中学のとき不登校になっても、高校に進学したいと思う人は多いはずです。とはいえ、気になるのは高校受験。「不登校だと高校受験で不利なんだろうか?」と不安になることもあるでしょう。今回の記事では、中学で不登校の経験のある生徒が高校受験をする際に知っておきたいポイントと、不登校でも受け入れてくれるさまざまな高校をご紹介します。

不登校の生徒が高校受験をするときに知っておきたい2つのポイント

不登校になってしまった方が高校受験で気を付けておきたいのは、出願時に提出する調査書です。記入される内容のうち、欠席日数と内申点の2つが、不登校であることと関わってきます。

欠席日数は公立・私立で扱いが異なる

どの学年から欠席日数を記載するかは、学校によって異なります。例えば公立の場合、東京都は中学3年のときのみ、千葉県や埼玉県は中学1年のときから3年間分記載することになっています。
 
公立高校では、欠席日数が多い場合は「審議の対象とする」として、入試で不利になることが募集要項・実施要項に明記されているところが多いのも事実です。例えば、千葉県のとある県立高等学校では、3年間の欠席日数が30日を超える場合は「審議の対象とする」とされています。
 
ただし、東京都や千葉県などは、欠席日数が多い場合の事情を自己申告書に記入して提出することで、評価の際に配慮してもらえるようになっています。さらに埼玉県では、自己申告書を提出することにより、「不登校の生徒などを対象とした特別な選抜」という枠での出願が可能です。
 
一方、私立高校の一般入試では、欠席日数を含め、調査書はあまり評価の対象として重視されない傾向にあるといわれています。ただし、推薦入試については、「欠席日数が各学年10日以内」(都内の大学付属高等学校)などの条件がある場合が一般的です。

定期試験への参加が内申点に関わることもある

内申点とは、学校での成績を決められたルールにしたがって点数化したものです。どの学年から調査書に記載するかは、欠席日数と同様、学校によって異なります。
 
また、評価の際、学力検査(受験当日のテスト)の点数と内申点をどの比率で見るかについても、高校によってまちまちです。例えば都立高校で見てみると、学力検査5教科の得点と調査書点の比率が7:3の学校もあれば、学力検査3教科の得点と調査書点の比率が6:4の学校もあります。
 
不登校で定期試験が受けられないと、学校の成績が下がり、その結果、内申点が低くなってしまうことも考えられます。したがって、入試の評価の際に内申点の比率が大きい高校を受験する場合は、不登校であることによって不利になる可能性も高いといえるでしょう。
 
他方、私立高校の場合は、欠席日数と同様、一般入試では内申点はあまり評価で重視されないといわれています。ただし、推薦入試の場合は、「3 年次 2 学期の成績評定について、国・数・英の合計が 12 以上または国・数・英・社・理の合計が 19 以上」(都内の大学付属高等学校)など、学校の成績が出願条件に関わってくるケースが多いです。

不登校に該当する欠席日数とは

文部科学省では、不登校の定義を「年度間に30日以上登校しなかった児童生徒」かつ「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者による者」としています。友人や教職員との関係に課題がある、非行グループに入っている、無気力である、登校の意思はあるが身体の不調が生じる、といった理由で登校できないケースがこれにあたります。
 
一方、病気や経済的理由による欠席は、不登校の定義には当てはまりません。また新型コロナウイルスの感染拡大時期に、登校せず、学校から提示されたオンライン学習に参加していた場合も、不登校の扱いにはなりません。

【種類別】不登校でも受け入れてくれる高校を紹介

続いて、不登校になってしまっても受け入れてくれる高校を種類別に紹介します。

通信制高校

通信制高校では、報告課題(レポート)、面接指導(スクーリング)、単位認定試験をクリアすることで単位が認定され、74単位以上修得することで卒業することができます。私立が多い傾向にあります。2018年度時点で通信制高校の生徒数は約19万人、2017年度には約5万3,000人が卒業しています。
 
報告課題の数は、例えば都立通信制高校の場合、1年で約80通とされています。レポートの内容はさまざまですが、例えば私立の明聖高校通信コースでは、論文形式ではなく問題形式のレポートとなっており、取り組みやすいのが特徴です。
 
スクーリングは、都立通信制高校の場合、年間約 20~24 日、原則土曜日に登校することになっています。私立の例では、明聖高校通信コースは年間約20日、月2回の金曜日登校です。スクーリングの際に部活動をしている学校も多くあります。
 
単位認定試験は、都立通信制高校では前期1回・後期1回、私立では明聖高校通信コースの場合、年1回です。

定時制高校

定時制高校は、17時~21時頃の夜間4時間をメインに通学する高校です。
 
公立の学校が多いほか、各学年で1クラスと他の学校に比べて少人数のところが多いという特徴があります。2018年度は約2万4,000人が定時制高校に入学、約2万人が定時制高校を卒業しており、多くの人が無事卒業できていることがわかります。
 
定時制高校には2種類あり、1つ目は4 年(または3年)授業を受けることで卒業できる「学年制」、2つ目は決められた単位数を満たすことで学年に関係なく卒業できる「単位制」です。授業の時間帯については、夜間だけでなく、午前部・午後部・夜間部の3部制を採用している高校もあります。
 
部活動が楽しめる高校が多いのが特徴です。また、東京都や千葉県などの夜間の定時制高校では、給食があることもあります。
 
さらに、定時制高校のなかには、不登校の経験のある生徒を積極的にサポートする高校もあります。例えば、都立のチャレンジスクールは、学力検査や中学校からの調査書によらない生徒の学習意欲を重視した入試や、中学校の復習や基礎学習に重点を置いた授業、心のケアを重視した生活サポートなどをおこなっています。

