「通信制高校に行きたい」と思う一方、世間のイメージが気がかりで、なかなか入学を決められない人も多いのではないでしょうか。時には、通信制高校に対してネガティブなイメージを持つ人の意見を耳にすることもあるかもしれません。
今回の記事では、なぜ通信制高校にそのようなイメージがあるのか、実際のところはどうなのかを解説していきます。

偏った見方のために、通信制高校によくないイメージを持つ人も

残念ながら、世の中には通信制高校に対してあまりよくないイメージを持つ人もいるのが実情です。その原因は、主に3つあると考えられます。

通信制高校に通う人が少ないため

通信制高校に通った経験のある人が少ないため、多くの人にとっては、身近な人などから通信制高校の話を聞く機会がありません。文部科学省の調査によると、2019年度における全日制高校の生徒数は全国で約300万人であるのに対し、通信制高校の生徒数はわずか約20万人です。こうした中で、通信制高校のリアルな実態を聞いたり、正しい知識を得たりできている人が少ない状況にあります。

全日制高校をいわゆる“普通の高校”と考える人たちの中には、それとは違う通信制高校に対して、漠然とした不安を持っている人もいるでしょう。その不安が「普通、高校生は毎日学校に通うものなのに、ほとんど学校に行かない高校生ってどんな人なの?」「通信制高校はどこか問題のある人が行く高校なんじゃないの?」という偏見につながっていることもあります。

また、通信制高校に対して間違った知識を持ってしまっている人もいます。「通信制高校の卒業資格は、全日制高校のものとは違う」「通信制高校を卒業しても、高卒資格は得られない」という話を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、これは誤りです。実際には、全日制高校も通信制高校も、卒業資格は法律上まったく同じものとなっています(学校教育法)。

入試で学力検査がない場合が多いため

通信制高校の入試では、学力検査がないケースも珍しくなく、さまざまな人に入学の可能性が開かれています。しかし、一方で「入試偏差値の高い高校のほうが優秀な生徒が集まるよい高校」という固定観念を持っている人は、「誰でも入れる通信制高校は、よくない高校」「通信制高校に入る人は学力が低いため優秀ではない」というイメージを抱いてしまいがちです。

本来は、学力だけで生徒を判断するべきではありませんし、学力が高い生徒が多数入学していることだけが、学校の良し悪しを決める物差しではありません。また、通信制高校は、入学後の学習内容は全日制高校と同じ「学習指導要領」という文部科学省の基準にのっとっています。したがって「通信制高校の生徒は学力が低い」「通信制高校はほとんど勉強しないで卒業できる」というイメージは必ずしも正しくありません。

大学進学率が少ないため

全日制高校卒業者の大学進学率は5割を超えますが、通信制高校では2割弱となっており、大学進学率に大きな差があります(学校基本調査 令和元年度)。その理由は、通信制高校には全日制高校以上に多様な生徒が通っているためです。必ずしも大学進学を目標にする人だけでなく、就職を目指している人や、専門学校に行きたいと考えている人、スポーツや芸能分野で活躍している人もいます。さらに、すでに仕事をしている人も少なくありません。

しかし、ここでも「高校を卒業したら大学に行くべきだ」という偏った見方を持つ人は、「大学進学実績が少ない通信制高校はよくない」と考えてしまいます。

イメージにとらわれないこと。自らすすんで通信制高校を選ぶ人も

現在は日本全国の高校生20人に一人は通信制に在籍をしている状態です。通信高校生の多くは、自らすすんで通信制高校を選んでいます。調査の結果、通信高校生の50%以上が、自分自身で通信制高校に入学することを決めたと回答していることもわかりました(「高等学校定時制課程・通信制課程の在り方に関する調査研究」(2012年))。

どのような人がポジティブな理由で通信制高校を選んでいるのか、詳しく見ていきましょう。

環境をリセットして勉強を続けたい人

「中学校のときに集団になじめず不登校になってしまったけれど、高校からは環境を変えて、自分のペースでしっかり学習したい」という人が通信制高校を選んでいます。
また、一度入学した高校で学習が遅れてしまったり、人間関係に悩んでいたりする人が、「通信制高校でやり直そう」と通信制高校に転入・編入するケースも一般的です。

スポーツや芸能活動をしながら高校卒業を目指したい人

すでにプロとしてスポーツや芸能活動をしている人や、将来的にプロを目指している人も、これらの活動と学習を両立しやすい通信制高校に魅力を感じて入学しています。長い目で見たときに、スポーツや芸能のプロとして活躍していくうえでも、高校を卒業しておきたいと考える人が多くいます。

病気の治療をしながら勉強を続けたい人

慢性的な不調でどうしても朝早くに起きられない人や、重い病気の治療を続けている人が、通信制高校でがんばっているという例も多数あります。通信制高校なら、自宅や病院で、体調を見ながら自分のペースで学習することが可能です。

アルバイトなど社会経験を積みながら勉強したい人

「社会に出て働き、お金を得るという体験をしたい」「高校の中では出会えないさまざまな人と接しながら、世界を広げたい」という人が、アルバイトをしながら通信制高校で学んでいます。

仕事のキャリアアップのために高卒資格を取りたい人

一度は学校から離れて、仕事に就いたり、家庭で育児をしていたりする人も、キャリアアップのために高卒資格を取るべく通信制高校で学習しています。登校や宿題、試験の負担が少ないため、現状の生活スタイルを極端に変えることなく、高卒資格の取得を目指せます。

イメージと違った!先輩たちが通信制高校で感じたギャップ

通信高校生の先輩の声を聞くと「実際に通信制高校に通ってみると、入学前のイメージとは違った!」という意見も多く聞かれます。どのようなギャップを感じているのか、ご紹介していきましょう。

学校や生徒の雰囲気が思った以上によかった!

「生徒は不良のような人や暗い人ばかりだと思っていたけれど、実際はそんなことはなかった」「もっと人間関係がドライだと思っていたけれど、学校行事などが結構あり、先生や友達と自然に仲良くなれた」のように、たくさんの通信高校生が、イメージ以上に暖かい雰囲気の中で高校生活を楽しんでいます。

しっかり学習できて夢へ近づけた!

「自主学習は大変だけれど、先生が親身になって教えてくれたので、続けられた」「学力に自信が付き、進路の相談にも乗ってもらえたので、難しいと思っていた大学進学の夢をかなえられた」のように、「通信制高校では学力が伸びない」というイメージを覆した通信高校生も見られます。