「自分は人と比べてなにも取り柄がない」「なんで自分はこんなにダメなんだろう」という気持ちを劣等感と呼びます。劣等感を覚えない人のほうが少ないといえるほど、私たちが持つ当たり前の感情の一つです。今回は、劣等感の正体と劣等感が強い人の特徴、原因・克服する方法を解説します。劣等感を受けとめて、自分を成長させるきっかけにしましょう。
1. 劣等感とは|成長のエネルギーになる正常な気持ち
劣等感とは、他人と比較して自分の能力が低い、あるいは価値がないと感じることです。
例えば、以下のような感情は、劣等感に該当します。
- ● 背の高い人を見て「私もあと10cm背が高かったらな」と思う
- ● テストで悪い点をとって「〇〇さんと比べて自分はダメだな」と思う
このように、劣等感は他人と自分を比較したときに生まれます。
1.1. 劣等感は対人関係のなかで生まれる
劣等感という言葉を、先ほど紹介した意味で使い始めたのは、心理学者のアドラーだといわれています。アドラーは、1800年代後半から1900年代前半に活躍したオーストリアの精神科医・心理学者です。彼がまとめた理論をまとめてアドラー心理学と呼びます。
アドラーは、劣等感は対人関係のなかで生まれることを指摘しました。
例えば、身長150cmの人が170cmの人を見て「自分ももう少し背が高ければ、もっとスポーツで活躍できたかも」と劣等感を覚えているとします。
このときアドラーは、劣等感を感じていても、実際に劣っているわけではないと考えました。もし平均身長が150cmの世界に生まれていたら、劣等感など生まれないはずだからです。
このように、アドラーは人間は対人関係のなかで、自ら意味づけることで生まれると考えました。
1.2. 劣等感はだれもが持っている感情
アドラーは、劣等感はだれでも持っている当たり前の感情だと考えています。
人間は、赤ちゃんのとき、1人で歩けない・話せないなど、なんの力もない状態です。この無力な状態から抜け出したいという心理(優越性の追求)を、生まれたときから抱えているとアドラーは考えました。
つまり、劣等感の背景には「今よりももっと成長したい」「理想の自分になりたい」という気持ちが隠れているのです。
人間は常に「理想の自分を追い続けている存在」だと考えれば、理想の自分と比較して今の自分は劣っていると感じるのは当たり前でしょう。
このように、劣等感は成長する過程で正常に生まれる気持ちであり、あなたが理想を追い求めている証なのです。
2. 劣等感から生まれる劣等コンプレックスとは
劣等感自体は正常な気持ちだとわかっても、「ならいいや」とはなりませんよね。
心がモヤモヤしたり、ときにはだれかに八つあたりしたくなったり、よくない状態になることもあります。その原因は、劣等感そのものではなく、劣等コンプレックスにあります。
劣等コンプレックスとは、劣等感がきっかけとなって生み出される別の感情です。
例えば「自分は背が低いからバスケをしても活躍できない」「先生に嫌われているからテストでよい点をとれない」というように、劣等感が言い訳になって卑屈(ひくつ)になったり、自暴自棄になったりすることもあるでしょう。
ただし冷静に考えると、うまくいかない原因はほかにもあるかもしれません。実際に因果関係があるかどうかもわからないことを結び付けて考えてしまい、負の感情を抱くことを劣等コンプレックスと呼びます。
劣等コンプレックスを解消するためには、少し考え方を変える必要があります。
3. 劣等感が強い人の特徴と原因
ここでは、劣等感が強い人の特徴や、その考え方が生まれる原因を解説します。
3.1. 他人と比較する・されることが多い
他人と比較する、または比較されることが多い人は、自分ができないことに目が向きやすく、劣等感を感じやすい傾向があります。
例えば、 親や先生、友だちから「Aくんはできるのに」と言われると、自分は劣っていると感じてしまうでしょう。成績のよい兄と比較されて「出来が悪い」と怒られる経験なども、同様です。
こうした環境や経験が重なると、他人と比較する思考が癖になり、劣等感に悩むことが増えてしまうのです。
3.2. ほめられたい気持ちが強い
ほめられたい気持ちが強い人は、人から認められないと自分に価値がないと思い込んでしまい、劣等感を感じやすくなります。
例えば、友達が先生から「すごいね、よくやったね」と声をかけられているのを見て、「自分も頑張ったのになにも言われなかった」と落ち込む場合があります。その結果「先生から嫌われているのかも」「自分のことなんてだれも見ていない」という負の感情につながっていくのです。
これは、事実として友達より自分が劣っているのではなく、認められないと価値がないという思い込みが原因となっています。
3.3. 理想の自分と現実に差がある
「こうなりたい」という理想の自分と、今とのギャップを強く意識しすぎると、劣等感を抱きやすくなります。
例えば「学級委員として、堂々と発言してみんなをまとめる存在になりたい」といった理想像を抱く中学生がいたとします。しかし、実際には人前で話すと緊張してしまい、言いたいことがうまく言えないと「他の人のほうがうまくやれている」と感じ、落ち込んでしまいます。
アドラーが言うように、劣等感は理想の自分になるための過程で感じる正常な気持ちのため、放置していても問題はありません。しかし、劣等感を抱きたくないあまり、挑戦をできなくなるのであれば考え方を変える必要があります。
