進路選択は、多くの人が中学で初めて経験する人生の分かれ道だといえます。この機会に、将来の夢を現実的に考える人もいるでしょう。なかには「漠然と合格圏内の高校に進学することに違和感がある」「将来像や夢と言われても、まだイメージできない」「自分の好きなことを追求してもよいものだろうか」などの悩みをもつ人もいるかもしれません。
こうした中学卒業後の進路はどのように考えればよいのでしょうか。高校進学だけではないさまざまな選択肢を紹介しながら解説します。

高校進学以外の選択肢も!中学卒業後の主な進路一覧

高等学校(高校)

中学校までの学びに積み上げる形で、発展的な普通教育・専門教育を受けられる学校です。一口に高校といっても、学習スタイルによって種類はさまざまです。

・全日制

在籍期間は3年間。決められたカリキュラムに沿って学び、進級要件を満たすことで卒業できます。

・定時制

在籍期間は3年以上。単位制を採用しており、74単位を取得することで卒業できます。昼間部・昼夜部・夜間部と多様な時間に学べる環境があることも特徴です。

・通信制

修業年限は3年以上。主に紙の教材を中心に勉強し、決められた時数の登校(スクーリング)があります。

また、カリキュラム(学ぶ内容)によって、学科も「普通科」「専門学科(工業科、商業科など)」「総合科」に分かれています。
※高校の選び方について、詳しくは次のページも参考にしてください。
自分に合った高校の選び方とは?考え方とチェックポイントを紹介

通信制高校ってどんな学校?全日制・定時制との違いは?通学や授業の特徴を解説

高等専門学校(高専)

実践的な技術力の習得を目指す5年一貫の高等教育機関です。卒業すると準学士(短期大学卒業と同じ学位)を取得でき、大学に3年次から編入できます。また、3年修了すれば高校卒業資格を取得できます。学科は工業系(機械工学や情報工学など)や商船系がメインです。

専修学校

一般教養を身につけながら、職業や実生活に必要なスキルを養う学校です。カリキュラムによって以下のように分かれています。

・専門課程(専門学校)

 入学資格は高等学校卒業者。専修学校の8割は専門課程に該当する。高等学校教育をベースに、より高度で専門的な知識や実習を通して職業人を育てる。

・高等課程(高等専修学校)

 入学資格は中学校卒業者。中学校教育をベースに、専門技術を学ぶために必要な基礎知識や実習をおこなう。

・一般課程

 学歴や年齢を問わず入学可能。専門的な知識や技術を学ぶことができる。

中学卒業者は、高等課程または一般課程に入学できます。

学科の種類は高専よりも幅広く、工業系から農業系、医療系、衛生系(調理、美容など)、ファッション系にいたるまで多種多様です。高等課程の一部の学科では、国家資格を取得できる場合もあります。また、高等課程を修了すると、専門課程や大学への入学資格を得られます。

各種学校

実践的な職業教育・技術教育を受けられる学校です。料理学校や語学学校、理容学校などが含まれます。入学資格は特に定められておらず、修業年数はそれぞれの各種学校によって独自に設定されています。

職業能力開発校(高等技術専門校)

特定の職業に必要な実践的な知識・スキルを身につけ、希望に合った就職を目指す「職業能力開発施設」のひとつです。中学卒業者を対象とした職業訓練「学卒者訓練普通課程」をおこなっており、自動車整備科や木造建築科、OA事務科などの学科で学ぶことができます。設置している都道府県によって名称が異なり「高等技術専門校」などと呼ばれることもあります。訓練期間は1~2年です。

フリースクール

不登校を経験しているなど、通学が難しい児童・生徒の居場所・学びの場として提供されている民間の施設です。教育方針や学費などはスクールによって異なりますが、さまざまな体験活動のなかで無理なく社会生活を送れるようになっています。

