高校には「単位制」と「学年制」という2つの仕組みがあります。なかでも単位制高校は、「自分のペースで学べる」「必要な単位を修得すれば卒業できる」といった特徴から、通信制高校でも広く採用されています。
最近では、学び方の多様化や不登校・転校といった理由から、単位制高校に関心を持つ生徒や保護者が増えています。でも実際には、「単位制ってどんな仕組み?」「学年制と何が違うの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、単位制高校とはどんな高校かをわかりやすく解説するとともに、学年制との違いやメリット・デメリットも詳しく紹介します。通信制高校への進学を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
単位制高校とは?
単位制高校とは、「必要な単位を修得すれば卒業できる」仕組みの高校です。学年ごとに進級・卒業が決まる「学年制高校」とは違い、自分のペースで科目を選びながら学び、単位を積み重ねていくスタイルが特徴です。
単位とは、学習量を数値化したものです。高校では「1単位=50分の授業×35回分」に相当するとされています。つまり、1科目で50分授業を35回受けると、1単位が修得できる計算です。
ただし、通信制高校では授業の受け方が異なります。 授業動画の視聴、レポート提出、添削指導、スクーリング(登校しての面接指導)などを組み合わせて単位を修得します。そのため、全日制のように実際に50分授業を35回受けるとは限りません。
高校を卒業するためには、合計で74単位以上を修得する必要があると文部科学省で定められています。これは、単位制高校だけでなく、全日制・定時制を含むすべての高校に共通する基準です。
なお、単位制は主に通信制高校や定時制高校で採用されている制度ですが、最近では全日制高校でも単位制を取り入れている学校が増えてきました。つまり、全日制でも「単位制高校」が存在するということです。
参考:高等学校学習指導要領(平成30年告示)|文部科学省
参考:単位制高等学校について|文部科学省
単位制高校と学年制高校の違い
単位制と学年制には、それぞれ特徴があり卒業までの進み方や学び方が大きく異なります。まずは、その違いを以下の表にまとめました。
制度 | 単位制 | 学年制 |
---|---|---|
仕組み | 3年以上で卒業に必要な単位を修得する | 学年ごとに必要な単位を修得し、3学年で卒業する |
時間割の特徴 | 自分の興味や関心のある科目を選択して、自分で時間割を組む | 学校が決めた時間割にしたがって授業を受ける |
在籍期間 (修業年限) |
3年以上 | 原則3年 |
留年の有無 | なし | あり |
卒業に必要な単位 | 74単位以上 |
参考:学校教育法|e-GOV
学年制高校は、1年間で修得しなければならない単位が決まっており、1学年ごとに単位が認定される高校を指します。「1年生でこれだけの単位を修得しなければ2年生になれない」という仕組みです。
例えば、国語総合の授業だけすべて欠席すると、国語総合だけではなくその年に受けたすべての授業の単位が認められず、留年(原級留置)になることがあります。
留年の基準は学校によってさまざまですが、1学年の単位を修得するためには、毎回授業に出席したうえで、定期テストで合格点をとらなければなりません。
このように、単位制と学年制は特徴が異なるので、自分の生活スタイルや学習の仕方に合うほうを選びましょう。
以下の記事では、現在留年の危機に直面している高校生に向けて救済措置を解説しているので、あわせてご覧ください。
関連記事:高校で留年しそうな人へ|留年する人の割合や基準と救済措置を解説|通信高校生ブログ|明聖高等学校
単位制高校のメリット
単位制高校には、学びやすさや自由度の高さなど、さまざまなメリットがあります。ここでは代表的な3つのメリットをご紹介します。
自分のペースで学習できる
単位制高校では、履修する科目やその順番、タイミングを自分で決めることができます。そのため、得意な科目は早めに単位を修得し、苦手な科目は時間をかけてじっくり取り組む、といった自分に合ったペースで学習を進めることが可能です。
高校を卒業するためには、最低でも74単位の修得が必要ですが、これは3年以上かけて取得すればよく、学年ごとの進級に縛られることはありません。
