「高卒資格」と「高卒認定」は、とてもよく似た言葉ですが、取得方法や証明する内容は大きく異なります。その違いを理解して、自分に必要なのは高卒資格と高卒認定のどちらなのかを判断することが大切です。
ここでは、高卒資格と高卒認定を比較し、それぞれのメリットについて解説します。

高卒認定(高等学校卒業程度認定試験)とは

高卒認定(高等学校卒業程度認定試験)は、高校を卒業した人と同等以上の学力があることを認定する試験です。この試験に合格すれば、高校を卒業していないなどの理由で大学や短大、専門学校に入学できなかった人に対して、入学資格が付与されます。

また、就職に有利になることもあります。就職や資格試験の受験において、高卒認定があると高校を卒業した人と同じように扱うとする企業や団体も少なくありません。

高卒認定と高卒資格との違い

高卒資格とは、高校を卒業した人を示す俗語です。では、高卒認定と高卒資格との違いはなんでしょうか。

資格の取得条件の違い

高卒認定は、文部科学省による「高等学校卒業程度認定試験(旧大学入学資格検定)」に合格することで得られます。試験は年2回実施されています。
受験資格は、受験者が「試験を受ける年の年度終了までに満16歳になっていること」です。高校卒業者などすでに大学入学資格を持つ人は受験できません。
試験科目は、国語、地理歴史、公民、数学、理科、外国語(英語)です。このうち地理と歴史は、世界史A、Bから1科目、日本史A、B、地理A、Bから1科目が必修となります。また、公民は3つの試験科目から1~3つ、理科は5つの試験科目から2~3つを必修として選ぶことになります。

一方の高卒資格は、高校を卒業すれば得られるものです。

  • ・全日制は3年、定時制及び通信制は3年以上高校に在籍する
  • ・卒業までに74単位を修得する
  • ・卒業までに特別活動に30時間以上出席する(※通信制高校の場合)

といった基本的な要件をもとに、各学校で卒業要件が決められています。高卒資格を得るには、最低でも3年の年月が必要です。

資格で証明される内容の違い

高卒認定は、高校卒業程度の学力を証明します。進学や就職をする際に、高校を卒業した人と同じ受験資格や応募資格を得られます。ただし、最終学歴が「高校卒業(高卒)」とはなりません。例えば、中学を卒業した人が他の学校に通わず高卒認定を受けると、最終学歴は「中学卒業(中卒)」となります。

一方の高卒資格は、高等学校に3年間在籍して卒業したことを証明するものです。したがって、最終学歴は「高校卒業(高卒)」になります。高校の卒業は学力だけでなく、高等学校で学校生活を過ごし、さまざまな体験をしたという証明も含まれます。

高卒資格を取得するメリット

高卒資格を得るメリットは、学力はもちろん、学校という場所で得られる経験です。3年以上、同じ高校の仲間と交流を持ち、ともに学ぶという時間は、その後の人生においてかけがえのない経験となるでしょう。

学習面では、先生から教えてもらえるというメリットがあります。高卒認定を受けるための試験勉強は基本的には自学自習となり、自分を律しなければなりません。誰かに教えてもらう方が学びやすいというタイプの人にとっては、高校で教えてもらえる環境が向いているでしょう。

就職の面では、「勉強以外にも人生経験を積んだ」点が活かされます。社会では、コミュニケーションスキルが求められます。社会と学校では多少コミュニケーションの方法は異なるかもしれませんが、人とふれあってきた経験はスキルとして蓄積するはずです。就職活動でもそのコミュニケーションスキルを評価されるでしょう。

また、学歴の面では、最終学歴が「高校卒業(高卒)」となります。最終学歴によって給与が異なる仕事の場合には、最終学歴が中学卒業か高校卒業かはとても重要です。さらに、企業によっては「高校卒業」を応募要件としている求人もあり、中学卒業では望む仕事に就けない可能性もあります。
厚生労働省の『令和4年度「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況」取りまとめ』によると、高校新卒者の求人数が約44万4千人であるのに対し、中学新卒者の求人数は1,077人です。最終学歴によって求人数に差があることがわかります。

ただし、高卒資格でも高卒認定でも、大学や専門学校に進学して卒業すれば最終学歴は大学卒業や専門学校卒業となる点は同じです。

高卒認定を取得するメリット

高卒認定を取得するメリットは、学校に通わず学習期間が短くても、試験に合格すれば認定を得られることです。

高卒認定は「年度末までに満16歳」という年齢のみが受験資格であり、学習期間等への条件はありません。一方の高卒資格の取得には、最低3年必要です。大学の受験資格を得るためだけであれば、高卒認定の方が短い期間で得られる可能性が高くなります。ただし、大学受験資格には「受験をする年度内に満18歳となること」という年齢制限があるため、高卒認定を得たとしても18歳未満では受験できない点には注意が必要です。

また、高卒認定はかかる費用が安いというメリットもあります。文部科学省の「令和3年度子供の学習費調査の結果について」によると、公立高等学校(全日制)の学費総額は約51万円となっています。これに対して、高卒認定の受験料は受験する科目数によって異なり、4,500円~8,500円です。受験申し込みにかかる費用や参考書代などを入れても、かなり低コストに抑えられることがわかります。

高卒資格は全日制以外でも取得できる

高校卒業程度の学力を得ていても、学歴が理由で希望の職業に就けない場合には、高卒資格を得る道があります。しかし、経済的な事情や不登校などで全日制高校に通えない場合もあるでしょう。

高卒資格は、全日制高校だけでなく、定時制高校や通信制高校でも得られます。全日制高校に通うのは難しいものの、高卒資格を得たいという人は、通信制高校への進学・転入学も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

なお、元々は全日制高校に通っていたものの不登校になってしまい、通信制高校に転入学・編入学する人も少なくありません。
以下記事では不登校から就職、進学を目指す際に気を付けるべきポイントなどをまとめていますので、ぜひご覧ください。
不登校の経験があっても就職できる?高校卒業資格を取得して選択肢を広げよう | 通信高校生ブログ

通信制高校なら自分のペースで「高卒資格」の取得が可能!

通信制高校は、自学自習で作成したレポートを先生に添削してもらったり、年数回程度の登校(スクーリング)で授業を受けたりして学習を重ねたのち、単位認定試験をパスしていくことで高卒資格を取得できる学校です。毎日通学することが難しい人でも、先生や他の生徒と交流を深めながら高校卒業を目指せます。

通信制高校は、高卒認定のメリットも一部得られる高卒資格取得の方法だといえるでしょう。