全日制高校

全日制高校にも、不登校の経験のある生徒を積極的にサポートするところが多数あります。全日制高校は、多くの時間を友達と学校で過ごせるのがメリットだといえるでしょう。
 
公立では、都立のエンカレッジスクールが代表的です。特に学力面で不安のある生徒に向いており、学力検査によらない試験、二人担任制、少人数授業、1年次の30分授業といった特徴があります。
 
私立は学校によってさまざまな特色があります。明聖高校では、中学校の総復習や習熟度別授業といった学力面のサポートはもちろん、心のサポートも充実。カウンセリングの資格を所持した教員と相談しながら、段階的な登校が可能です。また、カウンセラーが校内に常駐しているほか、教室で授業が受けづらい場合は個別学習室で学習することもできます。さらに、ゲームやロボットの制作などIT学習に特化した全日ITコースも特徴的です。

高校受験についてよくある質問

不登校になってしまった方が高校受験する際に知っておきたいことをFAQ形式でまとめました。

欠席日数は何日で高校受験が難しくなる?

欠席日数の上限は、学校ごとに異なります。公立高校・私立高校の欠席日数の上限は以下のとおりです。

公立高校 一般的に、年間で30日以上の欠席があると「欠席が多い」と見なされることが多いようです。

例えば「令和5年度千葉県公立高等学校入学者選抜実施要項」によると「欠席が多い理由又は障害があることによって生ずる事柄等について説明しようとする者」は自己申告書を提出する、とされています。

「欠席が多い」とは年間の欠席日数が30日以上と定義されており、欠席の事情について説明が必要となる目安と考えてよいでしょう。

私立高校 公立高等学校と比較すると、欠席日数はさほど重視されない傾向にあるといわれています。

ただし、推薦入試については、「欠席日数が各学年10日以内」(都内の大学付属高等学校)などの条件がある場合が一般的です。

また一般入試の場合も、学校によっては厳しく制限が設けられている場合があるため、必ず事前に確認しましょう。一例として、都内の大学付属高等学校の生徒募集要項には「中学校3か年の欠席日数が合計で15日以内、かつ第3学年での欠席・遅刻・早退の合計が7日以内である者」と記されています。

ただし、推薦入試については、「欠席日数が各学年10日以内」(都内の大学付属高等学校)などの条件がある場合が一般的です。

また一般入試の場合も、学校によっては厳しく制限が設けられている場合があるため、必ず事前に確認しましょう。一例として、都内の大学付属高等学校の生徒募集要項には「中学校3か年の欠席日数が合計で15日以内、かつ第3学年での欠席・遅刻・早退の合計が7日以内である者」と記されています。

いつから勉強を始めるべき?

高校受験のための勉強はいつから始めるべきでしょうか。それには、まず入学試験の時期を知っておく必要があります。多くの学校で、高等学校の推薦入試は1月半ばから、一般入試は1月下旬から始まります。一般的には私立高校の方が時期は早く、その後に公立高校の入試がおこなわれるケースが多くなっています。
 
中学3年生は、1月の受験前に1学期~2学期の学習内容をあらためて復習する必要があります。1~2年生の学習内容については、3年生になる前にひと通り復習をして、不安のない状態にしておくことが重要です。2年生の冬の時期から、1~2年生の学習を復習しておき、3年生になる前にひと通りの確認を終えていることが理想的だといえるでしょう。
 
通信高校の受験日程は、全日制高校に比べてややスケジュールが遅めになっています。明聖高校の場合は、令和5年度の受験日程は前期選抜試験、後期選抜試験に分けて実施されます。前期は推薦入試で、1月中旬に実施されます。後期は一般入試にあたり、2月中旬から3月末まで順次実施されます。
 
明聖高校の令和5年度募集要項について、詳しくは以下のページをご覧ください。
【令和5年度内】転入学|千葉本校|明聖高等学校(千葉・中野の総合通信制高校)

自分に合う学校はどう選べばいい?

将来、やりたいことが決まっている場合は、必要なスキルを身につけるためにどの学校に行くべきかという視点で考えましょう。大学進学を検討しているのであれば、大学受験を見越して高校から難関校を選んでおくことも手段のひとつです。あるいは大学までの一貫校に入るという選択肢もあります。
 
将来やりたいことがまだ決まっていないなら、まずは通学しやすい学校を選ぶことをおすすめします。高校生活を送るうえでは、通学の負担は見過ごせません。そのうえで、学科や教育方針、学校の雰囲気などを総合的に見て、自分が通いたい学校とはどのようなものかをじっくり検討しましょう。
 
また、通信制高校への進学も選択肢のひとつです。通信制高校と聞くと、学力に自信がない、不登校で欠席日数が多いといったネガティブな理由で通う人が多いとイメージされるかもしれません。しかし、通信制高校はスポーツ活動・芸能活動、仕事などの自分が取り組みたいことに取り組みながら高校卒業を目指す人が集まる場所でもあります。全日制高校では自分の時間が足りない、と感じる場合は通信制高校も選択肢として考慮してみましょう。
 
通信制高校の選び方について詳しくは以下のページもご覧ください。
通信制高校の後悔しない選び方を5つご紹介!自分のスタイルに照らして考えよう | 通信高校生ブログ