国や地域の人々の暮らしを支える公務員は、仕事内容はもちろん、収入や職場の安定性も魅力的な職業です。通信制高校への入学を検討している人の中にも、卒業後に公務員になりたいと考える人はいるのではないでしょうか。一方で「大学に進学しなくても、通信制高校卒で公務員になれるのかな」「全日制ではなく、通信制高校卒でも公務員の就職で不利にならないだろうか」といったことも気になるかと思います。
今回は、通信制高校から公務員を目指す進路について解説していきます。

通信制高校卒で就ける公務員の職種はたくさん!国家公務員と地方公務員の違いを知ろう

まず、通信制高校卒で公務員になることは十分可能です。実際に、通信制高校卒業後、大学に進学せずに公務員になって活躍している人は多くいます。

公務員は大きく分けて「国家公務員」と「地方公務員」の2種類があり、それぞれ次のような職種で高卒者向けの採用試験が行われています。

国家公務員

「~省」「~庁」といった国の機関に所属して働く公務員です。
試験は、代表的な職種である国家公務員一般職の場合は、第1次試験(学科試験のような基礎能力試験や適性試験)と第2次試験(面接やグループディスカッションなどの人物試験)があり、合格後にはさらに各官庁で採用面接を受ける必要があります。
 
・国家公務員一般職(高卒程度)
定型的な事務処理が主な仕事です。採用区分がさらに細かく分かれており、事務・技術・農業・農業土木・林業の区分があります。採用試験はエリアごとに全国で行われるため、自宅から比較的近い場所でも受験することが可能です。
 
・国家公務員専門職(高卒程度)
税務職員や刑務官、海上保安大学校学生など、特定の行政分野で専門的な知識を活かしながら働く職種です。
 
・その他
裁判所職員や衆議院事務局職員、参議院事務局職員といった国家公務員にもなれます。これらは国家公務員一般職・専門職とは別の機関が採用試験を実施しています。

地方公務員

都道府県や市町村で働く公務員です。県庁や市役所の窓口で対応してくれる職員がイメージしやすいでしょう。
高卒者向けの試験は「初級」といった名称がつけられているものです。一般的に、選択式の教養試験と、作文・論文試験、面接試験などが行われます。また、技術職は専門試験、警察官や消防官は身体検査もあります。
 
・事務系
経理や政策遂行、庶務などの事務に携わります。役所で働く行政事務のほか、学校事務や警察事務といった職種にも応募できます。
 
・技術系
土木、建築、機械、電気など、技術的な知識を活かした仕事をする職種です。
 
・警察官
都道府県単位で採用募集があります。
 
消防官
市町村単位(東京消防庁は都全体)で採用が行われます。

通信高校生は公務員を目指しやすい側面も。見逃せない3つのメリット

通信制高校卒だと、公務員を目指すときに全日制高校卒の人と比べて不利になるのではないかと不安に思う人もいるでしょう。しかし、その心配はまったくありません。通信制高校は法律上「全日制高校とは課程(学習方法)は違うが、同じ高校である」という位置づけであるため、高卒資格に違いはないからです(学校教育法)。
むしろ、通信高校生はより公務員を目指しやすいといえる側面もあります。

時間の融通が利くため、公務員試験対策がしやすい

全日制高校では、毎日登校して朝から夕方まで授業を受ける中で、並行して公務員試験の勉強をしなければなりません。これに対して、通信制高校は毎日通学する必要がないため、高校の学習時間と公務員試験の勉強時間をやりくりしやすいというメリットがあります。

通信制高校が公務員への進路をサポートしてくれる

進路指導が充実している通信制高校では、公務員試験の受験を積極的にサポートしてくれます。高卒者を対象とした公務員試験の中には、年齢条件を満たしていれば中卒でも受験できるものもありますが、筆記試験対策はもちろん、作文・面接対策も含めて高校で指導してもらったほうがより安心です。

目標に向けて自主学習を継続していることが評価される可能性も

通信高校生は、卒業という目標を達成するため、しっかり自己管理をして計画的に自主学習を進めなければなりません。こうした学習スタイルを2年以上にわたって続けていることは、通信高校生の強みにもなります。面接でこのことをアピールできれば、高い評価を得られる可能性もあるでしょう。

通信制高校から公務員を目指すには、このポイントを押さえよう!

公務員になるためには、試験対策や情報収集は不可欠ですが、特に通信制高校から公務員を目指す場合は、プラスアルファで次のポイントも押さえておきましょう。

高卒で就ける公務員の職種を十分確認する

先ほど、高卒者向けの採用試験を実施している職種をご紹介しましたが、裏を返せば、すべての職種で高卒者向けの採用試験を実施しているわけではないということになります。
また「高卒者向け」「大卒者向け」といった区分は、単に難易度だけを示しているのか、それとも受験資格に最終学歴がかかわっているのかについても注意が必要です。例えば、一部の大卒者向けの採用試験は、試験の難易度が大卒者向けというだけで、最終学歴が高校卒業でも受験することが可能です。一方で、最終学歴が大学卒業・大学院修了であることが受験資格になっている採用試験もあります。
職種によって試験内容や形式が変わり、それによって対策も異なってくるため、希望の職種が高卒で問題なく応募できるかどうか、丁寧に確認することが大切です。

通信制高校を選んだ理由をきちんと説明できるようにする

公務員の採用面接では学生生活について尋ねられることがあり、その際に「全日制高校ではなく、なぜ通信制高校を選んだか」を聞かれる可能性があります。そのとき「なんとなく高卒資格は取っておいたほうがいいと思ったから」「親にいわれて仕方なく」といった受け身でネガティブな理由ではなく、前向きな理由を伝えられるようにしておくことが重要です。
だからといって、嘘をつくのもよくありません。例えば、実際の理由が「全日制高校では学習を続けられないと思ったから」というネガティブなものだったとしても、通信制高校でそれをどう克服したかを伝えられればアピールになります。

先延ばしにしすぎずに合格を目指す

高卒者向けの公務員試験の中には、高校を卒業してから2年以上経っていたり、年齢上限を超えていたりすると受験できなくなるものも多くあります。そうした場合に引き続き公務員を目指そうとすると、より難易度の高い大卒者向けの試験を受けなければならず、対策の負担が大きくなるでしょう。高校生活で勉強してきた感覚が抜けないうちに、高卒者向けの採用試験合格を目指したいところです。