不登校に悩む人の多くは、学校に居場所がないと感じ、学校に行けなくなっているのではないかと思います。その一方で、学校以外にも居場所を見つけられずに、不登校中に孤独を感じ、精神的に不安定になってしまう人も少なくありません。
不登校中には、どのようなところが居場所になり得るのでしょうか。居場所を見つけるポイントや主な選択肢を解説していきます。

不登校中に安心していられる「居場所」とは?考え方のポイント

不登校であるかどうかにかかわらず、人の「居場所」になるのは、自分が安心でき、居心地いいと感じられる集団・コミュニティです。逆にいえば、何らかのコミュニティに所属しるからといって、そこが自分にとって居心地のいい場所でなければ、本当の意味での「居場所」になっているとはいえません。

具体的に、居場所になるのは次のようなところであるといえるでしょう。

  • ・自分の存在を認めてもらえ(否定されず)、気まずさを感じない
  • ・共通の話題があるなど、気持ちを分かち合える人がいる

不登校の間に学校以外の居場所を見つけることは、学校復帰・社会復帰のためにも重要です。人や社会とのつながりの中で視野を広げ、自分に自信を取り戻すことができるでしょう。また、居場所という心の支えは、つらいことがあったときに立ち直るための原動力にもなります。不登校を繰り返さないためにも、心安らげる居場所は不可欠だといえるのです。

不登校中の居場所になる主な選択肢一覧!自分に合ったコミュニティを見つけよう

実際に、不登校中の居場所になり得るコミュニティには、次のような選択肢があります。

学校の保健室、図書室、カウンセリングルーム、部活動など

学校内でクラス以外の居場所を見つける選択肢です。ほかの生徒と顔を合わせなくてよい放課後の時間に登校したり、保健室や図書室、カウンセリングルームを訪れたり、部活動だけに顔を出したりすることが、不登校中の心の支えになることがあります。学校復帰に向けて家庭と学校が連携を取りやすいメリットがありますが、学校全体に強い抵抗感がある場合には、学校の外に居場所を求めたほうがよいでしょう。

家庭

「家庭が何よりの居場所だった」という不登校経験者は珍しくありません。とはいえ、そのような人でも、当初は「家には居場所がない」と思い込んでいたり、保護者のほうが「家の外に居場所を見つけなければいけない」とこだわっていたりするケースも多くあります。家族で話し合う時間を持ち、本人と保護者の両方が不登校を受け入れられれば、家庭が心強い居場所になるはずです。
また、家族経由で、保護者の習い事や、親戚の友達グループなど、家族経由で家庭の外=社会とのつながりが生まれる可能性もあります。

民間の学習塾、家庭教師など

勉強に強い苦手意識がない状態であれば、民間の個別指導塾・集団指導塾も居場所の選択肢になります。「学校以外にも学べる場所があるんだ」と視野を広げることができるでしょう。また、集団指導塾は「同年代の友達が欲しいけれど、自分と同じ不登校の人とは、実はあまり話したくない」という人にも向いているかもしれません。
また、通塾が難しいという人には、家庭教師がよき相談相手になってくれることもあります。

習い事やサークル

習い事やサークルは、自分が好きなことに打ち込みながら、同じ関心を持つ人たちと交流できる居場所になり得ます。将来の夢につながるトレーニングにチャレンジするのもよいでしょう。習い事やサークル活動の内容によっては、さまざまな年齢・立場の人と幅広く交流できる可能性もあります。

地域のコミュニティやお店など

日常生活でよく通うお店やカフェ、医療機関などが居場所になったという人もいます。また、地域によっては、NPOやボランティア団体などが子どもや若者の居場所づくりに取り組んでいることもあります。

アルバイト

高校生なら、アルバイト先が居場所になる可能性もあります。仲間と働いてお金を得るという社会経験から、社会とのつながりを感じられるでしょう。

適応指導教室(教育支援センター)など公的な支援施設

公的な施設では、不登校の支援機関である適応指導教室(教育支援センター)が代表的な選択肢です。各地域の教育委員会が設置している施設で、無料でカウンセリングや授業を受けたり、スポーツやゲームなどの集団活動に取り組んだりできます。同じ不登校の悩みを抱える友達と出会い、想いを共有できる居場所になるでしょう。学校と連携できれば、適応指導教室に通所した日を学校の出席日としてカウントできる場合もあります。

また、都道府県の児童相談所・児童相談センターも、児童福祉司や児童心理司などに相談にできる居場所になり得ます。何らかの事情で家庭での生活が難しい場合には、一時保護などの制度を利用することも可能です。

フリースクールなど民間の支援施設

民間のフリースクールは、学校復帰にとどまらない多様な可能性を模索したい人の居場所になるでしょう。アクティビティの内容は適応指導教室より柔軟で、趣旨もフリースクールによって大きく異なるため、自分に合ったところを見極めるのが大切です。

通信制高校など別の学校

「中学校とは違って、高校は自分に合っていて、大切な居場所になった」「別の中学校・高校に転校(転入)したら居場所ができた」という人も多くいます。環境を変えて一から人間関係をつくり直すことには負担もかかりますが、まったく新しい自分として再スタートを切れるため、居場所を見つけやすくなる場合もあるでしょう。

中でも、登校回数が少ない通信制高校は、不登校から少しずつ学校復帰したい人に向いているといえます。不登校経験者だけでなく、仕事や芸能活動・スポーツと学習を両立させている人など、さまざまな生徒が集まる通信制高校は、友達と悩みを分かち合いながら適度に刺激を受けられる居場所になるはずです。

SNSやゲームなどオンラインのコミュニティ

まだ外出できるほどのエネルギーがたまっていない状態の人には、SNSやゲームなどのコミュニティも居場所になる場合があります。オンラインでのコミュニティが本人にマイナスの影響を与える可能性もゼロではありませんが、保護者が無理に交流を制限してしまうと、本人は「心の支えを奪われた」と感じてしまうでしょう。保護者から見ていて心配な場合は、医療機関など専門家に相談することをおすすめします。

注意!不登校中の居場所探しがプレッシャーにならないように

注意したいのは、不登校中の居場所探しが、本人のプレッシャーになってしまわないようにすることです。

保護者が新しい学校やフリースクールなどの資料をたくさん集めてきて見せたり、それらの見学に連れ出したり、判断を迫ったりすると、本人に負担がかかってしまう恐れがあります。家族はあくまで本人の気持ちを尊重し、居心地がよい居場所を自ら見つけるのを支えるよう、意識したいところです。