「不登校」という言葉は今や広く浸透していますが、具体的にはどのような状態を指すのでしょうか。子どもが学校に行きたがらない様子を見て「ひょっとすると、これが不登校なのだろうか」「ただ学校を休んでいる状況とどう違うのだろうか」「何か特別な対処が必要なのだろうか」と不安に思う保護者もいるかもしれません。
ここでは、不登校の定義を確認しながら、不登校を5つのタイプに分け、家庭でできる対処法を考えます。

文部科学省による「不登校」の定義と、ひきこもりとの違い

「不登校」という状態について、文部科学省は「年度間に連続又は断続して30日以上欠席した児童生徒」のうち「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者(ただし、『病気』や『経済的理由』による者を除く)」と定義しています。
また「保護者の教育に関する考え方、無理解・無関心、家族の介護、家事手伝いなどの家庭の事情から長期欠席している者」は不登校には該当しないというのが同省の分類です。不登校と一口にいっても、当てはまる状況は多岐にわたることがわかります。

なお、似たような表現に「ひきこもり」がありますが、こちらは「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6カ月以上続けて自宅にひきこもっている状態」であると定義されています(厚生労働省)。期間が6カ月以上と長く、また就学者だけでなく高校中途退学者や学校卒業後の成人なども含んでいるのが特徴です。
加えて、不登校の場合は、学校を休んでいる間に友人に会ったり、習い事など学校外の活動を積極的にしていたりするケースも含みますが、ひきこもりは社会や他者とのかかわりをほとんど断ってしまっている状況が想定されています。両者にははっきりとした違いがありますが、不登校が長期化・深刻化すれば、ひきこもりにつながる恐れも否定できません。

不登校の現状~中学生ではクラスに1人は不登校を経験

昨今では、不登校は決して珍しい状況ではありません。文部科学省の調査報告書「令和元年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」によると、2019年度に不登校状態にあった中学生は全国で約12万8,000人、割合にして3.94%が不登校になっていたことがわかっています。実に25人に1人、1クラスに1人以上が不登校を経験している計算です。
一方、高校では、同年に不登校状態にあった人数は約5万人、割合は1.6%となっています。一見すると少なく見えますが、高校の場合は出席日数不足などで原級留置(留年)する前に、中途退学(中退)している人が一定数いることが背景にあると考えられます。不登校は一部の人だけが経験しうる特別なものではなく、誰にとっても身近な問題になっているといえるでしょう。

こうした不登校を引き起こす原因はさまざまです。人間関係や学力など学校に関する要因のほか、家族の生活パターンの変化や家庭内のトラブルなど家庭に関係する要因、さらに「何事にもやる気が出ない」「学校に価値を見出せない」といった本人に関係する要因があり、これらが複雑に絡み合っているケースが大半です。詳しくは以下のページもご覧ください。

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【要因別】不登校の5つのタイプと家庭でできる対処法

不登校には幅広い状態が含まれるため、学校復帰に向けた対処も一様ではありません。以下では、不登校になったきっかけや長期化している原因のうち、本人に関係する要因から不登校を5つのタイプに分け、それぞれに対して家庭でできる対処法を解説します。

1.人間関係タイプ

いじめを含むクラスの友人関係、部活動での先輩・後輩との関係、教職員との関係などを理由に不登校になっているタイプです。
このタイプでは、家庭と学校と連携しながら、不登校の要因となっている人間関係のトラブルを解消することが先決となります。担任はもちろん、部活動の顧問やスクールカウンセラーなども相談先の候補となるでしょう。

2.遊び・非行タイプ

遊ぶために非行グループに入っていたり、学校に意味を見出せなかったりするために学校に行かないタイプです。
このタイプの場合は、学校のほか、必要に応じて外部の専門機関(児童相談所、教育センター、少年サポートセンターなど)にも相談しながら対処するのがよいでしょう。しっかりとルールを守らせる教育的指導を行うとともに、規則正しい生活習慣を身に付けさせたり、学習に関心を持つよう導いたりすることが、不登校の解消につながります。

3.無気力タイプ

何らかの理由で自分を肯定できなかったり、日々に物足りなさを感じたりして、あらゆることに無気力になっているタイプです。
このタイプに対しては、まず、本人が家庭の中で自尊感情を高められるよう、保護者が子どもの声に耳を傾ける姿勢を見せることが重要になります。さらに、本人の希望に応じて、無理のない範囲で習い事をさせてみたり、フリースクールや適応指導教室に行かせてみたり、家庭の中で家事などの役割を与えたりすると、本人の充足感につながる可能性があります。
また、学力面で自信を付けさせるのも手です。高校なら、通信制高校(インターネット学習の通信制高校含む)など、自宅にいながら学習できる選択肢もあります。

4.不安タイプ

情緒的に混乱しており、漠然とした不安から登校できないタイプです。本人は登校したいと思っているものの、朝になると体の不調が起こり、学校に行けない場合もあります。
このタイプは、学校や家庭で周りからの期待に応えようと頑張りすぎた結果、ストレスや疲れが限界に達している状況にある可能性があります。そのため、まずはゆっくりと休息を取ることが大切です。必要に応じてカウンセラーや医療機関(心療内科など)にも相談し、自分のペースで再スタートできるエネルギーを取り戻せるようにしましょう。

5.その他、複合タイプ

以上のタイプは明確に分けられるわけではなく、複数のタイプの特徴をあわせ持っている場合も少なくありません。子どもの様子を注意深く観察し、丁寧に話を聞きながら、状況を把握することが重要です。