スポーツでプロや世界大会を目指す人にとって、学業と選手活動の両立は頭を悩ませる問題のひとつではないでしょうか。近年、そうしたスポーツの世界で活躍する若い人たちに、新しいスタイルの高校「ネット高校」が注目されています。なぜ、ネット高校がスポーツ選手たちに選ばれているのか、その理由について解説していきましょう。

ネット高校がスポーツ選手に選ばれるワケ…全日制高校では学業との両立が難しいことも

ネット高校は、インターネットでの学習を中心に高校卒業を目指す、新しい形の通信制高校です。世界で活躍するスポーツ選手の中には、ネット高校を含む通信制高校の卒業生・在校生が数多くいます。例えば、サッカーの香川真司選手は通信制高校の卒業生、フィギュアスケートの紀平梨花選手はネット高校の在校生、サーフィンの川合美乃里選手はネット高校の卒業生です。

このようにスポーツ選手が通信制高校・ネット高校を選んでいる理由のひとつに、全日制高校では学業とスポーツの両立が難しいことが挙げられます。スポーツで活躍したい人たちにとって、高校に通う十代後半は大切な時期です。この期間をいかに過ごすかが、今後の選手人生を左右するともいえるでしょう。

しかし、全日制高校に通っていると、練習時間を十分に確保できなかったり、海外などへの遠征が難しかったりと、選手活動が制限されてしまいます。逆に、トレーニングや遠征を優先すれば、今度は高校の出席日数が足りず、卒業が難しくなります。かといって、学業を完全にあきらめるのも現実的ではありません。スポーツ選手として第一線で活躍できる期間には限りがあります。長い人生を考えると、確かな知識や思考力を身に付け、高校卒業・大学卒業といった学歴を得ておくことも重要です。ときには、そうした学力を身に付け、進学することが、選手活動の可能性を広げることもあります。

このように悩ましい学業とスポーツの両立を可能にするのが、通信制高校、そしてネット高校なのです。

スポーツに専念したい人がネット高校を選ぶ3つのメリット

ネット高校のベースとなる通信制高校は、自主学習中心のスタイルで高校卒業資格を取得できる仕組みの高校です。毎日登校する必要はなく、登校するのは原則、月数回のスクーリングと、年1回の単位認定試験のときのみです。学習内容の理解度は、科目ごとに決められた通数のレポートを提出し、添削してもらうことで確認できます。学習の仕方は全日制高校と大きく異なりますが、高校卒業資格は法律上、全日制高校とまったく変わりません。

さらに、この通信制高校の一形態であるネット高校では、スマートフォンやタブレットを通じたインターネット学習をメインに学ぶことができます。動画授業の視聴をメインに学習を進めることが一般的で、理解を深めやすくなっているのが特徴です。また、登校スクーリングは年4~6日程度と、一般的な通信制高校よりもさらに少なくなっています。

スポーツの世界で活躍したい人にとっては、具体的に次のようなメリットがあります。

遠征や合宿に行きやすい

ネット高校はほとんど登校する必要がないため、「学校の授業か遠征・合宿か」という究極の選択に悩むことなく、思う存分スポーツに専念できます。また、ネット環境があれば、スマートフォンやタブレットを使ってどこでも学習できるため、遠征先や合宿の合間、移動中に学習することも可能です。

トレーニング時間を確保しやすい

学習時間の融通が利くため、トレーニング・練習時間を確保しやすくなります。例えば「試合直前はトレーニングを優先し、試合が終わってからまとめて学習する」「日中は練習をメインにし、学習は空き時間や早朝、夜の時間帯を使って、動画授業を1回分ずつ視聴する」といった柔軟なスケジュールを組むことが可能です。

スポーツに積極的なネット高校もある

ネット高校の中には、スポーツ選手としての活動に理解がある学校も少なくありません。スポーツ中心のカリキュラムとインターネット学習を組み合わせたスポーツコースのある高校や、部活動で実績のあるネット高校もあります。

例えば、明聖高校はサーフィン部の活動が活発です。部員は毎年、全日本サーフィン選手権で上位の成績を収めており、2020年東京オリンピックに向けた強化指定選手にも4名(卒業生を含む)が選ばれています。このような実績があることから、サーフィンに打ち込む多くの若い選手に注目されています。