また、通信制高校の単位制では、登校日が少ない分、自宅やカフェなど自分が集中できる場所で学習するスタイルも選べます。毎日通学することが負担に感じる人や、生活リズムに合わせて勉強したい人にとっては、大きなメリットです。
さらに、単位制を採用している全日制高校であっても、進学を意識したカリキュラムを自分で組むことが可能です。例えば、1〜2年生で基礎を固め、3年生では受験対策に集中するなど、自分の目標に合わせた時間割を組むことができます。
以下の記事では、通信制高校からでも大学進学を目指せるのかどうかを解説しているので、あわせてご覧ください。
関連記事:通信制高校から大学進学は目指せる?進学率やカリキュラムをチェックしよう|通信高校生ブログ|明聖高等学校
学習内容の自由度が高い
単位制高校では、カリキュラムの自由度が高く、興味や関心に合わせて学ぶ内容を選べるのも魅力です。これは「生徒一人ひとりの多様な学びのニーズに応える」ことを目的としているためです。
特に通信制高校では、その自由度を活かして、専門的なコースや個性的な授業を展開している学校も多くあります。
例えば、明聖高校では「全日ITコース」や「全日デザインコース」といった専門的なコースがあり、高校のうちから将来の夢に直結するスキルを身につけることも可能です。
参考:第2章 2 単位制高等学校の設置 (2)特色ある取組をしている学校|文部科学省
きめ細かい指導を受けられる場合が多い
単位制高校、特に通信制高校では、少人数制の授業や習熟度別クラスが導入されている学校が多くあります。そのため、わからないことを気軽に質問しやすく、一人ひとりの理解度に応じた丁寧なサポートを受けられるのが特徴です。
また、教員の目が届きやすい環境が整っているため、つまずきへのフォローはもちろん、進路についての相談や学習計画の見直しなども親身に対応してもらえることが多いです。
特に進学重視型の単位制高校では、大学受験に向けた個別相談や特別講座、進路アドバイザーによるサポートなどが充実している学校もあります。
単位制高校のデメリット
単位制高校には多くのメリットがありますが、一方で注意しておきたいデメリットもいくつかあります。入学してから「思っていたのと違った」とならないように、あらかじめ理解しておくことが大切です。
ここでは、代表的な3つのデメリットをご紹介します。
自己管理能力が求められる
単位制高校では、自分で履修する科目や時間割を決めたり、レポートの提出や試験の準備をしたりと、自主的に学習を進める力=自己管理能力が求められます。
学習のペース配分がうまくできないと、必要な単位が取得できず、卒業が遅れてしまう可能性もあります。また、単位を落としてしまうと、その科目を再度履修する必要があり、スケジュールや費用の面でも負担になることがあります。
「自由に学べる」と聞くと気軽に感じられるかもしれませんが、自由なぶん、自分で責任を持って行動する力が求められることを理解しておきましょう。
一斉授業が少なく人間関係が希薄になりやすい
単位制高校では、固定のクラスがない、あるいはクラス活動が少ないことが多いため、全日制高校のような一体感やクラスメイトとの自然な交流が生まれにくい傾向があります。
特に通信制高校では、登校日数が限られているため、生徒同士が顔を合わせる機会が少なく、人間関係が希薄になりやすいことがあります。
そのため、学校でたくさんの友達を作りたい人や、文化祭・体育祭などのイベントを楽しみにしている人には、少し物足りなく感じる場合もあるかもしれません。
ただし、最近では学校によって、生徒のつながりを大切にする活動やオンライン交流、イベントを積極的に行っている通信制高校も増えてきています。学校選びの際に「交流の機会があるか」をチェックするのもポイントです。
希望科目が開講されないことがある
単位制高校では、生徒数や教員の数に応じて開講できる科目に限りがあるため、自分が学びたい授業が毎年必ず開講されるとは限りません。
特に専門性の高い授業や、選択する生徒が少ない科目は、担当できる先生がいない・人数が集まらないといった理由で実施されないことがあります。
「この授業を受けたい!」という希望がある場合は、学校のパンフレットや公式サイトなどで、希望科目が過去に開講されていたかどうかを事前に確認しておくと安心です。
◆デメリットも事前に知っておけば安心!