3.4. 過去の失敗にとらわれている
過去の失敗にとらわれて「自分にはどうせできないと思い込むと、劣等感を感じやすくなります。
例えば、テストで思うような点が取れず、クラスで順位も下のほうだったという経験があるとします。そのときの悔しさや恥ずかしさが強く心に残っていると、次のテスト前になっても「どうせ自分はできない」「頑張っても無駄」と思い込んでしまうのです。
その結果、テストに向けて勉強をしなくなるのであれば、自分の成長を止めることになってしまいます。この場合は、失敗に対する考え方を変えて、前向きにとらえる習慣づけが必要です。
4. 劣等感を克服して自分を成長させる方法
劣等感は正常な感情ですが、それを理由にして行動できなくなるのは避けたいところです。
そこで、劣等感を克服して自分を成長させるポイントを3つに分けて紹介するので、考え方を変える方法として参考にしてみてください。
4.1. 気付くことが第一歩
劣等感を克服するためには、「今、自分はどんなふうに考えているか?」を客観的に見直すことが大切です。
アドラーによると、人は劣等感にとらわれているとき、自分の思い込みに気付かずに行動を制限してしまうといいます。
例えば、過去に運動会のリレーでミスをしてしまい、チームに迷惑をかけたと感じた経験をした人がいるとします。「どうせまた失敗する」と思って、体育の授業やクラブ活動を積極的に頑張らなくなったのであれば、それは思い込みが原因です。
自分の思い込みに気付くためには、考えを紙に書き出し「本当にそうなのか?」と問い直すことが効果的です。「どうせまた失敗する」という気持ちに対して、過去に少しでも成功した経験がなかったかを振り返ってみると、意外と失敗ばかりではないことに気付けます。
4.2. 事実と考えを分ける
劣等感を克服するためには、書き出した内容を見て「事実」と「考え」を分けて整理することが大切です。
例えば「身長が155cmだからバスケをしても活躍できない」と考えている場合、以下のように事実と考えを分けます。
- ● 事実:身長が155cm
- ● 考え:バスケで活躍できない
その後、「本当に身長のせいでバスケで活躍できないのか」について、問い直しましょう。身長が低いことで不利になる状況もあるかもしれませんが、バスケが上手な先輩や同級生と比較したとき、違いは身長だけなのでしょうか?
もしかすると、練習量や技術の質が全然違うのかもしれません。
こうしたことを突き詰めて考え、自分と向き合っていくことで、事実に対して正しい考えを持てるようになります。その結果、自分を成長させるために正しい行動を選択できるようになるのです。一人だと難しい場合は、親しい人から意見を聞き、第三者の視点から考えを見直してみましょう。
4.3. 自分の成長に目を向ける
劣等感は、他人と比較することで生まれる感情であるため、常に自分の成長に目を向けることで克服できる可能性があります。
例えば、以下のような行動によって、他人と自分を比較せず成長に目を向けることが可能です。
- ● 今日できたことを毎日1つ記録する
- ● 長期的な目標を立てて定期的に振り返る
- ● 短期目標を設定して達成に向けて行動する
こうした積み重ねによって、次第に昨日の自分と今日の自分を比較することに集中できるようになります。その結果、他人と比較してしまう癖を解消できます。
「成長のきっかけとなる正常な劣等感」を正しく利用して、自分を高めましょう。
5. 自分自身の成長に集中できる場所で劣等感を克服しよう!
学校は、同じ年代の人たちが集まるため、他人が目につきやすく、比較しやすい環境です。そのため、どうしても他人と比較して劣等感を抱いてしまうのであれば、環境を変える方法があります。
例えば、通信制高校は、毎日同級生と顔を合わせる全日制高校とは違い、オンライン授業や自宅学習を通じて高校卒業資格の取得を目指せます。比較してしまいがちな同級生と距離を取りながら自分のペースで学校生活を送れるので、劣等感を抱きにくい環境です。
通信制の明聖高校では、年3~4回の登校で、あとはアバターで通えるサイバー学習国というオンラインの学校で授業や学習を進めます。他人が目に入らないため、自分としっかり向き合いながら学校生活を送ることが可能です。
自分自身の成長に集中できる場所を探しているのであれば、ぜひ一度学校の様子を見に来てみてください。
まとめ
劣等感は、理想を追い求めるなかで生じる正常な感情ですが、自分は人より劣っていて「価値がない」「何をやっても無駄」などと思い込む原因にもなります。
劣等感に悩まないためには、考え方の癖を解消し、正しく事実をとらえて自分の成長に目を向けることが大切です。
そうはいっても、大勢の同年代と過ごす学校では、嫌でも他人と比較してしまう場面があります。自分自身の成長に集中したいなら、他人があまりいない環境でマイペースに学校生活を送ることも考えてみましょう。
通信制高校なら、年数回程度の登校で、自宅にいながら自分の学習や生活に向き合うことが可能です。新たな選択肢のひとつとして、考えてみてください。
参考URL
WEBコース|明聖高等学校
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明聖高等学校は、千葉・中野にキャンパスを構える通信制高校です。全日コース・全日ITコース・通信コース・WEBコースに分かれており、一人ひとりに合わせた高校生活を過ごすことができます。