不登校の真っ只中にいると「自分の人生はもうダメかもしれない」と自信をなくすことがあるかもしれません。しかし、不登校を乗り越えて社会で活躍している人は数多くいます。その中には、世界で広く知られている歴史的な偉人や、現在注目を浴びている有名人も少なくありません。
今回は、そうした偉人・有名人が不登校を乗り越えたエピソードを紹介しながら、そこから何を学べるかを考えてみましょう。

アイドルから発明家まで……不登校を乗り越えた3人の偉人・有名人のエピソード

次に紹介する3人は、いずれも不登校を乗り越えた経験のある人たちです。今まさに不登校に悩む人も、共感できるところがきっとあるはずです。

白石麻衣さん(アイドル)

乃木坂46としてのアイドル活動や、雑誌でのモデル活動を行う白石麻衣さんは、不登校だった過去をテレビ番組などで明かしました。

白石さんは中学3年生になる直前に、まわりからの嫌がらせを受けたことがきっかけで不登校になったといいます。そのときには、友だちが自宅まで迎えに来て「学校へ行こう」と誘ってくれても、一歩を踏み出せなかったそうです。

学校に行けるようになったのは、中学卒業後、母親の協力のもとで、地元を離れた高校に進学してからでした。やがて、ずっと好きだった音楽の道に進みたいと考え、専門学校で音楽の基礎から学ぶ道を選びます。その専門学校で、先生に乃木坂46のオーディションを勧められたそうです。

アイドルになるという選択肢が頭になかったという白石さんがオーディションを受けたのは、「引っ込み思案な自分を変えたい」と思ったからだといいます。実際に乃木坂46に入ってから「人生の再スタートを切った」という白石さんは、このときに本当の意味で不登校を克服したのかもしれません。

「不登校のときのつらさや、支えてくれた家族へのありがたみが、今の仕事にもつながっている」と、白石さんはインタビューで発言しています。

よしあきさん(モデル)

高校生ながら、海外のハイブランドにも認められるモデルであるよしあきさんは、2019年12月に、フォトエッセイ『友達ゼロで不登校だった僕が世界一ハッピーな高校生になれたわけ』を出版しました。

不登校のきっかけは、小学校でいじめを受けたことでした。不登校の間には「学校に行かないといけない」という固定観念にとらわれて、強く孤独を感じ、毎日泣いたり家族に暴力をふるったりしたこともあったといいます。

そんなよしあきさんが立ち直るきっかけのひとつになったのは、母親が探してくれたフリースクールで恩師に出会ったことでした。また、インターネット上で知った原宿ファッションへのあこがれも、自分に自信を取り戻す原動力になっていたそうです。

やがて、よしあきさんは実際に原宿を歩くようになり、モデルとして仕事をするようになりましたが、それでも高校に行くことを選びます。フリースクール時代から勉強したい想いも強かったというよしあきさんは、定時制高校のひとつである「チャレンジスクール」を選び、五教科の枠にとどまらないさまざまな選択授業を受けたそうです。すると自然と友だちができるようになり、高校生活が楽しいと思えるようになったといいます。

インタビューでは「もし普通の学校生活を送っていたら今の僕になれていないかもしれない。過去があったから今の僕があるんだと思います」と語っています。

トーマス・エジソン(発明家)

19~20世紀のアメリカで活躍し、1,300件を超える発明を成し遂げたあのエジソンも、不登校を経験しています。

エジソンが学校に通えなくなったのは、小学校の先生との関係が原因でした。好奇心豊かなエジソンが「1+1はなぜ2になるの? 1つの粘土と1つの粘土を足し合わせたら、大きな1つの粘土になるのでは?」のように先生を質問攻めにしたところ、「授業を妨害している」と邪魔者扱いされ、入学から3カ月で小学校を退学になってしまいます(当時のアメリカではありうることでした)。

それからエジソンは、元教師である母親のもとで勉強を続けました。母親はエジソンが抱いた疑問に向き合い、大人用の百科事典や専門書を使わせたり、家の地下室をエジソン専用の実験室にしたりして、エジソン自身が自由研究の中で、疑問を解消できるように導いたのです。また、エジソンは町で自家製の野菜を売ったり、自分で作った新聞を列車で売ったりといった仕事をしながら、実体験の中で社会の仕組みや人との関係も学んでいきました。

こうした経験から、エジソンは「母親がいなかったら発明家になっていなかっただろう」と語ったといいます。「私は決して失望などしない。なぜなら、どんな失敗も新たな一歩となるからだ」という名言も、正規の教育を受けられず、苦労を乗り越えたエジソンの言葉だからこそ、説得力があるといえるでしょう。

不登校でも悲観しないで。偉人・有名人のエピソードから学べること

この3人のエピソードからは、次のようなことが学べるのではないでしょうか。

不登校はネガティブなことではない

不登校になったとしても、そのせいで人生がすべて悪いほうへ進んでしまうことはありません。実際、3人のように、不登校の経験を経て、自分が満足できる人生を送り、社会的にも成功している人は大勢います。

さらに、この3人は「不登校の時期があったからこそ、成功した(今の)自分がいる」と捉えています。不登校に悩んでいる間は確かにつらいかと思いますが、「つらい経験も将来に生きてくる」とポジティブに捉えることが大切だといえるでしょう。

将来の可能性を広げるために学習を続けることが大切

自分が満足できる人生のチャンスをつかむためには、不登校になっても学習をあきらめず、学び続けることが不可欠です。

エジソンは、発明の仕事を生きがいにしていたといいますが、もし、エジソンが小学校を退学したあと勉強を続けなければ、そうした生きがいに出会えなかったかもしれません。また、白石さんがアイドルという思いもよらない道に進めたのも、音楽を専門的に学ぶ中で、先生に才能を見出されたからではないでしょうか。

学び続けることは、人生の可能性を広げることであるともいえるでしょう。

学習方法の選択肢はたくさんある

学習を続けるといっても、不登校の経験がある人には、中学卒業後に一般的な全日制高校へ進むことに抵抗を感じる場合もあるでしょう。3人のエピソードは、「一般的な選択肢以外にも、学ぶ方法はたくさんある」ということも示してくれています。

例えば、エジソンは自宅での自主学習を続けていましたし、よしあきさんはフリースクールやチャレンジスクールで学んでいました。そのほかにも、通信制高校で自主学習をメインに勉強しながら、高校卒業資格取得を目指す選択肢もあります。

特定の選択肢にとらわれなくても、学習を続けて、自分にとっての「成功」をつかみ取ることは可能だと、3人は教えてくれているのではないでしょうか。