不登校になりやすいタイミングのひとつとして知られるのが、夏休み・冬休み・春休み・ゴールデンウィークなどの休み明けです。誰しも休み明けは億劫なものですが、どのようなケースで不登校になってしまうのでしょうか。兆候や保護者にできる対応策とあわせて解説します。

不登校が休み明けに起こりやすい3つの理由

休み明けに不登校になりやすいのは、その傾向を示すデータこそないものの(不登校になり始めた時期を厳密に見極めるのが難しいため)、現場ではよく知られている事実です。また、厚生労働省の資料には、休み明けのタイミングに当たる1月、3月、8月、9月は、中学生・高校生の自殺が多いという調査結果もあります。

この理由としては、主に次のようなものが考えられます。

息切れして疲れを十分に回復しきれない

学校がある間は、体力的・精神的に無理をしながらなんとかがんばってきたものの、休み中にすっかり気が抜けてしまい、復帰できなくなるという理由です。休みの間に前向きな気持ちで過ごし、すっかりリフレッシュ・リラックスできれば、また学校に行けるでしょう。ただし、強いストレスや疲れをずっとためてきた人は、学校に戻れるほどのエネルギーを充てんしきれないことも多くあります。

休み中に学校での負担を自覚してしまう

先ほどの話にも関連しますが、一生懸命がんばって学校に通っている人の中には、自分のストレスや疲れに気づいていないという人も珍しくありません。そうしたストレスなどを、学校を離れてから自覚して、ストレスの原因がある学校に行きたくなくなるというパターンもあります。

生活リズムを学校モードに戻せない

休みの間には、中学生・高校生の一日の大半を占める学校生活がまったくなくなり、生活リズムが大きく変わります。一度、楽なほうに変わった生活リズムを直すには相当なエネルギーが必要です。特に、1つ目でも触れたエネルギーを消耗しきってしまっているような人は、生活リズムを学校モードに戻すことが難しく、「夜に眠れない」「朝起きられない」といった理由で、登校できなくなる場合があります。

休み中・休み明けに見られる不登校のサインに注意しよう

休み明けに不登校になってしまいそうなとき、本人は休み中や休み明け直後に、次のような兆候・サインを見せることがあります。保護者は見逃さないよう、注意して観察しましょう。

【休み中】

ゲームなどに没頭して外出を嫌がる

外出したり、人に会ったりするのを嫌がるのは、体力的・精神的に疲れていて、積極的に活動するエネルギーが残っていないためである場合があります。また、家の中でゲームや動画に没頭している場合は、何か現実に目を背けたいほどつらいことがあるために、それらに依存してしまっている可能性も否定できません。

生活リズムが大きく乱れている

先ほども挙げたゲームなどへの没頭・依存から、昼夜逆転など、生活リズムがひどく乱れることもあります。

宿題をギリギリになってもやりたがらない

単に勉強が面倒なのではなく、学校への抵抗感から、宿題をやっていない可能性があります。

【休み明け】

体の不調

朝、登校時間が近づくと、ストレス反応で腹痛や頭痛を訴えるようになることがあります。中には、休みの終わりごろから、食欲がなくなったり、元気がなくなったりするケースもあります。

生活リズムが戻らない

学校が始まってもなかなか生活リズムを元に戻せず、夜更かしをしていたり、朝起きられなくなったりしているのは、学校へ行きたくない想いの現れである場合があります。

家族に話をしなくなる、かかわろうとしなくなる

「学校は嫌だけれど、本当は学校に行かなくてはいけない」という葛藤から、想いを人に話すことが難しくなり、家族とかかわろうとしなくなるケースもあります。

不登校の兆候に対して、休み明けに保護者ができる4つのこと

もし、これらのサインが見られたら、保護者は次のような対処を心掛けてみてください。

体の不調を訴えたら、まずは医療機関へ

体の不調はストレス反応の可能性もありますが、ほかの病気が原因である可能性もゼロではありません。まずは医療機関で診てもらい、原因を特定しましょう。ただし、そこで仮に「体はどこも悪くない」と診断されても、無理に励ましたり、登校を促したりするのは禁物です。ストレスが原因であることを踏まえて、次の対処に移りましょう。

本人の様子をよく観察し、声に耳を傾ける

「なぜ学校に行きたくないのか」「どうして、学校生活に支障が出るほど夜更かしをしてゲームに没頭しているのか」と直接聞いても、子どもは自分から話してくれないことも多々あります。その場合にも、焦らず、子どもの普段の様子をよく観察し、ちょっとした声にも耳を傾けるようにしてみましょう。その際には、具体的に、

  • ・無理して登校しようとしているところはないか
  • ・学校生活や日常生活でがんばりすぎていないか
  • ・つらいこと、嫌だと感じていることはないか

といった点に注意してみてください。不登校になりそうな原因やきっかけが少しでもわかれば、さらに次の対処も見えやすくなります。

生活リズムに干渉しすぎたり、登校を無理強いしたりしない
不登校のサインを見せ始めた子どもに、過度な干渉や無理強いは逆効果です。ますますプレッシャーやストレスを感じて、学校に行きづらくなってしまいます。

例えば、生活リズムの乱れが休み明けに不登校になる原因のひとつであるとはいえ、叱ったり、無理に矯正しようとしたりするのは好ましくありません。「少しずつでも生活リズムが改善されればいいかな」くらいの気持ちで見守るのがよいでしょう。

また、本人が「学校を休みたい」といってきたら、そのときは休ませてあげて構いません。必死の想いで伝えた気持ちを保護者が受け取ってくれたというだけで、子どもは安心するでしょう。あるいは「休み明けに、まだ心の準備ができていないので、もう少しだけ時間がほしい」という気持ちで休みたがっている可能性もあり、その場合は1~2日だけ休めば、学校に行けるようになることもあります。

長引きそうなら、学校に相談する

休み明けからしばらく経っても、本人の調子があまりよくなく、本格的に不登校になりそうな場合は、学校(担任、保健室の先生、スクールカウンセラーなど)に相談しましょう。外部機関の紹介も含めて、今後の対処法を一緒に考えてくれるはずです。

不登校になっても戻る場所はある~通信制高校という選択肢

保護者が子どもの不登校のサインに気づき、休み明けに対処をしても、どうしても不登校になってしまうことはあります。その場合も、本人・保護者ともに「不登校は充電期間」ととらえて、回復を待つことが大切です。

そして、もし本人が「学校に戻りたい」と望むようになったら、できるだけ負担のない形で学校復帰を進めていきましょう。その際、通信制高校は登校頻度が少なく(週1回、2週間に1回など)、徐々に学校生活に慣れられることから、有力な選択肢のひとつになるでしょう。将来の可能性を広げる高卒資格も取得できるため、検討してみてほしいと思います。