不登校になった人の多くは、それぞれのやり方で学校復帰・社会復帰していますが、その後、どのように過ごしているのでしょうか。「不登校を経験していても、進学や就職をして、幸せに暮らしているのだろうか?」と、自分の将来を重ねて不安に感じる人もいるかもしれません。
今回は、調査データや経験者の声から、不登校のその後の人生について考えてみましょう。あわせて、将来、不登校になったことを後悔しないために、今のうちからやっておきたいことについても解説します。
不登校後、自分に合った学校・仕事に出会えた人は60%以上!心配しなくても大丈夫
文部科学省では、中学3年生の頃に不登校だった人のその後(5年後)を追った調査を行っています(「不登校に関する実態調査 平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書」(2014年))。つまり、この調査結果から、不登校を経験した人が20歳になったときの様子がわかるのです。
まず、20歳時点での状況について、大学・短期大学に通っている人は約20%、専門学校に通っている人は約15%、就職している人(正社員、パート・アルバイト)は約40%となっています。
また、「中学校を卒業したとき、希望どおりの進路に進むことができたか」という質問に対しては、約44%の人が「希望どおりだった」と回答しています。また、一度でも高校などに進学したことがある人の約70%が「自分の力や性格に合った学校にめぐり会えた」と回答、一度でも就職したことがある人の約62%が「自分の力や性格に合った仕事にめぐり会えた」と回答しています。
さらに、この調査では、大人になった不登校経験者への聞き取りも行っており、そのリアルな声を目にすることもできます。コメントの中には「不登校を乗り越えることができたからこそ、今の自分がある」「不登校は、自分の体調を戻すために必要な準備期間だった」「自分自身のことなど、学校に行かなかったからこそ見えてきたものがある」といったポジティブなものも少なくありません。
こうした調査結果からもわかるとおり、不登校になったからといって、必ずしも、その後の人生を悲観的に捉える必要はありません。
しかし、その一方で「希望どおりの進路ではなかった」という人が半数以上いるのも事実です。また、不登校だったことを後悔している人も3分の1以上(37.8%)を占めています。
不登校の期間をどう過ごすかによって、その後、後悔のない人生を送れるかどうかも変わってくるといえるでしょう。
不登校経験者が後悔しているのはどんなこと?今からできる対策を考えよう
では、不登校になったことを後悔することなく、その後の人生を送れるようにするためには、どうすればよいのでしょうか。不登校経験者が具体的に何を後悔しているかを探りながら、対策を考えてみましょう。
学力が不足したまま大人になってしまった
- ● 進学したものの、学力面の遅れが原因で、大学での学びに困ることがある。
- ● 最終学歴が中学卒業(中卒)のため、進学したり、資格を取得したりできず、就職先の選択肢が狭まってしまった。
不登校中に学力が遅れると、進路の選択肢が制限されたり、進学・就職先で困難に直面したりすることも少なくありません。
こうした後悔を避けるために、不登校中も可能な範囲で学習を続けておきたいところです。教科書や参考書で自主学習するのが難しい場合は、オンライン学習サービス(WEBサイト、アプリ)や家庭教師、不登校支援に力を入れている民間の学習塾なども活用してみましょう。
また、大学・専門学校や資格試験の受験資格にも関わる高校卒業資格は、通信制高校で自宅学習中心に学びながら、取得を目指すことができます。中でも、不登校経験者の基礎学力向上をサポートするカリキュラムを整えている学校を選ぶとよいでしょう。
体力が低下してしまった
- ● 家を出なかったために体力が落ちてしまい、すぐに疲れるようになってしまったため、何か行動を起こそうにも思うように動けないことがある。
不登校中はどうしても体力が落ちやすく、先ほど取り上げた調査でも「不登校だったために、中学校卒業後に体力が低下したり不足したりして苦労した」という人は約60%にも上ります。
学校復帰・社会復帰に向けて満足に活動できるようにするためにも、不登校の間に無理のない範囲で、散歩・ジョギングなどの軽い運動をしておくのがおすすめです。「平日の日中は人目が気になって出歩けない」という人は、時間帯を工夫したり、室内でできるエクササイズに取り組んだりしてみましょう。
社会性を身に付けておけばよかった
- ● 学校時代に、他人ときちんと向き合って話して、人との関わり方をもっと学んでおけばよかった。
- ● 協調性が身に付かずに苦労している。
「人間関係の築き方を学び、社会性を身に付けておけばよかった」という声も多く聞かれます。
このような後悔をしないために、学校以外の居場所を作っておくのがよいでしょう。例えば、公的な不登校支援施設「適応指導教室」や、民間のフリースクール、趣味の習い事やサークルが居場所になる可能性があります。不登校中も社会とのつながりを保ち、人との関わりを体験することで、視野が広がったり、自信を取り戻したりできることもあります。
学校行事などの思い出を作れなかった
- ● 文化祭や修学旅行など、学校時代にしか経験できない行事に参加できなかったのが残念。
- ● 大学で友だちが中学時代の思い出話をしているときに、話に入れない。
学校時代の行事は、残念ながら大人になってから体験し直すことはできません。思い出は取り戻せませんが、その分、不登校の間にしかできない体験もあります。実際に「普通に学校に通っているだけでは経験できないことを多く積み重ねてきたおかげで、人とは違う見方ができるようになった」と前向きに語る不登校経験者も珍しくありません。
例えば、学校の授業では読めないようなさまざまな本を読んでみたり、工作やイラスト、音楽などクリエイティブなことにチャレンジしたりしてみてはいかがでしょうか。新しい知識や、ひとつのことを成し遂げた達成感を得られるはずです。さらに、先ほど紹介したフリースクールなどの居場所での活動を通じて、かけがえのない思い出ができることもあるでしょう。
おわりに
不登校が長期にわたると、その後の人生にネガティブな影響が及ぶ可能性も否定できません。しかし、不登校中の過ごし方次第では、むしろ「不登校を経験してよかった」とポジティブに振り返れるような未来も描くことができます。後悔しない人生を歩むためにも、将来を悲観しすぎず、有意義な不登校中の過ごし方を考えてみてください。
※参考URL
「不登校に関する実態調査」~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~(概要版):文部科学省
中学時代の経験者の約4割が「後悔」 肯定的評価は約1割 いずれも生の声は切実な叫び
「不登校を克服したい!」と思う子どもがぶつかる壁とは – ブログ – 専門カウンセラーが執筆!不登校解決ブログ
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