不登校の子どもを持つ保護者からすれば、子どもの不登校は不安なものだと思います。「早く復学させたほうがいいのではないか」「どうすれば回復できるのか」という焦りを感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、現在では「不登校は問題行動ではない」という見方が主流になりつつあります。現在の不登校支援の目的は、必ずしも「復学」ではありません。今回は、現在の不登校支援の現状や、本人が自立するまでの段階、子どものためにできることについてご説明します。

現在の「不登校支援」は何を目的にしている?

子どもが不登校になったとき、「もとの高校に復学しなければ」と思いがちですが、2019年に出された文部科学省の通知(※)では、「不登校児童生徒への支援は、『学校に登校する』という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要がある」としています。
また、不登校それ自体は、悪いことでも劣っていることでもありません。消耗してしまったエネルギーを回復する期間であり、問題解決に向け必要な期間です。

そのため、現在の不登校支援では、「とにかく復学しなければいけない」わけではなく、本人がエネルギーを回復し、社会的に自立することが重要です。

同時に、「児童生徒によっては、不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で、学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意する」(文部科学省)という文言も併せて明記されているため、この点を考慮したうえでの支援を考えなければいけません。

「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日

不登校生徒における自立の段階。初期・中期・後期とは?

前兆・初期の特徴

不登校傾向が現れる段階です。「登校時間になっても学校へ行きたがらない」「欠席が目立ちはじめる」などの変化が起きます。子どもによっては、保健室や相談室通いという形で兆候が見られる場合もあります。

また、生活面では、「朝起きることができない」「睡眠時間がズレる」「宿題に取り組まない」など生活が乱れたり、「腹痛」「頭痛」「発熱」など、体調不良が表れたりするのが特徴です。

この段階では、感情や行動のコントロールができないことが多く、学校の話題に拒否感を示すようになります。段階が進むにつれ、登校できないことが多くなり、本人にも混乱や身体症状が現れる不安定な段階です。

中期の特徴

子どもの精神的不安定さはいったん治まり、外から見れば大きな動きは見られなくなります。この段階では、登校するためのエネルギーは非常に低い状態になっており、「部屋に閉じこもって出てこない」などの行動変化が現れます。昼夜逆転などが起きるのもこの段階の特徴です。

また、行動が沈静化する一方で、趣味や遊びに興味が湧きはじめ、気持ちを言葉で表現できるようになるなど、ポジティブな要素も見られます。

「復学しなければ」という焦りが本人や周囲からなくなることで、家庭内では落ち着きを取り戻します。同時に、周囲から見れば、本人が意欲を失ったように感じられるのもこの段階です。

後期の特徴

本人が外へ向けて具体的に動きはじめる時期です。エネルギーが回復することで行動力も増しますが、ここで焦ってがんばってしまうことで、状況が少し逆戻りするように見える場合もあります。

この段階では、本人の口から自分を肯定する言葉が出はじめます。学習を始める、登校や進学・就職など、自立に向けて動き出すなど、ポジティブな変化が見られるのが特徴です。友人と遊んだり、好きな教科の学習に取り組んだりするなどの行動も増えます。勉強や学校に関心を持つようになるため、人によってはこの段階から登校を試みて、徐々に安定するようになる段階です。

不登校の後期に向かうきっかけ例

親が子どもの話を聞くようになり状況が好転

家庭内でのコミュニケーションがうまくいっておらず、母親が子どもに対して集中できない状況でしたが、母親が落ち着きを取り戻したことで状況が好転したケースです。具体的には、母親が子どもの話をしっかりと聞けるようになったことで、母子間の関係性が改善されたと思われます。

このケースでは、子どもにとって家庭内が心の休まる場所になったことで、子どもは安心して外に出られるようになりました。

カウンセラーとの対話を通じ、本人の気持ちが整理できた

こちらのケースでは、カウンセラーとの対話を通して子どもの混乱していた気持ちが整理できたことが好転のきっかけになりました。カウンセリング手法によって、本人の心の状態を解釈し気持ちを明確化したことで、本人も自分の内面を見つめられるようになったケースです。

復学や自立に向けた相談・指導に効果はある?

相談・指導を受けた経験のある人は約7割

文部科学省の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(平成26年度)によれば、平成26年度の小・中学校の不登校児童生徒数は122,902人です。このうち、学校外の機関等で相談・指導等を受けたのは38,059人(31.0%)、学校内では59,916人(48.8%)となっており、約7割の人が相談・指導を受けた経験があることがわかります。

実際に登校できるようになったのは約3割

ただし、不登校児童生徒のうち、相談・指導の結果、登校できるようになったのは約33%となっており、相談・指導を受けたことがただちに復学や自立につながるわけではないことも明らかになりました。

一方で、学校にいる相談員や教育支援センター、民間施設の利用が増加しているとのデータもあり、スクールカウンセラーの配置増加もともなって、不登校生徒への支援体制が整ってきている側面もあります。その結果、高校進学率は増加傾向にあり、同時に中退率は減少している点にも注目しなければいけません。また、大学・短大・高専への就学も増え、一定の成果につながっていることがうかがえます。

不登校からの復学や自立を目指せる相談機関とは?

【学校】
身近な相談先としては通っている学校があります。登校時の様子などを把握するためには、学校との連携が大切です。ただし、教員の力量や学校の運営方針によっては、効果的な対処が難しい場合もあります。

【ひきこもり地域支援センター(都道府県、指定都市)】
専門家が在籍しており、不登校やひきこもりの相談を無料で受け付けています。医療機関や民間の不登校支援施設につないでもらえることもあります。

【教育相談センター(都道府県・市区町村)】
専門家が教育や子育ての相談を無料で受け付けています。学校復帰を支援する適応指導教室(教育支援センター)の利用窓口になっているケースもあります。

【医療機関】
精神科・心療内科などで医学的なアプローチをおこなえます。うつ病や発達障害、起立性調節障害などの心身の症状を治療してもらえます。

※専門機関・相談窓口については、こちらのページも併せてご覧ください。
不登校の悩み、どこに相談すればいい?主な専門機関と相談窓口一覧 | 通信高校生ブログ