高校に通えず、ひきこもりの状態が続いていると、「いっそ中退したほうがいいのでは…」と悩むこともあるかもしれません。しかしながら、その後の進路や将来が見えず、不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
 
この記事では、ひきこもりの背景や高校中退を考えるときのポイント、中退後の選択肢についてわかりやすく解説します。ひとりで悩まず、これからの未来に目を向けるきっかけとして、ぜひ参考にしてみてください。

高校生のひきこもりの割合

厚生労働省の「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」では、ひきこもりを「学校生活を含む家庭外の活動に参加せず、6ヵ月以上にわたって家庭内に留まり続けている状態」と定義しています。
 
例えば「趣味の用事のときは外出する」「近所のコンビニには行ける」などの人でも、6ヵ月以上にわたって家庭内に留まり続けていればひきこもりに該当します。
 
内閣府が令和4年度に実施した「こども・若者の意識と生活に関する調査 」では、この定義にあてはまる15~19歳のひきこもりの割合は21.5%でした。他の年代と比較して大きな差はありませんが、年齢階級別に見ると上から2番目に高い割合を占めます。
 
また、15~39歳のひきこもり経験者のうち、17.4%が15~19歳の高校生段階でひきこもりになっていたと回答しています。これは、全体の中でも3番目に多い割合です。
 
さらに、ひきこもりのきっかけとなった出来事として、「高校時代の不登校」が14.4%、「大学や高校などの中退」が12.4%と挙げられており、高校生活のつまずきがひきこもりにつながるケースも少なくありません。

高校生がひきこもりになる原因

高校生がひきこもりになる原因はさまざまあります。ここでは、内閣府が令和4年度に実施した「こども・若者の意識と生活に関する調査 」にも触れながら、代表的な6つの原因を解説します。

● 勉強が苦手
● 人間関係が悪化
● 集団生活が苦手
● 学校生活で大きなショックを受けた
● 不登校経験がある
● 家庭に問題がある

それぞれの原因についてお伝えします。

勉強が苦手

ひきこもり経験者のうち、学校での困難の原因として「成績が悪い、授業についていけない」と答えた人の割合が13.4%にのぼりました。
 
学校生活の多くは勉強が中心です。そのため、勉強が苦手だと自信を失ったり、教室での居心地が悪くなったりすることもあります。
 
そうしたつらさから逃れようとして登校できなくなり、結果的にひきこもりの状態になってしまうケースも少なくありません。

人間関係が悪化

ひきこもり経験者の中で、学校生活における困難の原因として「人間関係の問題」を挙げた人も多くいました。

● 先生との関係が悪い:8.2%
● 友達との関係が悪い:20.6%

人との関係に悩み、居場所が感じられなくなると、学校に行くのが苦痛に感じるようになります。その結果、人間関係から距離を置こうとして、ひきこもりの状態に至るケースもあるのです。

集団生活が苦手

ひきこもり経験者のうち、学校での困難の原因として「集団生活の苦手さ」を挙げた人も少なくありません。

● 校則に合わせるのが嫌:15.5%
● 集団行動が苦手:37.1%

こうした回答からもわかるように、学校という集団の中でのルールや行動に息苦しさを感じ、なじめなかった結果、登校を避けるようになり、ひきこもりにつながるケースがあります。

学校生活で大きなショックを受けた

ひきこもり経験者の中で、学校での困難の原因として「学校生活で受けた大きなショック」を挙げた人もいました。

● いじめを受けた:28.9%
● 体罰やハラスメントを受けた:6.2%

こうした深い傷を伴う経験があると、学校そのものが嫌な記憶を呼び起こす場所になってしまい、再び登校することが精神的につらくなることもあります。その結果、ひきこもりという形で自分を守ろうとするケースもあるのです。

不登校経験がある

ひきこもりの状態になる人のなかには、それまでに不登校を経験している人が多いことがわかっています。

● 小学校時代の不登校:8.2%
● 中学校時代の不登校:24.7%
● 高校時代の不登校:14.4%

とくに中学校時代に不登校だった人の割合がもっとも高く、思春期の環境や人間関係、学習面の悩みが影響している可能性があります。学校生活の中で困難を感じて通えなくなり、そのままひきこもりにつながったケースも少なくないようです。

家庭に問題がある

ひきこもり状態になった15~39歳の人のなかに、「原因は家庭にある」と考えている人も少なくありません。

● 家庭が貧しい:18.6%
● 家庭内での孤立:14.4%
● 家庭内の不和や離別:9.3%

このほかにも、保護者の過干渉や甘やかし、逆に厳しすぎるしつけなどを理由に挙げた人もいます。こうしたデータから、ひきこもりの原因は学校だけでなく、家庭環境にも深く関わっている可能性があることがわかります。

