大学入試センター試験(以下、センター試験)に代わる「大学入学共通テスト」の実施を始め、大学入試の仕組みが大きく変わる大学入試改革が、2020年度から始まります。SNSに現役高校生の意見が多数投稿されたことでも話題になりましたが、具体的には何がどのように変わるのでしょうか。また、通信制高校に通う生徒は、この改革でどのような影響を受けるのでしょうか。新しい制度のポイントについて詳しく解説します。

大学入試改革とは?カギになる「学力の3要素」

大学入試改革は、政府が推進する「高大接続改革」の一環として位置づけられています。グローバル化の進展やテクノロジーの進歩など、社会構造が急激に変化している時代の中で、新たな価値を創り出せる力を育てていくのが、高大接続改革の目的です。この目的を達成するために、高校教育と大学教育を通じて「学力の3要素」を育成するとともに、高校と大学をつなぐ大学入試において、学力の3要素を適切に評価する仕組みを整えることが目指されています。

【学力の3要素】

  1. 知識・技能
  2. 思考力・判断力・表現力
  3. 主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度

こうした考えのもと、大学入試の在り方の転換を試みているのが大学入試改革です。大学入試改革は、2020年度の入試(2021年度入学者向けの入試)から適用されます。
具体的には、次の3つが変わります。

  • センター試験を廃止し、大学入学共通テストを実施
  • 英語の外部検定試験を利用した4技能評価の実施
  • 各大学が個別に行う一般入試・推薦入試・AO入試の名称変更など

1.大学入学共通テストの実施(2020年度~)

2021年1月から、これまでのセンター試験に代わって、新しい「大学入学共通テスト」が実施されます。大学入学共通テストの実施内容・形式の中には、4年後以降に実施が予定されていたり、一部実施が延期になったりしているものもありますが、センター試験から変わるポイントは以下のとおりです。

【全体】出題内容・形式が変化(2020年度~)

より思考力・判断力・表現力を重視した問題内容・形式になると発表されています。例えば、複数の文章や資料から必要な情報を読み込み、それらを組み合わせた判断が必要になる問題や、正解が1つに限定されない問題も出題される見込みです。

【英語】リスニング・リーディングの配点が均等に(2020年度~)

センター試験の英語試験では、筆記(リーディング)の配点は200点、リスニングの配点は50点でしたが、大学入学共通テストではリーディングとリスニングが100点ずつの配点になります。英語の4技能である「読む」「聞く」「話す」「書く」をバランスよく育成できているかどうかを評価することが目的です。

【国語、数学】記述式の導入(延期)と試験時間変更(数学1は2020年度~)

センター試験と同じようなマークシートによる選択式の試験に加えて、国語総合(古文と漢文を除く)と数学Iの範囲で記述式の試験が導入される予定でした。2020年11月現在、記述式試験の実施は延期が決まり、詳細は再検討中となっていますが、当初の発表では次のような問題が想定されていました。

・国語

センター試験で出題されていた評論文などだけでなく、図表や法律の条文なども含めたさまざまな資料から情報を集めて考えをまとめ、論述する問題の追加が予定されていました。想定されていた問題の中には、80~120文字という長文を記述する問題も含まれています。記述式問題の追加にともない、試験時間はセンター試験の80分から20分拡大し、選択式問題の試験時間と合わせて100分になる予定でした。

・数学1

数式や図表、グラフ、文章などを使って、問題解決の過程や結果を表現する記述式問題の出題が検討されています。問題の題材は、日常生活や社会事象に基づいたものも想定されていました。また、試験時間は選択式・記述式試験合わせて、センター試験の60分から10分拡大した70分になる予定でした。

なお、2020年度では国語・数学1ともに記述式の問題は出題されないものの、数学1の試験時間は選択式で70分となっています。

出題科目の簡素化(2024年度~)

2020年度の実施科目はセンター試験と同じ30科目ですが、2024年度以降、実施教科・科目の簡素化を含めた見直しが行われる予定です。2022年度入学の高校生(2024年度に高校3年生になる生徒)から新学習指導要領が全面実施され、高校のカリキュラムが変わることが背景にあります。

2.英語の外部検定試験を利用した4技能評価(延期)

大学入試改革では、大学入学共通テストとは別に、民間団体が実施する外部検定試験(英検やGTECなど)を利用した英語の4技能評価を行うことが発表されていました。
ただし、地域によって実施されない試験があったり、検定試験の受検費用が志願者の負担になったりと、多くの問題が残っていることから、2020年11月現在では詳細を再検討中の状況です。

3.各大学の個別試験の名称変更など(2020年度~)

各大学が個別に行う入試の名称が、次のように変更されます。また、大学入試改革の趣旨を受けて出題傾向が変わる可能性もあります。

一般選抜(旧一般入試)

大学によっては「出題科目が増える」「選択式だけでなく記述式が導入される」「英語の4技能評価が導入される」など試験内容・形式が変化する可能性があります。また、英語の外部検定試験や大学入学共通テストを利用した入試も増えていく見込みです。
加えて、表現力や主体性を評価できるよう、志願者本人が書いた資料(活動報告書、大学入学希望理由書、学修計画書など)の提出を求められるようになったり、面接や集団討論が新たに実施されるようになったりする可能性もあります。

総合型選抜(旧AO入試)、学校推薦型選抜(旧推薦入試)

学力を適切に評価できるよう、調査書などの出願書類だけで合否が決まることがなくなります。具体的には、プレゼンテーション、口頭試問(面接)、実技、教科・科目の試験、資格・検定試験の活用、大学入学共通テストのうち、少なくともどれかひとつの実施が必須となりました。
また、総合型選抜は出願時期が8月以降から9月以降に変更になっています。

大学入試改革で通信高校生が気を付けておきたいこと

こうした大学入試改革によって「通信高校生が不利になることはないの?」と不安に思う人もいるかもしれません。
結論からいうと、通信制高校に通う生徒だけが大学入試改革の影響を受けることはありません。しかし、もともと通信制高校における大学進学率は18%と、全日制・定時制高校の54.7%と比べて低い点には注意が必要です(2019年度調査)。多様な人が学ぶ通信制高校では、進学以外の進路を希望する生徒が多いことが要因のひとつですが、その分、通信制高校の中には進学に向けたカリキュラムが整っていない学校も多くあります。そのため、通信制高校から大学に進学したくても、受験レベルの学力をなかなか身に付けられない場合があるのも実情です。
したがって、通信制高校から大学進学を目指すには、大学進学に向けたカリキュラムやサポート体制が整った高校を選ぶことが重要です。例えば、明聖高等学校では、基礎学力を確立した上で大学進学も目指せる応用力を身に付けられるカリキュラムや、面接・小論文対策も含めた受験指導を受けられる仕組みが整っています。こうした通信制高校を選ぶことで、大学入試改革にも確実に対応できるようになるでしょう。

通信制高校からの大学進学については、次の記事も参考にしてみてください。

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