単位制高校には自由度の高い学びができるという大きな魅力がありますが、その分、自分に合ったスタイルかどうかをしっかり見極めることが大切です。
進学を検討する際は、メリットとデメリットの両方を比較しながら、自分の目標や性格に合う学校を選びましょう。
単位制高校が向いている人
単位制高校が向いているのは、次のようなタイプの人です。
単位制高校が 向いている人の特徴 |
理由 |
---|---|
自分のペースで 学習したい人 |
科目ごとに単位を修得していくため、得意な科目は早めに終わらせて、苦手な科目にはじっくり取り組むことができます。自分の得意・不得意に合わせた学習ができる点が大きなメリットです。 |
学校生活以外にも 活動時間を確保したい人 |
登校日数が少ない学校も多く、スポーツや芸能活動、アルバイト、インターンなど、学校以外の活動と両立しやすいのが特徴です。特に通信制の単位制高校は、自分のスケジュールに合わせて学習ができるので、自由な時間が欲しい人に向いています。 |
自己管理能力が高く、 自主学習が得意な人 |
科目の選び方や時間割の作成、学習スケジュールの管理などを自分で行う必要があります。計画を立てて行動できる人や、自分でコツコツ勉強するのが得意な人に向いています。 |
ただし、これらに当てはまらないからといって、単位制高校が向いていないというわけではありません。例えば、自己管理に不安がある場合でも、学習計画や時間割の作成をしっかりサポートしてくれる学校を選べば、安心して通うことができます。
大切なのは、自分に合った環境やサポートを提供してくれる単位制高校を選ぶことです。
単位制高校で単位を落としたらどうなる?単位修得プランを考えよう
「単位を落としたらどうなるの?」と不安に思う方もいるかもしれませんが、基本的には修得できるまで繰り返し学べるため、心配しすぎる必要はありません。
ただし、何度も取り直すと卒業が延びてしまうこともあるため、あらかじめ自分に合った単位修得プランを立てることが大切です。ここでは、代表的な2つのプランを紹介します。
3年で無理なく卒業を目指す!基本プラン
全日制高校と同じ3年間での卒業を目指す場合は、年間25単位ずつ修得するのが目安です。いずれかの年を24単位に調整すれば、合計74単位で卒業が可能です。
3年間での卒業は「大変そう」と感じるかもしれませんが、通信制高校であれば自分のペースで学習を進めやすく、アルバイトや趣味、体調管理とも両立できます。
目標は現役合格!大学受験をする人の早期修得プラン
大学受験を目指す場合は、3年目に受験勉強の時間をしっかり確保するため、1・2年次に多めに単位を取るプランが効果的です。
例としては、1年目に30単位、2年目に25単位、3年目に19単位とすることで、3年目は受験に集中しやすくなります。
ただし、基礎学力に不安がある場合は、無理のないペースで計画を立て、必要に応じてプランを見直すことも大切です。
自分のペースを大切にしたいなら単位制の通信制高校を選択肢に入れよう
単位制高校の中でも、通信制高校は自分のペースで学べる柔軟なスタイルが特徴です。自宅でのオンライン授業やレポート提出を中心に、必要な単位を修得できます。
毎日通学する必要がないため、生活リズムや体調に合わせて学習を進めたい人にもおすすめです。不登校経験がある人や、朝が苦手な人も、ストレスを抑えて高校卒業を目指せます。
明聖高校は、そんな通信制の単位制高校の一つです。中学内容の復習から始められる学習サポートや、カウンセラー資格を持つ教員によるメンタル面のサポートも整っています。
「通信制ってどうなんだろう」と気になったら、ぜひ一度、明聖高校の説明会に参加してみてください。実際に学校の雰囲気を知ることが、自分に合った学び方を見つける一歩になります。
学校説明会・相談会|明聖高等学校
まとめ
単位制高校では学年の制約がなくなるため、自分のペースで興味・関心のある学習を進めることが可能です。
特に自学自習がメインの通信制高校では、より自分に合った学習スタイルで卒業を目指せます。
高校を選ぶときは、どのような高校生活を送りたいのかを考えながら、学年制高校だけでなく、単位制高校も候補に入れて検討してみてはいかがでしょうか。
参考URL:
単位制高等学校について|文部科学省
高等学校学習指導要領(平成30年告示)|文部科学省
学校教育法|e-GOV
第2章 2 単位制高等学校の設置 (2)特色ある取組をしている学校|文部科学省
高校で留年しそうな人へ|留年する人の割合や基準と救済措置を解説|通信高校生ブログ|明聖高等学校
通信制高校から大学進学は目指せる?進学率やカリキュラムをチェックしよう|通信高校生ブログ|明聖高等学校
明聖高等学校は、千葉・中野にキャンパスを構える通信制高校です。全日コース・全日ITコース・通信コース・WEBコースに分かれており、一人ひとりに合わせた高校生活を過ごすことができます。