ひきこもり状態から辞めてもいい?高校中退後の心配

高校生でひきこもりの状態が続くと、全日制高校では登校日数が足りず留年になることがあります。留年すると、学年が下の生徒と同じクラスになるため、居心地が悪く感じてしまい、そのまま学校を中退したいと考える人も多いでしょう。
 
しかし、「本当にこのまま辞めてしまっても大丈夫なのか?」と不安に思う人もいるはずです。
 
とくに心配されるのは、「高校を中退したあともひきこもりの状態が続いてしまうのではないか」という点です。実際に、高校中退後に進路が決まらず、ひきこもりのまま時間が過ぎてしまうケースもあります。
 
ここで、内閣府が平成24年に発表した「若者の意識に関する調査(高等学校中途退学者の意識に関する面接調査)報告書」をもとに、高校中退者の実態を見てみましょう。

現在していること(調査票調査の結果から)

出典:若者の意識に関する調査(高等学校中途退学者の意識に関する面接調査)報告書|内閣府 子ども若者・子育て施策総合推進室 をもとに作成
 
この調査からわかるように、高校を中退したあとも、就職や進学などさまざまな道を歩んでいる人が多くいます。つまり、高校中退後の未来が必ずしも暗いものではなく、自分の選択次第で新しいスタートを切ることができるのです。
 
高校中退者のその後については、以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
 
関連記事:高校退学・中退のその後の進路実態!デメリットと選択肢について|通信高校生ブログ|明聖高等学校

高校中退でも大丈夫!ひきこもりから未来を切り拓く選択肢

ひきこもりの状態で高校を中退しても、人生がそこで終わるわけではありません。進学や就職など、自分に合った道を自由に選ぶことができます。
 
その一つの選択肢が「通信制高校」です。通信制高校は、オンライン授業や自宅での学習を中心に単位を取得し、高校卒業資格を目指す学校です。
 
全日制高校に比べて登校日数が少なく、自宅にいながら学べるため、ひきこもりの人でも無理なく高校の勉強を続けられます。学校生活や人間関係でストレスを感じていた人にとっても、通信制高校なら自分のペースで安心して学べる環境が整っています。
 
千葉県にある明聖高校は、通信コースやWEBコースがあり、年間の登校日数はわずか3〜4日。自宅で落ち着いて学習できるため、無理なく高校生活を送れます。
 
また、現在の高校を退学せずに在籍を移す「転入学」も受け付けているので、高校中退を迷っている人は選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。
 
気になる人は、以下のページをご覧ください。
 
転入学・編入学をお考えの方へ|明聖高等学校 WEBコース

ひきこもりから高校中退に悩む我が子に対する保護者の対応

ここからは、ひきこもり状態の高校生をもつ保護者の方に向けて、対応のポイントを解説します。

本人の気持ちや意思を尊重する

ひきこもりは社会的にネガティブに捉えられがちで、「なんとか解消しなければ」と焦る保護者も多いでしょう。
 
しかし、本人にはひきこもりになる理由やつらさがあり、無理に動かそうとすると状態が悪化することもあります。
 
だからこそ、まずは本人の気持ちや意思を尊重し、味方でいることが大切です。
 
「このまま続くかも」という不安があっても、まずは本人の気持ちに寄り添うことから始めましょう。

お子さんが安心できる関わり方を意識する

過度な叱咤激励は負担になることが多いので、対話を重視したコミュニケーションが大切です。
 
まずは、お子さんの話をよく聴く「傾聴」を心がけましょう。保護者の気持ちを伝えるときは、「わたしはこう思う」というアイメッセージを使うのが効果的です。
 
反対に、「あなたはこうすべき」という伝え方(ユーメッセージ)は、子どもが話を聞いてもらえていないと感じる原因になることがあります。
 
例えば、

● アイメッセージ:「わたしは最近、あなたの元気がなくて心配だよ」
● ユーメッセージ:「なんで最近そんなに元気がないの?」

アイメッセージを使いながら、「ここにいていいんだよ」という安心感を伝えることが重要です。

学校以外の専門機関を頼る

学校以外のひきこもり支援機関を利用すると、お子さんだけでなく保護者の負担も軽くなります。
例えば、

● 教育支援センター
● フリースクール
● フリースペース
● 各種支援団体

近年はオンラインで利用できる団体も増えているので、お住まいの地域に合う機関がなくてもあきらめずに探してみましょう。
外とのつながりはお子さんが外に出るきっかけになることもありますが、無理はせず、お子さんの様子を見ながら少しずつ進めていくことが大切です。