その他

各種学校や職業能力開発校、フリースクールでは大学入学資格を得られませんが、独学で勉強し、高卒程度認定試験(高認)に合格すれば、大学進学を目指すことも可能です。

※詳しくは次のページも参考にしてください。
高卒資格と高卒認定、どちらを取得するほうがいい?取得方法や証明内容の違いを解説

スポーツ、芸能、ゲーム……好きなことを追求する進路もある

ここまでは、学校に通うことを前提とした進路を紹介してきましたが、「将来の夢なんて決まってないし、どういう学校へ行けばいいかもわからない」という人もいるでしょう。中学の段階で将来を明確にイメージするのは難しいことですので、焦らなくても大丈夫です。

また、必ずしも勉強中心の進路を選ぶ必要はありません。好きなこと、やりたいこと、興味のあることを追求するのも重要な進路の考え方です。

例えば、中学卒業後、すぐに就職するのもひとつの選択肢です。「早く社会に出て独り立ちしたい」「勉強よりお金を稼ぐことのほうがおもしろい」と感じている人には魅力的な進路でしょう。ただし、中卒で応募できる求人は数も職種・業種も限られている点には注意しなければなりません。
また、すでにスポーツや芸術、芸能の分野で活躍している人や、目の前のやりたいことに没頭したい人は、自分の好きなことを活かせる進路を選ぶのもよいでしょう。
最近では、eスポーツプレイヤーやYouTuberといった新たな職業も登場し、勉強以外で自分のよさを発揮できる仕事の選択肢が広がっています。一昔前よりも、中学卒業後の進路をより柔軟に考えられるようになりました。

パターン別 中学卒業後の進路を決める3つの考え方

では、さまざまな選択肢のなかから、中学卒業後の進路をどのように決めていけばよいのでしょうか。現在の状況別や将来の希望別に、3つの考え方をご紹介します。

将来の夢がはっきりしている場合

将来やりたい仕事がはっきりと決まっている場合は、その夢から逆算して進路を考えるとよいでしょう。例えば、医師になりたい場合は、大学の医学部で6年間学び、国家資格を取得しなければなりません。そこで、医学部に入学できる高い学力を身につけるため、しっかり学習に専念できる選択肢はどれなのかを考え進路を決めるといった具合です。

今すぐ取り組みたい活動がある場合

「スポーツや芸能活動などに専念したい」「すぐに就職したい」など今すぐにやりたいことがある場合は、やりたいことを追求しつつ、並行して学ぶ選択肢も検討しましょう。また、すでに将来の夢に向けて活動している人も同様です。

例えば、通信制高校(ネット高校を含む)は毎日通学する必要がなく、自分のペースで自主学習をしながら、高校卒業資格の取得を目指せます。実際に、仕事やスポーツ、芸能活動に打ち込みながら通信制高校で学ぶ人は多数います。

自分が今やりたいことと並行して高校卒業資格を取得しておけば、将来的に大学に行きたくなった場合や、別の道に進みたくなった場合に役立ちます。

※通信制高校、ネット高校についてはこちらもご覧ください。
スポーツで活躍したい人にはネット高校がおすすめ!有名選手にも選ばれている理由とは

将来のイメージが漠然としているとき

将来の夢やなりたい職業がイメージできない人も多くいるでしょう。これは決して珍しいことではなく、国立教育政策研究所の調査でも、中学3年生の4割近くが、将来就きたい職業や仕事が決まっていないと回答しています(「キャリア教育に関する総合的研究 第一次報告書」(2020年3月))。

将来について漠然としている場合には、中学卒業後に将来の可能性を広げやすい進路を選ぶのが有効です。多様な進路実績(進学、就職、留学など)のある普通科の高校に進学すれば、勉強しながら進路や将来の夢を模索し続けることができます。

また、好きなものはあっても将来のイメージは湧かない人もいるでしょう。スポーツは好きだけどスポーツ選手になりたいわけではないという場合、さまざまな選択肢が広がる進路で模索を続けることで、「スポーツ好き=スポーツ選手」だけではなく、トレーナー、指導者、スポーツ記者など複数の選択肢が見えてきます。

高校生活を送るなかで、自分の好きなことや得意なことに向き合ったり、「地元で働きたい」「お金持ちになりたい」といった希望のライフスタイルを思い描いたりしながら、高校卒業時の進路選択に備えるとよいでしょう。