また、面接では中退した理由を聞かれる可能性が高いため、事前に受け答えの準備・練習をしておくことが大切です。

  • ● 中退した事実を今どう捉えているのか
  • ● 中退が成長につながったのか
  • ● その成長を仕事にどう活かせるか

といった内容をしっかり伝えられるようにしておきましょう。高校を中退したことを後悔していたとしても、過去の自分を乗り越え、成長できた過程を伝えられれば、好印象につながる可能性もあります。

【保護者向け】高校を中退した子どもに家族ができること

子どもが高校を中退した場合は、再スタートに向け、保護者のサポートが不可欠です。中退後の子どもは非常にデリケートな精神状態にある場合も少なくないため、次のように適切な対応を心掛けましょう。

子どもが話しやすい雰囲気を作る

今後の進路に向けた話ができるよう、子どもの声に耳を傾け、何でも話せる雰囲気をつくるよう意識しましょう。なかなか本人から話をしてくれなくても「なぜ辞めたの?」「これからどうしたいの?」などと強く問い詰めるのは禁物です。「自分が中退したせいで親に迷惑を掛けている」という本人の罪悪感を軽減できるよう、日常の中で気軽なコミュニケーションを取るようにしましょう。

家族で進路について話せる場を設ける

子どもが進路の話を切り出すきっかけをつかみかねている場合には、保護者が話し合いの場をセッティングするのもよいでしょう。年度・学期の切り替わりや、高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)申込のタイミングで「ちょっと話をしようか」と提案してみましょう。子どもが委縮してしまわないよう、日々の会話とは違った特別な場を設けるのがポイントです。

進路の選択肢について情報収集する

子どもと話し合うタイミングに向けて、今後どのような選択肢があるのか、どのような相談窓口があるのかといった情報収集をしておくとよいでしょう。ただし、一気にたくさんの情報を提供すると、子どもは圧倒されてしまいます。また、保護者の価値観を押し付ける形で特定の選択肢を勧めるのも望ましくありません。
子どもが自分の意思で進路を決められるよう、様子を見ながら情報提供しましょう。

学校や専門機関に相談する

家庭だけでは対処が難しければ、学校や公的な相談窓口、民間の専門機関に相談してみましょう。特に他の高校への編入学を考えている場合には、選択肢になりうる高校に相談してみると、具体的な対応を考えやすくなります。